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2022年11月

2022年11月16日 (水)

教育勅語・第五章、発想の転換による自治体経営・1・中国の核戦力に日本は屈服する今こそ日本人に必要な核抑止力伊藤 貫・

温泉道場・

2023/01/25 7:50・


育勅語原文 — 宮城県神社庁 (miyagi-

jinjacho.or.jp)


教育勅語 全文 - 検索 (bing.com)


朕が思うに、歴代の天皇が国を治められたのは、広く遠くまで道徳が行き渡り、道徳が深く厚かったからなのです。国民が忠義に厚く、よく孝行し、億兆の心を一つにして、その世代世代において美徳をなしてきたことが、我が国の国のあり方の本質であり優れた点であり、教育の根本であり核心部分でもあるのです。あなたたち国民はお父さんやお母さんに親孝行し、兄弟は仲良くし、夫婦は仲睦まじく、友人とは信じあい、他人にはうやうやしく、自分には慎み深く振る舞い、周囲の人に優しくして、学問をおさめ、仕事の技術を習うことで、智能を広く高め、徳と才能を磨いて、公共の利益を広め、世の務めを果たして、常に国の憲法を重視し、国の法律を尊びなさい。ひとたび緊急な事態が起これば、勇気を持って公に奉仕し、永遠に続く皇統の運命を助けなさい。このようなことは、ただ朕にとっての忠義心に溢れた良い国民であるのみならず、先祖から教えられた風習を明らかにものなのです。
この道徳は実に我が歴代の
天皇が残した教訓であり、その子孫と国民がともに守っていくべきものであり、古くからあるが現代でも通じるもので間違いはなく、また、国内国外であっても道理に外れることのないものです。朕はあなたたち臣民とともに、よくよく心に留め、皆、その道徳を一つにしていることを切に願うものです。

2023/01/13 18:00


いずみふさほ(泉 房穂)オフィシャルサイト/明石市議会議員候補者公募開始! (izumi-fusaho.com)

23年1月1日・


各論はこちらから・市政ガイド2022/明石市 (akashi.lg.jp)


明石市、市政ガイド全編

2022guide.pdf (akashi.lg.jp)


子どものまちのつくり方明石市の挑戦 単行本–2019・2・11泉 房穂 (著)・

第五章、発想の転換による自治体経営・145頁・・174頁まで、146頁

・お金が無い、人がいないと言いますが、漫然と施策に予算をつぎ込み、しなく体もいい仕事を職員に任せているから財政難になり、人手が足りなくなるのです。

・こうした分野の予算を削れば、お金は出てきます。優先すべき施策に先に予算を確保し、それ以外のお金は、本当に必要な施策から十番に予算を付ければいいだけです。そうすれば、人も余ってきます。

・重点分野に人を移動し、次の他の分野にも順に職員を配置すればよいのです。職員がそこに配置されていることを理由に、漫然と従来の業務を続けるようでは、お金も人も、いくらあっても足りなくて当然です。

・必要なら発想の転換。それを実行する強い意志と行動です。

・149頁

・必要なのは、日本全体での立ち位置を認識し、時代状況をシビアに捉え、自分のまちを客観的に判断すること。それを受け入れ、現実に正しく即した施策を採る事です。

・そのためには、フルパッケージ施策が必要との思い込みや、単なる全国一律の発想から脱却することが不可欠です。

・市民に最も近い行政は「市」・

住民に身近な自治体職員の仕事のあり方も、発想の転換が求められています。職員をサンタクロースに例えて説明します。

・サンタ(=職員)は、子どもたち(=住民)に、国からあてがわれたプレゼントを渡すのが仕事です。サンタ1人に子どもが30人います。コレまではチョコレート90個、ビスケット60枚、キャンディ30個が下りてきました。サンタは、チョコ3個、ビスケット2枚、キャンディ1個ずつ配れば全員に行き渡ることを確認し、イベント会場に子どもたちを集め、数を間違いないように渡します。一つも多く渡したり、同じ子に二度渡したりしたら大変です。与えられた分を忠実に、公平に渡します。ここに創意工夫は要りませんし、楽しくもありません。これがかつての自治体の職員の仕事でした。

・150頁・ところが今や、国からの配給はどんどん減っています。チョコレートは中途半端な70個になり、ビスケットはたったの20枚、1人に1枚行き渡りません。次第に減り続け、子ども30人にお菓子は全部足しても30個に届かなくなります。それでもプレゼントを渡すのが仕事です。

・どうすればいいのでしょうか。例えばビスケットを半分に割り、1枚を2人に分ける。あるいはクイズ大会を開催し、勝った子から順番に好きな物を選んでもらう。いろんな工夫が考えられます。今の自治体職員の仕事に求められるのは、まさにこうした知恵と創意工夫です。

・これまでは国に言われたことを忠実にこなすだけでした。国からのプレゼントを待っている住民へのパイプ役に過ぎませんでした。しかし今、渡すものは少なくなりましたが、住民たちの顔を見ながら、どうすれば喜んでもらえるのか、自分で創意工夫することが許されるようになりました。

・住民にどのようなサービスを、どんな方法で提供するのか、実行するのが仕事です。厳しいことでも辛いことでもありません。これが本来の姿です。これまで単に決められた分配をするだけだったのが、自治体がいつ配るのか、あるいは届ける・配らないも含め、方法も選べるのです。非常にやり甲斐があり、楽しみのある仕事に変わったのだと、職員に伝えています。

・151頁

・未だに国の指示を待っていれば何か素晴らしい設計図が来るかのような、幻想を抱いている職員もいるかもしれません。そんな時代はとっくに終わっています。全国津々浦々に適応できるような設計図を期待してはいけません。待ったところで、追加のチョコやビスケットが支給されるわけではありません。

・限られた手持ちの資源を有効に使い、どのように現場で対応するか、発想と行動を切り替えることが不可欠なのです。それが出来れば、これほど楽しく、やり甲斐のある仕事は無いと思えるはずです。

・住民に最も身近な市区町村こそが、市民と直接向きある醍醐味と、やり甲斐を感じることが出来ます。国が一番偉く、次が県、一番下が市区町村という序列で発想をするのは間違いです。一番住民に身近な存在は市区町村です。住民の気持ちをダイレクトに感じられる現場にいる市区町村が、全国の国民に直接サービスを提供しているのです。しっかり現実を認識し、誇りと責任を持って行動すべきだと職員には機会あるごとに伝えています。

・152頁

・その施策に普遍性はあるか

・意識しているのは、施策の普遍性です。私が市長を辞めた後も続く、時間的普遍性です。そして明石以外の町でも出来る、空間的普遍性です。決して市長の思いつきでマニアックなことを次々に打ち出しているわけではありません。

・時代や市民ニーズに応えたテーマ、特に今後も継続し、より高まってくる分野で求められている適切な施策であれば、当然ながらその施策は普遍性を持ち、誰が首長であっても、どこでも安定的に続いていきます。

・このことは我が町の特性を認識し、それに特化することと矛盾しません。地域の特性と、普遍性のある施策は両立します。自分のやっていることがどれほど普遍性を持つのか、そのことを意識せず、中途半端に漫然と毎年同じ事を繰り返し、隣のまねをしていることが大きな問題なのです。

・私は子育て支援に特に力を入れていますが、働く場所に通えるエリアだからこそ、子育て支援を重点化することで人が集まるのです。通勤圏では無いところで同じ事だけをしても効果は見込めません。自分の地域に何が必要なのか、ここにリアリティを持って施策を考えていかなければなりません。

・153頁

・各自治体で職員が発想の切り替えを意識できていないなら、大きな問題です。明石の施策はユニバーサルな理念に基づいており、どこでも適用できますし、今すぐに実施すべきないようだと思っています。でも、すべてがそのままで適用できるわけではありません。兵庫県内だけでも日本海側から瀬戸内の淡路島まであり、全域に一律に適する施策は限られて当然なのです。

