« デンマークという国 自然エネルギー先進国―「風のがっこう」からのレポート 単行本 – 2006・2 ケンジステファンスズキ (著) | メイン | 第10章・日本はデンマークから学ぶものがあるか・「家庭における両親の役割は子供を育てて、その生活を守るために働くのだとすれば、政治家、役人は国を守り、国民を守る義務がある」と言う教授の信念は、国家観、行政に携わるものへの期待感を端的に表すものでした。平成28年2月4日 »

2016年2月 3日 (水)

第8章・デンマークという国の政治・国政選挙、地方自治地選挙におけるこの高投票率は日本では考えられないものでしょう。この投票率の高さは、国民と政治の距離が極めて接近していることの一つの現れだと思います。この国民性は学校教育、とくに歴史教育の成果、家庭で政治が語られる機会の多さ、つねに国全体の問題を取り上げて国民的な論議を促しているマスコミなどが作り上げてきたものだと思います。平成28年2月3日 水曜日



引用


第10章・日本はデンマークから学ぶものがあるか・平成28年2月4日

http://amamioosoma.synapse-blog.jp/yosiharu/2016/02/2824-95e9.html

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16:09 2016/02/05


2016年の内外情勢を展望する~東京財団研究員討論会(国内問題)

https://www.youtube.com/watch?v=mYjNsIZ7-ik&utm_source=mailmaga_20160204&utm_medium=email

14:59 2016/02/04 


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17:52 2016/02/03


第8章・デンマークという国の政治・平成28年2月3日 水曜日


投票率は87%・151頁・

2001年11月20日に投票が行われた国会議員、県会議員、市町村議会の選挙では、有権者数は約400万人、国会議員選挙の投票率は87%でした。デンマークの国会議員選出の選挙への投票率が高いのは今始まったことではなく、デンマークの伝統と言っていいでしょう。例えば今から約25年前、1977年2月15日の総選挙は88・7%でした。

国政選挙、地方自治地選挙におけるこの高投票率は日本では考えられないものでしょう。この投票率の高さは、国民と政治の距離が極めて接近していることの一つの現れだと思います。この国民性は学校教育、とくに歴史教育の成果、家庭で政治が語られる機会の多さ、つねに国全体の問題を取り上げて国民的な論議を促しているマスコミなどが作り上げてきたものだと思います。とりわけ、報道の自由・言論の自由を憲法で保障されているマスコミ各社は、その立場を自ら鮮明にするために政治献金はしていないと聞いています。151・


152頁・平成28年2月3日  

国会議員の平均年齢は四七歳・152頁・

2001年の総選挙は、革新連立政権から保守政権に政権交代が起こりましたが、この選挙結果からデンマーク政治のの特徴をあげてみたいと思います。

国会議員総勢179名(一院制。このうちグリーランドから二名、フェロー諸島から二名選出)の中で、デンマーク議会始まって以来、高校生(一九歳女性。デンマーク国民党)が当選し、また地方選でも一九歳の女性が当選しています。さらに地方選挙では、デンマーク第二の都市オーフス市に二九歳の女性市長が誕生し、ランダース市長に二五歳の男性が選出されました。

国会議員の平均年齢は二歳若返り四七歳になりました。日本では考えられないほどの若さでしょう。デンマークでは恒例の政治家では速いスピードで変化する世界の動きに対応できないとして、二〇代、三〇代の若者に国政への積極的参加を促しています。たとえば、政党には若い世代で組織されているグループが必ずあり、主に二〇代の政治家の卵が党内外で積極的に発言をしています。

五〇台を過ぎて大臣職を務める政治家は稀有で、議員の定年制あるいは多選禁止性の制限はないものの現国会議員のうち六〇歳以上の議員は一九名(約一〇・八%)しかいません。152・ここまで


難民・移民にも選挙権はある・152頁・平成28年2月4日 木曜日

デンマークは世界で紛争が起こるたびに発生する難民や移民を受け入れ、人口の七・四%が移民です。多くは旧ユーゴスラビア、トルコ、イギリス、スウェーデンのヨーロッパ諸国、アフリカのソマリア、レバノン、イラン、イラク、パキスタンなどからの流入者ですが、二〇〇一年現在、移民と難民の合計は約39万6000人(ちなみに二〇〇〇年現在、居住する日本国籍者は八八三名)になっています。152・


一五三頁・

このことを反映して、今回の総選挙では、11歳の時シリアから移民してきた元シリア人(社会自由党)、元パキスタン人(社会人民党)が国会議員に選出されています。デンマーク政府は、移民の文化、宗教などの背景を社会的に許容することで統合をはかっていますが、問題が無いわけではありません。


言葉ができないために仕事に就けないという社会的ハンディ、難民、移民による犯罪の増加、難民に支給される生活保護費の増大などが社会問題化しており、ヨーロッパ各国共通の悩みである移民問題にデンマークも直面していますが、「デンマークの政治は、デンマークに住む者の代表者で行われる」と言う基本原則は、一環として貫かれています。


国会議員選挙では、国籍がないと投票権も被選挙権もないのですが、地方議会への選挙権は、デンマーク国籍所持者以外では欧州諸国加盟国民とアイルランド、ノルウェー国籍所持者でデンマークに定住している一八歳以上の住民が対象になり、これ以外の国々の住民も三年以上デンマークに定住している一八歳以上の住民が投票できます。ここまで。平成28年2月4日


小選挙区制と比例代表制の併用制・153頁・平成28年2月4日・

少し選挙制度の技術的な問題になりますが、デンマークでは小選挙区と比例代表制が併用されています。投票は小選挙区の候補者に投票するか、政党に投票するかします。この選挙方式には比例代表制を守りながら、選挙民と地元候補者との関係を保つことができる特徴があります。153・


一五四頁・

デンマークの選挙区制は、大きく分けて三つ(コペンハーゲンのある島、その他全島、ユトランド半島)に分けられ、この三つの区分をさらにコペンハーゲンのある島では三つ、その他全島七つ、ユトランド半島七つの大選挙区に区割りしています。この合計一七の大選挙区から四〇名は比例代表で選出され、この大選挙区が一〇三の小選挙区に区割りされて、そこから一三五名の議員が選出されます。

選挙権は一八歳以上のデンマーク国民に与えられ、被選挙権は地方、国会を問わず、選挙権と同じ一八歳以上です。国会議員の立候補者は、政党公認候補として出馬するか、最低一五〇名最大二〇〇名の推薦を得て立候補することができます。154・


二四回目の政権交代・154頁・平成28年2月4日・

デンマークの政権は、一九九三年以来、社会民主党と社会自由党の連立政権が担ってきました。

社会民主党の創立は一八七一年と古く、自由党に次ぐ大政党で、国民一人ひとりが共同社会の中で責任を持ち、自己の人生を自由に選択できる社会の実現を目標に、民主的社会主義を党是とにしています。もう一方の社会自由主義党は、一九〇一年自由党から離脱したメンバーによって創立された政党で、国さあい政党ともよばれ、公共と市場経済を基盤に人民政治を尊重し、国際協調を図る政治を目標にしています。

デンマークの現憲法が発効したのは一九五三年ですが、その後の政権は革新と保守が交互に政権交代を繰り返し、154・


一五五頁・一九五三年から二〇〇一年までに二四回の政権交代があり、社会民主党など革新政党が一六回、自由党を含む保守政権が八回政権を担っています・(表・一・参照)。

表・二・が二〇〇一年の国会議員選挙の結果ですが、自由党が大勝し、保守党との保守連立政権が誕生しました。自由党はデンマークの政党では最も古く、一八一四年に自由主義を掲げた「農民友好会」に淵源を持ちますが、政党設立は一八七〇年で、自由主義を基にした人間の生き方を基本とし、個人の自由を守ることを政治の重点課題にしています。


また、保守党の創立は一九一六年で、自由と責任を政治方針の基本にしています。デンマーク国民党の創立は一九九五年とごく最近で、国家の自立と自由、人民政治の確立を国創りの基本方針にしています。

二〇〇一年、フランスの大統領選挙での極右ジャン・マリー・ルパンの大量得票、オランダでの極右勢力の進出など、ヨーロッパ各国において保守・極右勢力の台頭が顕著になっています。155・