・基盤整備などは、全国一律にある程度の合理性はありますが、福祉などの個別救済的な分野になると、地域ごとに状況が大きく異なります。国に期待して無駄に待つのでは無く、自分の足元をよく見つめ、現場に即した仕事にすぐに取りかかるべきです。全国の自治体が発想の転換を遂げたら、日本の社会は随分変わってくるでしょう

・発想の転換とやりくり次第で、今ある財源と人で普遍的な施策を十分実施できること、間違いが大きく発展することを、明石市は数字と、市民の実感を持った成果として明らかにしていますすべての子どもへの普遍的な施策を継続すれば、町に好循環が生まれ、拡大していくのです。

・154頁

・日本の近代化に見る時代の変化・全国的に見ると、今の政治や行政は時代の変化に追いついていません。大きな変化にきちんと向き合い、市民にしっかり責任を果たしていく発想の転換がまだ十分出来ていないのです。私はこのことを強く意識して、実際に打つ手を選択しています。だからこそ明石の施策は普遍性を有しています。発想を切り替え、これからの自治体のあり方、町づくりのモデルとなり得る施策を実施しているのです。

・大きな時代認識で言うと、日本で大きな社会変化が起こった明治維新以降、近代化を支えた重要な要素が、大きく四つあったと思っています。

まず「全国一律の制度設計の必要性」と、都市基盤整備、いわゆる道路や橋、上下水道などの「広域ハード整備の必要性」です。この二つは江戸幕府から中央集権国家に移行するに当たり、絶対に必要な要素でした。

・そして、それら二つの必要性を優先し、家族ニーズを後回しにしても構わないだけの地域の強さ、「大家族制や村社会のセーフティネットの存在」があったのも大きな要素です。さらには、中央政権による地方支配の継続を可能ならしめる「右肩上がりの成長」、すなわち人口増と、それに伴う財政増が担保されていたのも極めて大きな要素です。しかし、もはやいずれも過去の社会の姿なのです。

・155頁

・これらが既に大きく変化してしまったのが、今の現実の社会です。これらの古い価値観から脱却し、発想を転換してこそ、次の時代につながる町づくりが出来るというのが基本となる考え方です。

・二重構造と三層構造の都市制度・

江戸時代は、中央の幕府と地方の藩の二層構造で行政運営をしていました。それがある程度安定して機能し、二百数十年に渡る幕藩体制が続きました。

・ところが明治になり西洋文化が流入し、一気に中央集権体制を目指すことになります。市制町村制の導入時1万六千近くあった全国の各地域に向けて、中央政府が直接指示を出すことは非効率です。地方と中央の間に、中間管理職として位置付けられたのが都道府県です。政府が下の47に指示すれば、中間にいる47は各地域に指示を伝える構造です。

・中央政府は都道府県に対し、各地域に10の仕事をさせなさいと指示し、10の財源を配ります。たとえば、兵庫県にある41市町それぞれに10のことをさせるには、国は兵庫県に410のお金を渡します。県は各地域に10ずつお金を分配すればいいのです。

・156頁

・お金と一緒に、プラモデルで言えば組み立て図とパーツに当たる物も、国から全部来ていました。都道府県の仕事は国から指示されたことを忠実に下ろすことで、市区町村の仕事は、お金とパーツを使い図面通りに組み立てることです。そこに創意工夫は要りません。「全国一律の制度設計」に基づき、「全国一律の制度設計」に基づき、津々浦々、画一的な処理こそが当時望まれたことです。個々に判断するなど、勝手なことは許されませんでした。

・税制、教育制度など、あらゆる制度がスピーディーに、しかも全国で一律に実施できるという点では、国・都道府県・市町村の三層構造は、非常に合理的でした。「右肩上がり」の人口増と、それに伴う財政増が続く成長時代に適していたのです。藩ごとに分かれていたインフラを、一気に全国につなぐ「ハード整備」にも、都道府県に一定の権限を持たせて中央の指示に従わせるシステムが有効でした。

・ここに、お上に従うと言う文化が幅をきかす要因があります。金を握って命令する国が偉く、次が都道府県、その下に市区町村という上下関係のもと、市区町村は与えられたお金で指示された通り忠実に仕事をすることが求められる時代が続いてきました。

・157頁

・大家族制・村社会のセーフティネット

・こうした時代でも、個別の救済は当時の村社会が受け持っていました。私の家は漁師でしたが、もし知的障害の子が生まれたら、その子はやはり漁師になりました。学校の勉強が得意で無くても、力仕事が出来れば網を引けばいいのです。また、かつて漁師の世界では、捕った魚を、能力では無く人の頭数で均等に分ける文化がありました。障害があってみ、一生食い扶持には困らない実質的な所得保障が成り立っていたのです。

・一人親の場合も同じで、例えば、長男が戦死した後、弟が兄に代わって再婚して夫になり、その妻と子どもを養うというようなケースがもあったくらいです。私の父も姉の旦那さんが亡くなりましたので、姉の子どもが小学校の頃から、私の父が親代わりを務めました。大家族では、そのようにひとり親家庭支援が行われていたりもしたのです。

・こうした基盤があったからこそ、個々の市民の立場よりも、従うべきはお上という文化で日本社会は成り立ってきたのでしょう

・158頁

・しかし、状況は大きく変わり、従来のままの方式が続けられる時代ではなくなりました。

・四つの要素はすべて変化した。

・最もいい気な影響は人口減少と財政難による物です。これまでは10の仕事に10のお金が確保できていました。仕事が11に増えれば、国が11のお金を用意しました。増えた仕事の財源と設計図が用意できたのです。

・ところが右肩上がりの時代が終わり、人口は減り、財政が厳しくなると、国は10の仕事に10のお金を用意できません。すると、9のお金を渡し、お願いする仕事は5だけで、後は地方の方で判断を、とならざるを得ません。

・明治維新から続いてきた、財源の裏付けを持って中央政府が命令を下し、全国一律に仕事をさせるシステムが成り立たなくなっているのです。

・地方の裁量、判断と言われるのは、裏返せば国が自治体にお金を渡せないと言うことです。渡せないので最低限のことだけを決めて、後は地方で、と言わざるを得なくなったのです。右肩上がりの時代が終わり、財源の裏付けが出来なくなり、もう元には戻りません。

・159頁

あわせて、全国どこでも同じ制度設計に基づいて取り組む必要性も薄れました。むしろ各地域の人口構造、産業構造など、特性や実情に応じた施策展開へとシフトしています。道路や港湾に莫大な税金を費やす時代では無く、新設から維持管理ハード整備からソフト運用へと次の段階に移っているのです。

・地域のセーフティネットも崩れました。産業構造が変わり、漁業、農業中心の社会では無く、村社会の所得保障は成り立ちません。大人数の中で力仕事だけをしていれば言い時代では無くなり、障害者もサラリーマンとして稼がねばなりません。しかし、雇用主・被雇用者の関係にある労働環境では、障害者の所得保障は困難です。社会全体で生活保障をしなければならない時代なのです。

・一人家庭もそうです。兄が死んだら弟がその嫁と再婚するような社会はとっくにありません。かつての大家族制が途絶え、「後」による支援が必要なのです。

・かつての日本社会は、「法は家庭は入らず」「民事不介入」、行政や権力は、家庭の問題に関わらない方が望ましいという価値判断をしていました。

・160頁

・これは世界でも珍しいことです。これが成り立っていたのは、実質的に地域社会、大家族が小さな国家のような存在で、セーフティネットを張っていたからです。

・それが崩れ、法は家庭に入らざるを得ません。民事不介入のママでは子どもの命が危うく、実際に事件も起きてきています。公が家族や個人に直接的に関わる時代が到来しているのです。・2000年には介護保険制度がスタートし、児童虐待防止法も制定されました。それまで、介護や児童養護などは、あくまでも「民」の領域、プライベートな問題でした。それが社会化され、「公」の問題に変わりました。