一五六頁・平成28年2月4日・

この流れはヨーロッパ諸国が抱える移民問題、EU統合によって国境がなくなることへの反動としての排他主義などの現れと考えられています。この流れと無縁でいられないデンマークでも、社会民主党政権が進めてきた難民・移民への優遇策への批判、財源の再分配に対する意見の相違(とりわけ、環境・エネルギー分野への予算配分)、減税のあり方、医療政策をめぐり、革新と保守との間で意見の対立がありました。


新内閣は所得税、不動産税の増税停止、医療改革、子育て家族と高齢者への補助金のアップなどの政策導入を掲げ、これらの政策による歳出増を失業者対策費の削減、建物改造費の削減、家庭サービス補助金の削除、各種協議会・委員会の閉鎖、後進国援助の削除などで賄うことにした二〇〇二年の国家予算案を議会に提出しました。


ただし、デンマークでは政府予算と地方自治体の予算配分は行政分担が法律で決められているものがたくさんあり、たとえば、国の行政業務の約四五%は地方自治体の課題となっていますが、費用負担では七〇%は政府予算から出すことになっています。156・ここまで


一五七頁・平成28年2月4日 木曜日・


とくに政府予算の約七一%は教育保険、社会福祉関係の諸費用に充てられ、政権が交代しても根分野の予算は削減ができないだけでなく、増加している状態でもあります。このような状況から、政府が自由に差配できる予算はごく限られた額で、二〇〇二年の中央政府予算総額約4300億クローネのうち、政策転換の対象になった額は約70億クローネ、予算全体の一・七%程度しかありません。予算の面から見ると、政権が交代したと言ってもそう大きな変化は起きようがないのですが、環境分野の助成が削減されたこと、政治犯、難民の受け入れ規制を厳しくしたことなど新内閣の政策変更が今後どのような変化をデンマーク社会に与えるかを見守る必要があります。


二〇〇二年三月二〇日、政権交代後三ヶ月目に一七年ぶりの国会へのデモが労働組合、芸能人、学生によって行われましたが、国内外から新内閣の政策に対する批判が出ています。特に再生可能エネルギーへの補助金削減、委員会、協議会の閉鎖によって解雇されるスタッフ、予算削減によって解雇が懸念される中央官庁の役人たちから不満が出ています。また、政治犯や難民の受け入れ規制の強化には関係国から批判が出ており、後進国援助の削減は産業界にも不評で将来、輸出への影響が出る可能性があると表明している企業もあります。156・


試される新政権の判断・157頁・平成28年2月4日 木曜日・

政権交代で「再生可能エネルギー普及対策」の分野に影響が出始めています。新政権は約1億5000万クローネの普及対策分野の予算を全額カットしたため、政府の助成を受けて運営してきた多くの事業所は閉鎖を余儀なくされています。157・

一五八頁・例えば、日本人もたくさん訪れる「フォルケセンター」も、全予算の三分の二(800万クローネ)に当たる女性をカットされたため、約二〇名のスタッフのほとんどが解雇され、現在わずか四,五名のスタッフで運営管理をしています。

また、新政権は、環境汚染を理由に禁止されてきた缶ビール・缶ジュースの国内での販売を欧州裁判の判決を待たずに導入に踏み切りました(二〇〇二年九月二三日)。デポジェットが高いこと、また販売が開始されたばかりと言うこともあって、スーパーなどの販売量は予想を下回っていますが、空き缶を自然界に捨てる問題など環境保全への悪影響が出てくることが懸念されています。

この様に環境分野で部分的に後退が起こることは避けられませんが、政権交代で環境政策が大きく後退することは私は考えていません。デンマークでは環境・エネルギー、食料政策について国家の安全に関わる問題として各政党間で基本方針が確認されているため、大きな方針転換が行われるとは考えにくいのです。

それではなぜ、新政権が「再生可能エネルギー普及対策」の予算を削減したかという疑問が出てきますが、新政権から見ると「エネルギー二〇〇〇」で掲げた目標、例えば風力発電所の設備寮に二酸化炭素の削減量は既に目標を達成していると判断していて、これ以上予算をつけてその普及促進を啓蒙する必要が無いとしているのです。

こういう判断に立つ新政権によって「洋上ウインドファーム」の建設に歯止めをかかることになるのかが取り沙汰されていますが、私はそういう事態にはならないと考えています。そもそも「洋上ウインドファーム」は電力会社が独自にプロジェクトを組んでいるもので、デンマーク製による予算の執行はなく、政府・議会が電力会社に洋上ウインドファームの建設を強制するかどうかの違いなのです。158・


一五九頁・デンマークの電力供給事業は十分な発電を持っていて、国内外で新しいプロジェクトを手掛けないと、これ以上成長が期待できない状況にあります。電力会社は洋上風力発電のノウハウを一日も早く身につけ、国際プロジェクトを手掛けることで今後の生き残り戦略を立てています。


新政権は風力発電の建設には中立的な立場で、禁止も共生しない方針を取っています。政府の助成が無くても、内外の市場で競合できる姿を望ましいと考えているのであって、発電の方法を問題にしているわけではないのです。政府からの助成が無くても市場で競合できるまでに成長した再生可能エネルギー部門の予算は、増税の抑制・減税、医療費、・高齢者福祉に配分すべきだというのが新政権の政策なのです。

前政権が推進してきた環境・エネルギー政策によって、環境産業が小立雇用が確保されただけではなく、デンマークの風力発電は世界に広がって二〇〇一年末に約250万kWの設備が稼働しています。159・


160頁・新内閣がどの表な環境・エネルギー政策を採用していくのか、デンマークのこれまでの政策が試されています。各分野の予算削減によって、失業者が増大するような事態、あるいは大幅な環境政策の後退が現れてくると、三年後の総選挙で国民は別な政権を選ぶことになります。160・


2005年の国会議員選挙・160頁・

2005年2月8日、デンマークで国会議員選挙がありました。今回の選挙での投票率は84・5%でした。選挙結果は表・3・のとおりですが、自由党と保守党の二期目の連立政権が成立しました。2001年の政権交代後、増税がなされなかったことで国民の可処分所得が増えた結果が、現政権を選んだ理由だと思います。また、連立内閣の要であるデンマーク国民党の議席数が減らなかったのは難民や移民の削減政策もさることながら、国民に社会民主党の政策が見えなかったことに助けられたと思います。

また、2005年11月15日、地方議会選挙と市町議会議員選挙が実施されました。対都市のほとんどで社会民主党が勝ち、地方都市は自由党が押さえるという結果で、市町、町長のポストは社会民主党が45、自由党が36を獲得しました。地方選挙は社会民主党と自由党の二大政党で争われましたが、これが今後の国政にどのような影響を与えるか、気になるところです。

私はこれらの選挙の結果から、多くの国民が連立政権が進めている各種の政策に必ずしも満足しているとは言えないと考えています。特に難民・移民の締め出し政策に対する批判に注目しています。160・


161頁・デンマークは長い間人道主義を基本として、弱者保護の政策を採ってきたわけですが、現政権は外国人の締め出し政策を強化しています。例えば、本人がデンマーク国籍であっても、外国籍の相手と結婚した場合、24歳以下という年齢制限を設けて、結婚を理由にデンマークに滞在許可を申請しても許可しない、外国籍の相手と結婚する場合は、生活の保障ができる証明書の提出しなければならない、あるいはデンマーク人と結婚した外国人は離婚した時点で帰国命令が出されるなどの「排外政策」を採っています。現にこの政策導入によって、デンマークに入国し滞在する外国人の数が激減しています。


その他、強権的ともいわれる市町村合併策の導入、教育部門における10年生の廃止、年金年齢の引き上げ、増税ストップによる国民の所得格差の増大など、デンマーク国民が求めている政策とは必ずしも一致しない政策が導入されつつあります。

幸いデンマーク経済が好調であるため、今すぐ政情が不安定さを増すことはないと思いますが、少なくとも、経済的に恵まれていない層に対する政策を転換しないと、三年後の選挙は連立陣営は苦戦を強いられると思います。161・


デンマークの市町村合併と地方行政への改革・


162頁・平成二十八年二月四日・さて、日本でも市町村を大きく揺さぶり続けた大型市町村合併が行われましたが、デンマークは2007年1月までに現在の市町村数271を98まで削減する大合併が動き出しています・表・4・それと並行して13の県行政区をすべて廃止し、新たに五つの地方行政が設けられることになります。