・このときを境に、個別救済、一人ひとり市民ニーズに、ようやく行政が向き合う時代が始まったというのが私の認識です行政が責任を果たすべき時代はとっくに来ているのです。

 

・明治維新以降の右肩上がりの時代に有効であった全国一律の制度設計、ハード整備の必要性が薄れ、地域社会のセーフティネットも崩れ、地方のことは地方に任せる方が望ましい時代に変わりました。

・国にお伺い立て、都道府県から市区町村へと指示された仕事を粛々とやる時代は既に終わりました。どちらが「上か下か」では無く、どちらが「住民により近いか」へ、発想の転換が必要です。お上に従う文化から、市民により近いところで責任を負う文化の時代が来ているのです。

・161頁

・住民に一番近いのは市区町村です。もっとも遠いのは国です。地域特性を踏まえず、ただ従うだけの時代ではありません。最も住民に近い市区町村が、しっかりと住民ニーズに向き合い、行政目線では無く住民目線で、地域に即した施策を実施する事が町の未来の望ましいことなのです。

・自治体に求められる仕事の仕方も、これまでとは明らかに違います。漫然と指示を待つのでは無く、むしろ自ら現場に行き、ニーズを捉え、そのニーズに即した対応を柔軟かつ迅速に行って行くことこそが求められているのです。

・リアルな標準家庭像を持つ

・認識に大きなずれがあるのが、いわゆる標準家庭の捉え方です。

・例えば厚生労働省などが示してきた標準家庭像は、「お父さんはバリバリ働き収入安定、お母さんは専業主婦で時間に余裕。子どもは二人、男の子と女の子で、共に元気で明るい子、しかも家族はみんな仲良し」みたいな家庭です。「そんな家族、どこにおるねん」と関西弁で突っ込みたくなります。高度経済成長の直前、農村漁村社会から都市型都市型サラリーマン社会への移行期に描かれた旧い家族像です。しかも整備津役割分担が色濃く反映された旧い意識のモデルなのです。

・162頁

・実際に存在するかもしれませんが、今までにこんな前提で福祉行政をしているのが、そもそもの間違いです。今の実情とかけ離れた古い価値観でもあり、これらが既に大きく変化してしまったのが、現在の社会です。総中流意識から格差社会へと言われる中、標準家庭像が今の現実とずれているので、未だに法は家庭に入らず、行政は関わらずに何もしない方がいい、と言うことが続いてしまうのです。

・私の標準家庭のイメージは、公です「お父さんは収入不安定で、たまに暴力。お母さんはパーとを打ちきられ、心を病みかけ。子どもは不登校がちで、しかもネグレスト状態。家の奥にはおばあさんが半分寝たきり。生活費として借りたサラ金の返済に追われ、生活困窮」。

・実際のところ、弁護士時代にそのような家族からの相談を毎日のように受けてきました。家族で支えきれず、助けを求めている家庭は、問題が一つの分野にとどまらず複合するケースが多いのです。

・この家庭の支援には、お母さんの就労う支援も要ります。お父さんへのサポートや、家族の生活支援も必要です。この五つをパッケージにしてこそ、それぞれが有機的に機能する支援になります。このため、縦割りでは無く連携して取り組む、これが総合支援的な発想です。

・163頁

・「公」が家庭を支えることは、個別の市民ニーズに応えることにもつながるという考え方を、明石ではかなり徹底させてきました。それぞれの状態に応じた有効な支援を市民が適切に受け取ることが出来るようにするためにも、発想を転換し、リアルな標準家庭像を持つことは、絶対に必要なのです。

・国に頼らない自立した財政

・個々の市民ニーズに応えるには、財政の問題を避けては通れません。要は、市民から集めたお金を、誰が、どう使うかです。

・もし人が個々単独のままで成り立つ社会があれば、それは弱肉強食の世界です。しかし現実の世界は、それぞれ応分の負担を伴いながら、みんなで支え合う社会として成り立っているのです。

・人は一生「個」だけで生きていけるわけではありません。子ども時代が大変長く、生まれる前から親や周りの支援なくして生きられないのです。ですから助け合いが発達し、誰もが支え合いの中で生きているのです。

・みんなで支え合う社会は、負担をどうするか、が重要なテーマです。誰から、どのように出してもらい、出し合ったお金をどう使うか。まさに政治、行政の役割です。

・164頁

・より多く出し合えば、負担は重くとも多くのことが可能になります。一方、出すお金をより少なくすれば、出来る範囲は限られます。例えばサールル活動で、月500の会費を5,000円にすれば、出来ることは大きく広がります。負担をいくらにするかは、何をするかとセットになっているのです。

・負担と受益は密接な関係にあります。しかし日本社会では、そこを見えにくくしています。国と地方の関係でもそうです。いったん国にお金が召し上げられ、国からお駄賃をもらうような制度になっているのです。

・これは自立した経営は困難です。これを抜本的に変え、お金は地方がしっかり集める、と言うのが私の基本的な考えです。高負担とは言いませんが、私は中負担・高福祉派です。低負担では出来ることが限られます。今は基礎自治体の役割が大きい時代です。少なくとも中程度の負担が望ましいと考えています。中程度の負担に知恵や工夫を加味することで、高い市民サービスを身近に提供していくことが、市区町村の役割だと考えています。

・ところが現在の財政制度では、地方が努力をすると、逆に地方交付税を減らされます。子ども医療費助成などで各自治体が独自の市民サービスを付加すると、ペナルティとして補助金を減らされるのです。財源を工夫して独自施策をしても、かえって財政が圧迫され、非常に由々しき事態です。

・165頁

・ただ、それを愚痴っていても仕方がありません。私の場合、お金がないから市民サービスが出来ないという発想はありません。今ある限られた予算の中でも、何とかやりくりし、実施してきました

・中央省庁に行っても、私が助成金の嘆願をしないので驚かれます。ほとんどの首長はお金をくださいと言いますが、私は、「お金など入らないから文句を付けるな」です。本来は国がすべきことを、今あるお金で先行して実施するので、邪魔をしないで応援してくくれればいいのです。

・国から助成をより多くもらいたい、引き出したいという発想に、多くの市長が未だに囚われています。それでは自立した自治体経営は困難でしょう。助成金額る法が助かりますが、国に過度に依存せず、やりくりするのが首長の手腕であり、今の時代の自治体経営の有り様だと思います。

・組織再編で体質改善

・組織も順次再編し、2017年にようやく、14部局(1局13部)の縦割り組織を一気に5局に集約しました。

・166頁

・組織は政策、総務、都市、福祉、市民生活の5局です。

・単なるスリム化だけが目的ではありません。意思決定、人事、予算、そして市民理解、この四つをしっかり連動させるには、組織再編が不可欠でした。

・政策、人事、予算を同じ部署に置く自治体は少なくないと思います。明石もこれまでは政策部が戦略、人事は総務部、予算を財政部で所管していました。各部門がバラバラでは、整合を取り、施策を迅速に実施するのは非常に困難です。再編して、政策局に政策決定と人事と予算を揃えました。広報もありますから、まさに総合戦略本部です。

・大きな方向や戦略を決め、それを実行する人事と、必要な予算を確保し、市民理解を得る広報の政策特集を作成する部門を集約したことで、縦割りの連携不足での停滞をなくし、一貫性のある迅速な町づくりを行えるようになりました。

・集約の効果は、業務の見直しや財政健全化にも現れました。以前は前例踏襲で、漫然と仕事を続ける風潮もありましたが、14を5に集約し職員の数を減らしたので同じやり方で続けていてはとても回りません。必然的に見直しを迫られます。