市町村数271を98まで削減する狙いは、県行政区で取り扱っていた社会福祉・教育などの業務を市町村業務に移管し、住民と行政との距離を近くすることにあります。

例えば、疾病予防対策、リハビリテーションや介護、職業あっせんと職業訓練、非行青少年の施設の管理、成人教育などの福祉教育分野、あるいは従来、県の業務であった県道の整備と管理業務、自然環境の保全業務(この中には風力発電の設置に関する認可も含む)も市町村業務に移管されることになっています。

162頁・平成28年2月4日 木曜日・

ここまで

ここまで


国会議員の平均年齢は四七歳・152頁・

難民・移民にも選挙権はある・152頁・

小選挙区制と比例代表制の併用制・153頁・

二四回目の政権交代・154頁・

試される新政権の判断・157頁・

2005年の国会議員選挙・160頁・

デンマークの市町村合併と地方行政への改革・162頁・

平成28年2月3日 


デンマークという国 自然エネルギー先進国―「風のがっこう」からのレポート 単行本  – 2006・2 ケンジステファンスズキ (著)

資源の持たないデンマークでどうしてこんなに水準の高い、教育、医療、福祉社会を実現出来たのか?人が生きるために必要な水と空気を汚染から守り、食料とエネルギーの国内自給に努力し、「弱い者を助ける」という政治の愛情が感じられる社会。デンマークから学ぶものがあるとすれば、国民の生活を守る政治のありかただ。

 内容(「MARC」データベースより) 

デンマークはどうしてこんなに水準の高い教育、医療、福祉社会を実現できたのか? デンマークはなぜ自然エネルギーを選択し、どんな環境政策を採用しているのか、「デンマークという国のかたち」を紹介する。

--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

単行本: 231ページ出版社: 合同出版; 増補版 (2006/02)発売日: 2006/02

 目次

はじめに・11頁・


いまから39年前、国民福祉の基礎となる「所得の再分配」のあり方をデンマークの実際から学びたいと思い立ち、コペンハーゲン大学に留学しましたが、いつの間にか生まれ育った日本での歳月より長い時間が過ぎ去りました。1967年、22歳で日本を出国した時には、三年間だけの留学計画でしたが、いつの間にか10倍以上もデンマークに住み、結婚して子供が三人、孫三人授かり、デンマークにすっかり根を下ろしました。

1990年10月には、デンマークと日本の再業界の橋渡しを主要な業務とする「スズキ・リサーチ&アシスタンス・デンマーク社」(S.R,A.)を設立しましたが、デンマークの大型風力発電システム、バイオガスシステムを日本へ紹介する仕事を手掛けるようになるとは予想もしませんでした。

1997年6月には、デンマークの環境政策や風力発電、バイオガスを中心にした「風のがっこう」を設立することができました。そして、2002年6月には、丹後半島に位置する京都府の弥栄町からお誘いで、「風のがっこう京都」を開設することも出来ました。11・


12頁・ここ数年、日本に招かれ自然エネルギーに関する入門的な講演会、あるいは風力発電、バイオガス発電に関する専門的な研修講座での講演を依頼されることがめっきり多くなりました。私としては、市民の皆さん、あるいは産業界、行政の方々など職業を別を問わず、自然エネルギーの科学的・技術的な側面だけではなく、なぜ、デンマークが自然エネルギーを選択し、どんな環境政策を採用しているのか、いわば「デンマークと言う国のかたち」をぜひ日本の皆さんにお伝えしたいと心がけております。しかし、氷河の去った後の半島にできた北欧の国の長い「物語り」を、私のつたない話術では到底カバーすることはできません。

この本は、そんな要求不満や、日本の友人・知人のすすめによって生まれたものです。デンマークと日本の橋渡し役が書いた「デンマーク自然エネルギー事情」「共生の国デンマーク」からのメッセージとしてお読み戴き、21世紀の共生時代を築いていく、何らかのヒントを見つけ出していただければ望外の喜びです。12・平成28年2月3日(水)