・「必ずすべきこと以外は、「した方が望ましいこと」を優先度に応じて、「どちらでも大丈夫なこと」無理せず、「あえてしなくてもいい」事は速やかに止める、と意識と行動の改革につながりました。

・働き方とお金の使い方が変わり、それが新たな予算の確保、市民サービスの充実と向上につながり、メリットは非常に大きいと感じています。

・168頁

・ただ、役職とポストが減りますから、当然組織内の強い抵抗はありました。普通は組織の抵抗が強く、なかなか実現出来ないかもしれません。もっと早い段階で実施するはずが、実現まで結局6年もかかってしまいました。

・無駄の削減とコスト感覚。

・市民の理解を得るため、お金が無いことを理由にするのでは無く、まず徹底した無駄の削減に取り組みました。公共事業は緊急性に欠ける事業から、大幅に削っていきました。

・職員の数も減らし、総人件費を10億円削減しました。一方で一人あたりの仕事の質を高め、仕事は増やしています。中核市に移行し100人ほど新たに職員が必要になるところでしたが、増やしていません。これにより100人分の人件費が浮き、10億円の予算が生まれました。人事にしっかり切り込み、仕事の仕方を変え、予算を生み出すことにしたのです。

・次に私が行ったのは、先に財源を確保する方法です。市の目玉施策に使うので、最初に全体の1%、20億円を確保し、残りで予算案を作成するよう命じるのです。明石市ぐらいの規模だと、20億円あればかなりの市民サービスの実現が可能です。

・169頁

・財政健全化には、不断の経営努力が不可欠です。コスト感覚について、自分のお金と同じように大事にするよう職員に厳しく言っています。あえて決済をしない手法もとります。決裁書類が上がってきても簡単に判を押さず、漫然と上げてきた場合は断固切ります。

・例えば近年実施した明石駅前の再開発は、市だけでもおよそ100億円の負担をした事業です。市民の税金を無駄にしないために、知恵を絞りました。

・市役所機能の3分の1を移転する案を10分の1以下の面積に集約し、狭くても市民サービスは向上させ、コンシェルジュが丁寧に案内する窓口に変更しました。生み出した空間は「本」と「子ども」施設に入れ替え、国の補助金が約30億円に増えました。

・170頁

・その一部で本と子どもの大型遊具をそろえたのです。市民負担を大きく減らしながら、市民の望みをかなえ、まちの活性化に寄与した実績は、財政健全化の一つの象徴となりました。

・明石駅の東側には別の再開発ビルもあります。私が市長に就任した時、経営補填で市が毎年1億4,000万円の補助金を出していました。さらに市の貸している約100億円の返済を年10億円から半額に減らし、改修費の10億円も出して欲しいと言われました。

・でも、トップダウンで方針を転換し、経営努力を迫った結果、今や補助金は何とゼロになりました。わずか数年で補助金無しで経営できるようになったのです。毎年の返済額も減らさず10億円が戻ってきています。改修費も一銭も出さず、工面して完了しました。

・実態を調べると、それまではテナントに逃げられないよう言われるがままに年々賃料の減額交渉に応じていたのです。賃料を適正にするよう指示し、テナントの入れ替えを命じるなど毅然と対応したことで、わずか6年で経営は黒字になりました。

・空きが目立つ駐車場も埋める努力をせず、近隣の駐車場業界に忖度し、意図的に満車にならないようにしていました。その政で市民の税金で1億4,000万円を補填していたのです。私は不動産関係の業界団体などに気を遣う仏用がありませんので、気を遣わず普通にしろと命じたら、その結果、駐車場の経営も黒字に転じました。

・171頁

・私が命じたのは「民間並みの経営努力をすること」だけです。本気で腹をくくって自助努力するようになると、1億のお金が浮いたのです。普通にやれば1億4,000万円の補助金は要りません。10億円も返ってきます。改修費もかかりません。これは、やれば出来ることなのです。

・全国どこでも同じ事が起こり得ます。要らぬ顔色を伺い、潰してはいけないという思い込みから、漫然とみんなの税金を無駄遣いして、努力無き赤字経営を続け、自分たちのお金ではない、税金などどこかからわいて出てくるとの悪循環に陥ってはいないでしょうか。

・みんなから預かっているお金です。みんなのために適正に使う。正常な経営意識で取り組むようにするだけで、億単位の財源が出てくるのです。

・これは一例で、私は行政のあらゆる無駄にメスを入れてきました。手っとり早いのは不採算部門を潰すことですが、潰されるとなれば、みんな必死に経営努力をします。単にハコモノつくり、作ったら潰すなどでは、財政が甘くなり、ひずみが出るのは当然です。

・172頁

・市民に向き合った判断をすれば、財源はまだまだ出てくるでしょう。腹をくるり、潰れても構わないくらいの覚悟で最後までやりきるという首長の思いが行政全体に浸透すれば、職員もサイレントマジョリティを見て仕事に取り組むようになります。

・市民はちゃんと見ています。行政が一生懸命にやっていることを感じてこそ、応援につながるのです。信念を曲げることなくやり続けることです。それが市民に信頼され、指示もされ続ける事になるのだと思います。

・「公」を担う心のあり方

・何でも官から民へ、で済むのではありません。一人ひとり、お互いに支え合わなければ生きていけない社会です。みんなの税金でみんなを支える「公」は不可欠で、その働きは尊いのです。

・「公」が担うべき社会の責務はこれからも多岐にわたります。本来、市民から「もっと給料もらわんかい」と言われるべき仕事です。

・私自身「公」派で、みんなのため、社会的責務を担うのが行政、との思いが根本にあります。期待が強いだけに、責任を果たしていない状況では、不満や怒りも半端なく強く、働いていないのに給料をもらう公務員は許せません。

・173頁

「公」を担う心のあり方として、ずっと昔から自分に言い聞かせている言葉を紹介します。「必要なのは、優しさと賢さと、ほんの少しの強さ」。

・これはチャップリンの「ライムライト」の中の台詞、「人生に必要なのは、勇気と想像力と、ほんの少しのお金」をもじった物です。凄く気に入り、いろんなところで披露しています。

・「やさしさ」は想像力です。誰かの痛みに寄り添える想像力を、私は優しさと呼びます。役所の目線ではなく、市民の立場に寄り添い、市民の目線から物を見る力です。いくら頑張ったところで、他の市民と同じ人間にはなれません。また、職員が会うのは、イノジーマイノリティが多く、特定の層とばかり接していると本質を見失います。ですから、想像力の翼を広げ、サイレントマジョリティの目線で働く想像力を持つよう、いつも言っています。

・「賢さ」は、本質を見極める力です。国に漫然と従う時代ではありません。自分の地域の市民の立場に立ち、自分で判断しなければなりません。その制度の本質や現状、時代の状況をちゃんと見極め、現場対応することが出来る賢さが必要です。まさに本質を見抜く力です。

・「ほんの少しの強さ」では、「ほんの少し」がポイントです。人は強くはありません。しかし、ほんの少しの強さなら誰でも持てると思うのです。

・174頁

・「強さ」は、社会や制度を変えていく勇気です。解決に向き合う力、困難から逃げないことです。自分が市民のためと思っても周囲の理解が得られないかもしれません。でも、すぐにも諦めず、仲間を増やし、市民のため努力を重ねること、それを私は強さと表現しています。

・よく「裸の王様」を例に説明します。王様自身が綺麗な服を着ていると信じ込んでいるので、みんなは裸だと言えず、誉めそやします。しかし、子どもだけは見たままに「王様は裸だ」と言ってしまいます。

・本当のことをそのまま口にすると、その子だけで無く家族も捕まるかもしれません。行動には「優しさ」と「賢さ」が必要です。目に見えた範囲だけで判断して動くのでは無く、「王様の衣装はお綺麗ですが、いつもお召しでは汚れますので、しまっておかれてはいかがでしょう」と恥をかかさないよう上手に諭し、その場を収めて解決するのです。王様の立場に寄り添うと同時に、困惑した市民の弱さも理解する賢さを持つのが「強さ」です。

・難しいことかもしれません。でも、人の弱さや悲しみを含めた強さこそ、本当に求められること思います。「優しさと、賢さと、ほんの少しの強さ」。私がこれまで大切にしてきた言葉であり、これからも大切にしていきたい言葉です。

ドーム都市・

[ダイレクト, ダイレクト]

形容動詞直接的なさま。途中に何も介さないさま。"ダイレクトな反応" · "ダイレクトにキャッチす

「ノイジー・マイノリティの声により、本来多数派であるはずの声や、サイレントな社会的少数者の声が届かなくなり、ノイジー・マイノリティが多数意見や、社会的少数者の総意であるかのように錯覚する(させる)。ノイジー・マイノリティの主張が発信され続け認識され続・16:12 2022/12/27」

「サイレント・マジョリティ(英: silent majority)とは、「静かな大衆」あるいは「物言わぬ多数派」という意味で、積極的な発言行為をしない一般大衆のこと 。 又はマーケティング用語として商品やサービスに対してクレームや意見する人が少数であることから、「発言しない大多数の物言わぬ消費者」を意味し、15:36 2022/12/27」

「ネグレストとは、親または養育者から子どもに対しての虐待行動を指します。 時々ニュースなどでも目にする 「真夏にクーラーをつけず子どもを車の中に置き去りにする」 、「 育児に疲れたからご飯を与えなかった」 などの行動がそれに該当します。

「リアル名詞現実のこと。また,現実的であるさま。実物そのままであるさま。写実的。

"リアルに描く" 9:42 2022/12/27」

「セーフティネットとは、生活する中で起こる様々なリスクに備え、最悪の事態を回避するために用意された仕組みです 。 日本語に訳すならば「安全網」となり、墜落防止のために張られるネットと同じように、万が一の時に効果を発揮する救済策を …

「普遍的とは、ある範囲におけるすべてのものに当てはまるさま、広く行きわたるさま、きわめて多くの物事にあてはまるさまという意味を指します。 例文としては、「生物に普遍的な特徴である」「普遍的な真理を追究する」などといった使い方です。

「施策(しさく)とは。意味や使い方、類語をわかりやすく解説。政策・対策を立てて、それを実地に行うこと。政治などを行うに際して実地にとる策。

6:46 2022/12/27

船内ツアー、数十億円以上?!貨物を運ぶ大型内航船の中を特別にすべて


・ネオコンの正体、伊藤貫の真剣な雑談、第6回伊藤貫×水島聡特別対談・「ウクライナ

https://youtu.be/Ehf-NodXCYM


 

 中国の核戦力に日本は屈服する・今こそ日本人に必要な核抑止力・伊藤貫・

2011年2月・

2022/11/16 7:57


・中国の核戦力に日本は屈服する 今こそ日本人に必要な核抑止力 (小学館101新書) 単行本 2011/2/1

伊藤 貫  (著)

5つ星のうち4.3    32個の評価単行本¥880

この本を読んでも「核保有」に反対ですか?

尖閣事件は中国の「勢力圏拡大戦略」の前奏曲でしかない。今後中国は露骨に日本の主権を侵害してくる。ワシントン在住で国際政治・経済のアナリストである著者は、何年にもわたって国務省、国防総省、CIAの高級官僚や軍事委、外交委の政治家、そして著名学者らと日本の安全保障について議論してきた。その結論は「日本にアメリカの核の傘はない」「MDでは核ミサイルを防ぎきれない」「アメリカに届く核を持つ中国と、日本のために戦争する気はない」であった。

2020年代、アメリカは経済破綻に瀕し、軍事費は大幅に縮小し、中国の経済規模、軍事予算はアメリカを抜く。そしてアメリカは東アジアから後退せざるを得なくなる。その時日本はどうするのか。ハンチントン教授は「日本は中国の勢力圏に吸収されるだろう」と述べていた。それで良いのか。どうすれば中国の属国にならずに独立を維持できるのか。中・朝の核の脅威から国民を守り、隷属を避け、戦争を抑止するそのために必要最小限の核武装をする、これは平和を希求する日本人にとって道徳的義務でもある。この本を読んだ後も、あなたは核保有に反対ですか?

「勢力圏拡大」を国家目標にしている中国。2020年代、その軍事費は世界一になる。片やアメリカは財政破綻に瀕し、東アジアから後退する。著者が米高官らと激論して得た本音は「アメリカを核攻撃できる中国とは戦争しない。日本に核の傘はない。日本は中国の勢力圏に吸収される。しかし日本に核武装させたくない」であった。そもそも核を持たぬ国は核武装国に服するしかないし、発言権もないのが国際的常識なのだ。「自らを守り戦争を起こさせぬために核を保有する」これは21世紀の日本人に課せられた道徳的義務でもある、と著者は説く。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

伊藤/貫

1953年、東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、コーネル大学で国際関係論、アメリカ政治学を学ぶ。その後、ワシントンのコンサルティング会社で、国際政治・経済のアナリストとして勤務。『シカゴ・トリビューン』『ロサンゼルス・タイムズ』『フォーリン・ポリシー』『Voice』『東洋経済』等に外交評論と金融政策分析を執筆。CNN、CBS、NBC、BBCの政治番組に外交、国際関係、金融問題の解説で出演。ワシントンに25年在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

出版社 : 小学館 (2011/2/1)発売日 : 2011/2/1

言語 : 日本語単行本 : 318ページ・2022/11/16 8:05・

 


5つ星のうち5.0 冷徹な分析

すばらしい本です。ボサ~ッとしてる日本が中国に侵略されるのは当たり前だと思いました。

彼らは長期的な計画を立案し、戦略性をもって着実に実行している。

「えらい」とすら思えてきます。

なんというか、夢に向かって(笑)努力し続けた者が勝ち、惰眠をむさぼった日本が負けるのです。当たり前です。ウサギと亀。アリとキリギリス。

こんな大切な寓話が多くの子供たちに読まれてきたにもかかわらず我が国は亡国になり下がるのです。

そして我が国が亡国になるその様を生きて、この目で見なければならないのかと思うと暗澹たる気持ちになりますが、しっかりその日まで生きてこの目で見届けてやりますよ。

我が国が滅ぶ姿を。

           review

5つ星のうち5.0 伊藤氏の警告は時すでに遅しか?

2006年に発行された中国の「核」が世界を制すの改訂版です(一部の内容が違うので二冊とも読む意義があります)。伊藤氏は親米路線(アメリカが日本を裏切ることはなく、アメリカの核の傘は有効だと信じる)のままでは日本は滅亡(中国に属国化される)するということを、過去の世界の覇権国の推移の歴史や中国と米国の比較(経済力、軍事力、国家戦略、歴史)を豊富なデータとワシントン在住の伊藤氏が米国や中国の政府高官から直接聞いた話をベースにして、米中どちらに肩入れすることなく、客観的に解き明かして行きます。中国崩壊論を毎年出している人たちとは知識や知的レベルが異次元であることが分かります。

また核武装するための具体的な話も書かれています(例えば、自衛隊を核武装化しても必要な全軍事予算はGDPの1.2%)。

しかし、2006年から10年以上経過しても、日本政府にはいまだに核武装する意志は感じられず、これまでの親米路線のままです。

2020年に台湾進攻の可能性が取りざたされていますが、台湾が中国の手に落ちれば、中東から日本への石油のシーレーンが中国の支配下になるという深刻な事態に陥ります(台湾進攻の可能性とその影響もこの本の中で詳細に解説されています)。

核武装のシステムを作り上げるのに10年はかかるということなので、時すでに遅しなのかも知れません。

この本を読み日本が置かれた(日本のメディアでは報道されることのない)深刻な現実を知れば、多くの人は日本から国外に脱出した方が良いと考えるのではないでしょうか?