第1章・デンマークという国

国土は氷河の置き土産・13頁・

「デンマークを育てた最良の息子」15頁・

ドイツとの「三年戦争」・17頁・

ダルガスの原野開発会社・20頁・

農地を増やす・22頁・

酪農「らくのう」への生産転換と協同組合方式・23頁・

グロントヴィの「国民高等学校」「農業学校」・26頁・

学校はほぼ100%公立・29頁・

キリスト教が国教・29頁・

デンマーク王国である・31頁・

200年前、アンデルセンが生まれた・32頁・

アンデルセンの作品の世界・36頁・

讃美歌をかいたアンデス線・39頁・

アンデルセンの生きた時代の国家予算・40頁・

世界で一番後進国を援助している・42頁・

教育費は無料・43頁・

「扶養法」の精神・44頁・

入院費・出産費用はすべて公的負担・45頁・

住宅所有のすすめ・48頁・

高い税金・48頁・

15歳から所得を自己申告・49頁・

「個人番号制度」の導入・50頁・

女性の社会進出・51頁・

税負担と「共生への責任感」・53頁・


第2章・「オイルショック」から転換した環境・エネルギー政策

環境政策は国民の健康管理のため・55頁・

異常に低かったエネルギー自給率・57頁・

「エネルギー計画1976年」・58頁・

第二次オイルショックが政策転換に拍車・58頁・

「エネルギー2000年」が政策の柱・59頁・

洋上ウインドファームの建設が始まる・60頁・

四つの新エネルギー・62頁・

自然エネルギーの特徴・63頁・

自給率アップ政策は成功したか?・64頁・

国内エネルギーが増加する・65頁・


第3章・なぜ、デンマークで風力発電か

第一選択は風力発電・67頁・

風力発電機の仕組み・68頁・

「オーバープロダクション」を防ぐ・69頁・

100年の歴史を持つ・71頁・

世界最大の風力発電設備・73頁・

デンマークの風力発電の特徴・75頁・

発電量の計算方式・76頁・

風力発電所を設置する場合・79頁・

「自然保護法」「自然保存法」「航空法」による設置制限・80頁・

風力発電所の売電価格・82頁・

デンマークが風力発電先進国になった理由・84頁・

売電収入と税金との関係について・87頁・

投資して採算があうか・87頁・

採算が取れる法則とは・89頁・

リパワーと中古風車市場の開設・91頁・

増大する洋上ウインドファーム・95頁・

洋上ウインドファームの経済性・99頁・


第4章・バイオガスで電気と温水を供給する

 バイオガスプラントの仕組み・100頁・

個人農場用のバイオガスプラント・104頁・

バイオガスプラント管理のポイント・107頁・

バイオガス発電の売電価格・109頁・

共同バイオガスプラントの利点・111頁・

共同バイオガスプラントの構造・112頁・

投入される原料・112頁・

共同バイオガスプラントの投資効率・114頁・

共同バイオ学プラントの現状・116頁・

ウスタゴー農業が導入したバイオガスプラント・116頁・ 


第5章・廃棄物をエネルギーに換えるシステムを作る

廃棄物の収集と処理は地方自治体が行う・119頁・

市町村の廃棄物処理に関する制度・120頁・

オーデンセ市の「廃棄物計画書」・121頁・

家庭ゴミは電気と熱になる・123頁・

産業廃棄物の収集・登録・報告義務制度・126頁・

「可燃物」の定義とダイオキシン対策・127頁・

コージェネ(熱電併給)発電所・128頁・

可燃廃棄物の処理と料金制度・129頁・


第6章・メタンガス・麦わら・木材をエネルギーに換える

「ゴミ捨て場ガス」の利用・131頁・

ガスの発生量・132頁・

麦藁の利用・134頁・

木材・廃材の利用・134頁・


第7章・国民を育てる教育・起業家を育てる社会

市民が育ててきた環境産業・136頁・

デンマークの教育目標と試験制度・139頁・

卒業資格を厳しく審査する・140頁・

職に就くには資格が必要・142頁・

教育の機会均等・143頁・

企業家が生まれる仕組み・145頁・

「風のがっこう」開設までの顛末・146頁・


第8章・デンマークという国の政治

投票率は87%・151頁・

国会議員の平均年齢は四七歳・152頁・

難民・移民にも選挙権はある・152頁・

小選挙区制と比例代表制の併用制・153頁・

二四回目の政権交代・154頁・

試される新政権の判断・157頁・

2005年の国会議員選挙・160頁・

デンマークの市町村合併と地方行政への改革・162頁・


第9章・今、日本の抱える問題は何か?