8:02 2022/11/16

 

 

 

 

2017,02,12村主道美、伊藤貫講師と参加者による集中講義・

https://youtu.be/eu6nk0s4ltM

2022/11/16 5:17

 

歴史に残る外交三賢人-ビスマルク、タレーラン、ドゴール (中公新書ラクレ (677)) 新書 2020/2/6


伊藤 貫  (著)

5つ星のうち4.6    144個の評価

¥920 新書¥968

米・中30年戦争が始まった自助努力を怠る日本は、隷属国となる

ビスマルク(1815-1898年)

タレーラン(1754-1838年)

ドゴール(1890-1970年)三賢人に学ぶ、最強の戦略論

冷戦後のアメリカ政府の一極覇権戦略は破綻した。日本周囲の三独裁国(中国・ロシア・北朝鮮)は核ミサイルを増産し、インド、イラン、サウジアラビア、トルコが勢力を拡大している。歴史上、多極構造の世界を安定させるため、諸国はバランス・オブ・パワーの維持に努めてきた。19世紀後半の欧州外交を支配したビスマルク、俊英外相タレーラン、哲人政治家ドゴール。聡明な頭脳とパワーをもち合わせた三賢人が実践した「リアリズム外交」は、国際政治学で最も賢明な戦略論であり、日本が冷酷な世界を生き抜く鍵となる。

【目次】

まえがき――リアリスト外交家の教訓

1章.ビスマルク_I(1815-62年)_19世紀後半の欧州外交を支配した大外交家

・リアリズム外交とは何か<? BR> ・「傲岸な鉄血宰相」の大変身

・「統一された強すぎるドイツ」という悪夢

2章.ビスマルク_II(1863-70年)_ドイツ統一のための三つの戦争

・「国内での喧嘩に強い」ビスマルクの宰相就任

・ナポレオン3世との「取引」

・「人生最大の失敗」

3章.ビスマルク_III(1871-90年)_ドイツ統一後の避戦主義外交と欧州均衡体制

・「辛抱強い徳川家康」

・民族主義と帝国主義という「時代精神」

・愚かな世界大戦の時代へ

4章.タレーラン_偉大な忠国外交を成し遂げた稀に見る悪辣な政治家

・「殺しておけば良かった」悪名高きプレイボーイ

・大胆な裏切りを繰り返したモンスター

・ウィーン会議での熾烈な覇権闘争

5章.ドゴール_I_20世紀の最も傑出した哲人政治家

・敗戦のトラウマ

・「救国の英雄」に大変身

・目に見えない文化的遺産


6章.ドゴール_II_ドゴールの核戦略理論

・「核兵器による非対称的な抑止力」

・ドゴールの国家哲学とキッシンジャーの予言

・日本が隷属国とならないために

冷戦後のアメリカ政府の一極覇権戦略は破綻した。日本周囲の三独裁国(中国・ロシア・北朝鮮)は核ミサイルを増産し、インド、イラン、サウジアラビア、トルコが勢力を拡大している。歴史上、多極構造の世界を安定させるため、諸国はバランス・オブ・パワーの維持に努めてきた。19世紀後半の欧州外交を支配したビスマルク、俊英外相タレーラン、哲人政治家ドゴール。聡明な頭脳とパワーを併せもった三賢人が実践した「リアリズム外交」は、国際政治学で最も賢明な戦略論であり、日本が冷酷な世界を生き抜く鍵となる。

著者について

伊藤 貫

1953年東京都生まれ。国際政治アナリスト。東京大学経済学部卒。アメリカのコーネル大学で国際政治学と外交史を学ぶ。その後、ワシントンのビジネス・コンサルティング会社に、国際政治・経済アナリストとして勤務。『フォーリン・ポリシー』『シカゴ・トリビューン』『ロサンゼルス・タイムズ』『正論』『Voice』『週刊東洋経済』等に、外交評論と金融分析を執筆。CNN、CBS、BBC等の政治番組で、外交・国際関係・金融問題を解説。ワシントンに30年間在住。著書に『自滅するアメリカ帝国』(文春新書)、『中国の核戦力に日本は屈服する』(小学館101新書)などがある。

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登録情報出版社 : 中央公論新社 (2020/2/6)

発売日 : 2020/2/6言語 : 日本語新書 : 288ページ


           SOMO

5つ星のうち5.0 目からウロコ

三人の外交賢人の紹介であり、それぞれ全く違う個性の持ち主であったが、一つ共通するところがあつった。それはパワーオブバランスに徹した外交であった。戦前の日本にはできず、また敗戦後の日本は極めて時限的な安全保障である、対米従属外交に徹してきた。

昨今の世情を概観すれば誰でもがこのままではわが国は危ないと感じるだろうが、単なる危機意識では足りない。

本書は、まさにビスマルクのいう、賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶの言葉の通り、歴史的偉人が複雑怪奇なる西欧史を学び、各々が異なる立場でパワーオブバランスの外交を展開した足跡の一端を垣間見させてくれた。

愚者である私はこの先のわが国の歩むべき道を明確に指し示すことなどできないが、わが国はわが国で守らなければならないという、至極当然の結論に帰結した。

8:59 2022/11/15

Amazon.co.jp: 伊藤 貫:作品一覧、著者略歴


 

 

 

自主防衛を急げ!伊藤貫、草か公人・2011年5月3日、


 

17頁・リアリスト・パラダイムに立脚せよ・伊藤貫・

「・「ウィルソニアン・パラダイム」、リベラル派のパラダイムに対抗するパラダイムが、「本当に頼りになる世界政府や世界警察軍が存在しない現状では、国際法や国連に平和維持を期待するのは現実的ではない。

したがってバランス・オブ ・パワー(勢力均衡、特に軍事力の均衡)を崩さないように国際システムを運営する必要がある」という考え方です。

・この考え方を「リアリスト・パラダイム」と呼びます私の言う「古典的なバランスオブパワー派」というのは、「リアリストパラダイム」の立場です。14:11 2022/11/15」

「『国際インテリジェンス機密ファイル』公式ブログ

 

国内外の情報収集・分析を行います。

 

◆伊藤貫『自主防衛を急げ』を読み解く

2021-06-03 11:00:05

テーマ:◆地政学&戦略

 

◆伊藤貫『自主防衛を急げ』を読み解く

★要旨

・「ウィルソニアン・パラダイム」、リベラル派のパラダイムに対抗するパラダイムが、「本当に頼りになる世界政府や世界警察軍が存在しない現状では、国際法や国連に平和維持を期待するのは現実的ではない。

 

したがってバランス・オブ ・パワー(勢力均衡、特に軍事力の均衡)を崩さないように国際システムを運営する必要がある」という考え方です。

 

・この考え方を「リアリスト・パラダイム」と呼びます

 

私の言う「古典的なバランスオブパワー派」というのは、「リアリストパラダイム」の立場です。

 

・この立場をとってきたのは、第二次大戦後の冷戦外交の基礎をつくった戦略家のジョージ・ケナン、アイゼンハワー大統領、マーシャル国務長官、ハンス・モーゲンソー(シカゴ大学)、キッシンジャー元国務長官、ウォルター・リップマン、ブレジンスキー安全保障担当補佐官、サミュエル・ハンティントン(ハーバード大学)、ブレント・スコウクロフト中将、ジョン・ミアシャイマー(シカゴ大学)といった人たちです。

・外交政策を真剣に議論するためには、以下の基礎知識が必要です。

 

1、国際政治学(特に、その主流派であるリアリスト学派)、

2、過去五百年間の国際政治史と過去百二十年間のアメリカ外交史、

3、マクロ経済学と過去三百年間の国際経済史、

4、軍事学 (特に核戦略理論)

 


 

・・ワシントンへ移って、ケナン、スパイクマン、リップマン、モーゲンソー、ハンティントン、ウォルツ、ミアシャイマー、ギルピン(プリンストン大学)

 

といった国際政治学者たちの著作や論文をせっせと読み、

 

役人やシンクタンクにおける議論を聞いていると、日本で「正統的なリアリスト」とされてきた人たちの議論は、

とてもリアリストとは呼べない、ということがわかりました。

 

 

・国務省のボブとは大の親友ですから、彼のところへ遊びに行くとたいてい四時間、ひどいときは八時間も二人だけで喋りっぱなしでした。

 

 

・彼は『国務省ナンバーワンのお喋り魔』と言われていた。 彼がお喋りを始めるともう止まらなくなるから、部下は、「またボブのお喋りが始まったぞー」と聞くと、必死で逃げ回っていた。

 

・私はその「お喋りボブ」から、「アメリカ外交の本音」

 

をたっぶり聞かせてもらったのです。

・とにかくボブとはメチャクチャ気が合ったので、会うといつも外交、政治、歴史、哲学、西欧文学などに関して、延々と議論をしていました。

・ボブは、「アメリカの青年や中年と議論するよりも、カン・イトーと議論しているほうが楽しい。

 

イトーはペチャクチャとまったく何の役にも立たないお喋りを楽しむが、ほとんどのアメリカの男は

 

『プラグマティックで役に立つ知識』ばかり追いかけている。

 

目先の実利ばかり追いかけているアメリカ人は、退屈だ」と言っていました。

 

・ボブは外国育ちの古典的な教養人だから、「アメリカのマテリアリスト文明の底の浅さ」というものを実感していたのです。

 

・国務省やペタンゴンゃCIAの官僚は、「日本人は、アメリカがハッタリをかまして脅しつければ、すぐに屈服する」と考えているのです。

・彼らの脅しやハッタリに怯えちゃ駄目です。

脅しとハッタリは二千五百年前から、国際政治に付きものです。のです。

言おうと、「これ以上、日本を不利な立場に置いておこうとするアメリカの対日政策を、われわれは受け入れない」と主張すればよいのです。

◆伊藤貫『自主防衛を急げ』を読み解く | 『国際インテリジェンス機密ファイル』公式ブログ (ameblo.jp)

★コメント

伊藤さんの知性と情報力には感服する。関連文献を学びたい。自主防衛を急げ!

 6:46 2022/11/16

 


・63頁・「負けっぷりをよくする」などという自尊心の欠けた生き方、そして「歴史上前例の無い、徹底的な屈服」という隷属体制も継続されなかっただろう。

「隷属れいぞく)とは。意味や解説、類語。[](スル)1 他の支配を受けて、その言いなりになること。隷従。「本国にする植民地」2 てした。配下。部下。「天下の武士皆其にあらざるはなし」「」

66頁・世界で日本と運命を共にしてくれる国はたった一ヵ国、日本だけなのです。しかし、「アメリカに依存し、追従していれば、それで十分だ」と思い込んできた日本の秀才たち・・

・例えば中曽根康弘さん、宮澤喜一さん、岡崎久彦さん、佐藤せい三郎さんは、独立国としての日本のグランド・ストラテジー構想したくないようです。

・グランド・ストラテジー(読み)ぐらんどすとらてじー世界大百科事典内のグランド・ストラテジーの言及

【外交】より

…外交の巧拙は,交渉を指導し,これに従事する者のかけひきの術に依存するのみならず,彼らの,彼我の相対的力量を冷静に測定し,交渉をめぐる国際・国内環境を現実的に把握し,大局を見すえて緻密に駒を進める能力に依存する。〈グランド・ストラテジーgrand‐strategy〉をもって,外交を進めることも成功の要諦であろう。最近においては,アメリカのキッシンジャー外交を,〈グランド・ストラテジー〉にもとづき,見事な成功をおさめた例としてあげることができる。…巧拙(こうせつ)とは。意味や解説、類語。たくみなことと、つたないこと。じょうずとへた。


5:51 2022/11/16

5:49 2022/11/16

・67頁・幕末と、明治期の日本人には、「国家の最初の義務は、国防だ」という当たり前のことが分かっていました。でもアメリカに占領され「歴史的に前例の無い徹底的な屈服」をして日本人(左翼と親米保守の双方)は、そのことを忘れてしまいました。

・2,国家の二番目の柱は、経済成長です(商人的要素)。

・68頁・2022/11/16 6:05

・国民が衣食住に不自由しては困りますから、国家には適正な経済成長が必要です。適正な経済力が無ければ、科学技術の研究、開発にも投資できませんし、独立国として必要な国防システムにも投資できません。だから適正なレベルの経済成長は、国家にとって不可欠です。

・しかし経済成長は国家の唯一の目的ではありません。敗戦後の日本の経済成長優先主義は、間違いでした。二十四世紀前にプラトンは、「貧しすぎると、人間は賤しくなる。豊かすぎると、人間はだらしなくなる」と言いました。うーむ、人間って、変わっていないですね。「経済的な繁栄」ばかり追い求めていると、国家も国民も価値判断力を失って、ひ弱で刹那的になってしまいます。

・3,国家の三番目の柱は、価値規範です(哲学的要素)。・人間がネコやネズミ、ウサギや狸と違っているのは、「人間とは、価値判断をする動物」だからです。ネコやネズミは「動物的な本能」に従って生きていますが、人間は、「アレとコレは、ドッチが価値のあることか」と考えたり悩んだりしながら生きていく存在です。真剣な価値判断を得ようとして沈思黙想したり、瞑想したり煩悶したりするから、人間は動物では無く人間なのです。

 

・69頁・国家も、価値判断に悩みます。「よい価値」を選択し、実現しよとします。何が「よい価値」で有り「優れた価値」なのか、と言うことに悩まなくなった国家は、一流国ではありません。したがって「軍事力さえ強ければいい」という軍国主義や、「国民が豊かになればそれでいい」という経済優先主義(福祉優先主義)は、モトも名価値判断力を失った二流国、三流国の政治イデオロギーなのです。一流の国家には、「高貴で卓越した価値を選択し、追求しようと努力する」という三番目の柱が必要なのです。

 


・以上の三つの柱が揃っていないと、国家は成り立ちません。

・戦後の日本を見ると、戦争に負けて「吉田ドクトリン」を採用しましたから、1,の「軍人的要素」と3の「哲人的要素」を失って、2,「商人的要素」だけの国となりました。国家の三要素のうち、一つしか持たない国です。「アメリカの「保護領」になったのだから、自主防衛しなくていい」、「アメリカにバンドウワゴンして、せっせと金儲けしていればいい」という国になったわけです。敗戦後の日本の反戦左翼と親米保守の価値判断力は、似たようなものです彼らには1,と3,が無いのです。

 


・2022/11/16 6:53

・バンドワゴン. バンドワゴン効果 (バンドワゴンこうか、 英: bandwagon effect )とは、ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果。「バンドワゴン」とは行列 先頭に居る楽隊車であり「バンドワゴンに乗る」とは時流に乗る・多勢に与する・勝ち馬に乗る という意味である。 経済学・政治学・社会学 などで遣われる。対義表現は「アンダードッグ効果 」 。バンドワゴン効果は「バンドワゴンの 誤謬 」( 衆人に訴える論証 )が成功したときに発生する効果である。

7:25 2022/11/16

 


中国の核戦力に日本はくっぷくする

アイパット送信、2022/11/16 8:37・


中国の核戦力に日本は屈服する今こそ日本人に必要な核抑止力伊藤 貫・小学館・まえがき・

・二〇一〇年秋、日本の内政と外交は「尖閣問題」で大騒ぎとなった。尖閣諸島付近の日本領海内において中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視船に故意に衝突行為を繰り返し、しかも民主党の菅内閣が中国からの圧力にあっさり屈服して漁船の船長を釈放してしまったからである。