食料の自給に努めていた日本・163頁・

明治時代のエネルギー消費・164頁・

省エネが進まなかった日本社会・164頁・

食料・飲料水を国外に依存する日本・167頁・

減らないゴミ・増加する処理費用・169頁・

増え続ける高齢者層と社会保障関係費・170頁・

際立って日本的な問題・172頁・

増大する国と地方の借金・173頁・

北海道とデンマークの産業構造の相違・175頁・

北海道の農業には安価な電力が必要・178頁・

北海道をエネルギー供給技術センターに・179頁・

原子力発電依存による債務の増大・182頁・

風力発電では電力供給体制は組めない?・186頁・

日本の人口構成を分析すると・188頁・

大卒の初任給50万円の国・190頁・

収益力が非常に高い企業群・191頁・


第10章・日本はデンマークから学ぶものがあるか

「政治家、役人には、国民を守る義務がある」・193頁・

「豊かな生活」が持続できる社会が形成されつつある・194頁・

「日本の株だけは手を出すな」195頁・

日本の教育は間違っていないか・197頁・

大学が学びの場になっていない・199頁・

形式的な大学ブランド主義・200頁・


第11章・日本への私の提案

国のあり方を国民が考える・203頁・

「コンセンサス会議」を提唱する・204頁・

食料の国外依存主義からの脱却を・206頁・

水資源の公平な分配を・208頁・

エネルギー消費は公平性が重要・209頁・

水浄化のためにバイオガスシステムの普及を・210頁・

地域ビジョン作りに「可能性調査」を213頁・

膨大な市場に参入を・215頁・

ハイブリット型発電機を世界に普及させよる・218頁・

山林資源を循環的に利用する・220頁・

私の13の提案・220頁・


増補版のあとがき・参考文献・平成28年2月3日・

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9:22 2016/02/03


 

デンマークという国自然エネルギー先進国・

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難民・移民にも選挙権はある・152頁・平成28年2月4日 木曜日
デンマークは世界で紛争が起こるたびに発生する難民や移民を受け入れ、人口の七・四%が移民です。多くは旧ユーゴスラビア、トルコ、イギリス、スウェーデンのヨーロッパ諸国、アフリカのソマリア、レバノン、イラン、イラク、パキスタンなどからの流入者ですが、二〇〇一年現在、移民と難民の合計は約39万6000人(ちなみに二〇〇〇年現在、居住する日本国籍者は八八三名)になっています。152・
一五三頁・
このことを反映して、今回の総選挙では、11歳の時シリアから移民してきた元シリア人(社会自由党)、元パキスタン人(社会人民党)が国会議員に選出されています。デンマーク政府は、移民の文化、宗教などの背景を社会的に許容することで統合をはかっていますが、問題が無いわけではありません。
言葉ができないために仕事に就けないという社会的ハンディ、難民、移民による犯罪の増加、難民に支給される生活保護費の増大などが社会問題化しており、ヨーロッパ各国共通の悩みである移民問題にデンマークも直面していますが、「デンマークの政治は、デンマークに住む者の代表者で行われる」と言う基本原則は、一環として貫かれています。
国会議員選挙では、国籍がないと投票権も被選挙権もないのですが、地方議会への選挙権は、デンマーク国籍所持者以外では欧州諸国加盟国民とアイルランド、ノルウェー国籍所持者でデンマークに定住している一八歳以上の住民が対象になり、これ以外の国々の住民も三年以上デンマークに定住している一八歳以上の住民が投票できます。ここまで。平成28年2月4日