この「尖閣衝突事件」には、衝突の証拠となる(中国側にとって不利な)ビデオを日本政府が日本の国民から隠しておこうとする、という奇妙なオマケまでついていた。中国にとって不利な証拠をせっせと隠蔽しようとした日本政府の行為に八割以上の国民が反撥し、内閣の支持率は急降下した。

しかしこの「尖閣事件」は、今後も長期間にわたって継続する中国による「勢力圏拡大戦略」の前奏曲でしかない。今後二十年間で日本国民が失うものは、単に尖閣諸島の領有権や東シナ海の天然ガス資源だけではないであろう。中国の「勢力圏拡大戦略」の真のターゲットとなっているのは、日本国の独立と主権そのものだからである。

・中国政府が、「経済力と軍事力を蓄積し、アメリカの勢力を徐々にアジア地域から駆逐して

・4頁・

中国を中心とするアジアの新秩序を構築する」という国家戦略を構想したのは一九五〇年代のことである。それから六十年間、中国は文化大革命のような内政の混乱にもかかわらず、「アメリカの覇権をアジアから駆逐し、中国中心の新秩序を確立する」という戦略目標を一貫して追求し続けた。この国家戦略は、成功してきたと評価してよい。最近ではアメリカ政府が公表する国際情勢の予測レポートも、「今後二十年間の国際政治に最も重要な影響力を持つ国は、中国である」と明言するようになった(二〇〇八年十一月「グローバル・トレンド二〇二五」)。

 

・一九八九年から二〇一〇年までの二十一年間で、中国の軍事支出は二二倍も増えた。歴史的に前例のない大軍拡である。本書の第二章で解説するように、二〇二〇年代になると中国の実質的な経済規模と軍事予算規模はアメリカを凌駕し、世界一の規模になると予測されている。

・中国の経済力・軍事力が世界一になったとき、はたしてアメリカは日本を守るであろうか。たとえアメリカ政府に守る意図があったとしても、その能力があるだろうか。

・著名な戦略学者であるハーバード大学のハンティントン教授(二〇〇八年死去)やシカゴ大学のミアシャイマー教授は、二〇二〇年代以降、「アメリカは日本を守らない(もしくは、守れない)」と予告している。ハンティントンは、「日本は中国の勢力圏に吸収される」と明言している。ミアシャイマーは、「日本は中国の脅威から自らを守るため、核武装せざるをえない」との立場である。日本がいずれの政策を選ぶにせよ、今後の日本は非常に厳しい選択を余儀なくされることになる。

・5頁・2022/11/16 9:05・

今までのように、「平和憲法と日米同盟があるから、日本は大丈夫」と言う状況ではないのである。

・しょうせつ)とは。意味や解説、類語。[名](スル)ある事柄をくわしく説明すること・

・決して奇をてらった誇張でない。本書で詳説するようにアメリカの著名な戦略家には、「アメリカの先制核攻撃によって破壊できない核戦力を持つようになった中国と、アメリカは戦争できない。たとえ台湾や日本が中国に攻撃された場合でも、アメリカは中国軍との衝突を避けるだろう」と考える者が多いからである。二〇二〇年代になると、自主的な核抑止力を持たない日本が「中国の核戦力に屈服する」可能性は高い。 キッシンジャーやブレジンスキーは、「近い将来、東アジアは中国を中心とする新秩序を受け入れることになるだろう」と予測している。

・中国の覇権戦略を解説する本書には、四つの特徴がある。

  • 国際政治学には、国際法や国際機関の機能を重視するウィルソニアン派と、バランス・オブ・ワー(勢力均衡、特に軍事力の均衡)を重視するリアリスト派がある。本書の分析は、明確に後者の視点からの分析である。本書のように首尾一貫してリアリスト派の立場から国際政治を分析する著作は、日本では珍しい。

・6頁・

2、日本政府は国民に対して、「日本は、アメリカの「核の傘」とミサイル防衛システムによって守られているから大丈夫だ」と説明してきた。しかし核戦略理論の主流派の視点からは、このような説明は間違いである。アメリカの「核の傘」やミサイル防衛システムでは、日本を中国の核ミサイルから守ることはできない。本書を読むことによって、読者は核戦略の甘礎的な理論を理解されるはずである。

③本書には日米関係の真実が描かれている。冷戦終了後もアメリカ政府が五万人規模の軍隊を日本に駐留させ続けたのは、単に「日本人を、中国やロシアの脅威から守ってあげたい」というアメリカの好意や善意によるものではない。ペンタゴン(国防総省)日本部長や国務省次官補は筆者に、「アメリカは冷戦後も、日本人が自主防衛することを許さない。アメリカは、日本が独立した外交政策を持つことを阻止する」と述べてきた。日米関係の真相は、「価値観を共有するパートナーシップ」と公称されているものとは別のものである。

④現在のアメリカの実質経済規模は、世界経済の二割にまで落ちている。しかし最近二十年間、アメリカ政府は常に世界全体の軍事支出の五~六割を使ってきた。アメリカが世界最大の借金国となり、経常収支が巨大な赤字となり、米国民の平均貯蓄率がマイナス値になっても、アメリカ政府は軍事支出を増額し続けたのである。

・7頁・2022/11/16 14:04・

しかし二〇〇八~〇九年の世界金融恐慌のあとアメリカの財政事情は急激に悪化し、アメリカ政府は現在のような軍事支出レベルを維持できないことが明らかになった。過去六十六年間のアメリカは、「米軍が中東と東アジアを同時に支配する」という国家戦略を実行してきた。

しかし、この戦略を今後も維持するのは困難である。二千二十年代まで継続するアメリカの財政悪化と軍事費の削減は、日本の安全保障にどのように影響を与えるのだろうか。

・以上の四点が本書の特徴である。

本書はジャーナリスティックなノンフィクション本ではなく、欧米の最も優秀な国際政治学者や戦略家とのインタビューと論文をベースとした著作である。中国の大軍拡と北朝鮮の核武装を心配する日本の真面目な読者に対して、本書がお役に立つことを期待したい。

本書は、ジャーナリススティックなノンフィクション本では無く、欧米の最も優秀な国際政治学者や戦略家とのインタビューと論文をベースとした著作である。中国の大軍拡と北朝鮮の核武装を心配する日本の真面目な読者に対して、本書がお役に立つことを期待したい。

二〇〇六年に出版された『中国の核が世界を制す』(PHP研究所)の改訂版である。

本書のデータはすべて、二〇一〇年秋のものに変更されている。さらに本書の第五章には、アメリカ政府の財政破綻と、今後少なくとも三十年間は続くであろうアメリカの経済力・軍事力の相対的な衰退を解説する新しい評論を書き加えた。

・8頁・2022/11/16 14:17・

巻末には、筆者と同様に自主防衛政策と核抑止力の必要性を確信されている田母神俊雄元航空幕僚長との対談を付け加えた。

・アメリカが経済的な困難に直面しているにもかかわらず、中国は毎年九~一〇%の経済成長率を維持している。中国の実質的な軍事支出も、五年ごとに倍増している。 東アジア地域における米中間の経済力バランスと軍事力バランスは、今後も明確に中国に有利な方向にシフトし続けるであろう。日本が国防戦略を根本的に変更し、自主的な抑止力を構築しないのならば、二〇二〇年代の日本は「中国の核戦力に屈服する」ことになる可能性が高い。アメリカに依存するだけでは、今後の日本の独立は守れないからである。

本書の編集を担当してくださった小学館出版局編集長の佐藤幸一さんに、お礼を申しあげます。本書の出版を支援してくださった「別冊正論」編集長の上島嘉郎さんに、感謝いたします。

平成二十三年一月ワシントン郊外、アーリントンにて

伊藤貫

2022/11/16 8:36

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