一五七頁・平成28年2月4日 木曜日・
とくに政府予算の約七一%は教育保険、社会福祉関係の諸費用に充てられ、政権が交代しても根分野の予算は削減ができないだけでなく、増加している状態でもあります。このような状況から、政府が自由に差配できる予算はごく限られた額で、二〇〇二年の中央政府予算総額約4300億クローネのうち、政策転換の対象になった額は約70億クローネ、予算全体の一・七%程度しかありません。予算の面から見ると、政権が交代したと言ってもそう大きな変化は起きようがないのですが、環境分野の助成が削減されたこと、政治犯、難民の受け入れ規制を厳しくしたことなど新内閣の政策変更が今後どのような変化をデンマーク社会に与えるかを見守る必要があります。
二〇〇二年三月二〇日、政権交代後三ヶ月目に一七年ぶりの国会へのデモが労働組合、芸能人、学生によって行われましたが、国内外から新内閣の政策に対する批判が出ています。特に再生可能エネルギーへの補助金削減、委員会、協議会の閉鎖によって解雇されるスタッフ、予算削減によって解雇が懸念される中央官庁の役人たちから不満が出ています。また、政治犯や難民の受け入れ規制の強化には関係国から批判が出ており、後進国援助の削減は産業界にも不評で将来、輸出への影響が出る可能性があると表明している企業もあります。156・
ここまで

試される新政権の判断・157頁・平成28年2月4日 木曜日・
政権交代で「再生可能エネルギー普及対策」の分野に影響が出始めています。新政権は約1億5000万クローネの普及対策分野の予算を全額カットしたため、政府の助成を受けて運営してきた多くの事業所は閉鎖を余儀なくされています。157・
一五八頁・例えば、日本人もたくさん訪れる「フォルケセンター」も、全予算の三分の二(800万クローネ)に当たる女性をカットされたため、約二〇名のスタッフのほとんどが解雇され、現在わずか四,五名のスタッフで運営管理をしています。
また、新政権は、環境汚染を理由に禁止されてきた缶ビール・缶ジュースの国内での販売を欧州裁判の判決を待たずに導入に踏み切りました(二〇〇二年九月二三日)。デポジェットが高いこと、また販売が開始されたばかりと言うこともあって、スーパーなどの販売量は予想を下回っていますが、空き缶を自然界に捨てる問題など環境保全への悪影響が出てくることが懸念されています。
この様に環境分野で部分的に後退が起こることは避けられませんが、政権交代で環境政策が大きく後退することは私は考えていません。デンマークでは環境・エネルギー、食料政策について国家の安全に関わる問題として各政党間で基本方針が確認されているため、大きな方針転換が行われるとは考えにくいのです。
それではなぜ、新政権が「再生可能エネルギー普及対策」の予算を削減したかという疑問が出てきますが、新政権から見ると「エネルギー二〇〇〇」で掲げた目標、例えば風力発電所の設備寮に二酸化炭素の削減量は既に目標を達成していると判断していて、これ以上予算をつけてその普及促進を啓蒙する必要が無いとしているのです。
こういう判断に立つ新政権によって「洋上ウインドファーム」の建設に歯止めをかかることになるのかが取り沙汰されていますが、私はそういう事態にはならないと考えています。そもそも「洋上ウインドファーム」は電力会社が独自にプロジェクトを組んでいるもので、デンマーク製による予算の執行はなく、政府・議会が電力会社に洋上ウインドファームの建設を強制するかどうかの違いなのです。158・
一五九頁・デンマークの電力供給事業は十分な発電を持っていて、国内外で新しいプロジェクトを手掛けないと、これ以上成長が期待できない状況にあります。電力会社は洋上風力発電のノウハウを一日も早く身につけ、国際プロジェクトを手掛けることで今後の生き残り戦略を立てています。
新政権は風力発電の建設には中立的な立場で、禁止も共生しない方針を取っています。政府の助成が無くても、内外の市場で競合できる姿を望ましいと考えているのであって、発電の方法を問題にしているわけではないのです。政府からの助成が無くても市場で競合できるまでに成長した再生可能エネルギー部門の予算は、増税の抑制・減税、医療費、・高齢者福祉に配分すべきだというのが新政権の政策なのです。
前政権が推進してきた環境・エネルギー政策によって、環境産業が小立雇用が確保されただけではなく、デンマークの風力発電は世界に広がって二〇〇一年末に約250万kWの設備が稼働しています。159・
160頁・新内閣がどの表な環境・エネルギー政策を採用していくのか、デンマークのこれまでの政策が試されています。各分野の予算削減によって、失業者が増大するような事態、あるいは大幅な環境政策の後退が現れてくると、三年後の総選挙で国民は別な政権を選ぶことになります。160・ここまで

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