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2016年2月 6日 (土)

宮脇 昭氏×山田 英生対談・地球温暖化、森林破壊、砂漠化・・・。地球規模で広がる環境破壊の影が、私たちの周辺にも忍び寄っています。 経済効率優先の自然開発と都市型ライフスタイルが招いた地球の危機。 「ミツバチの飛び交う自然が失われたら人間は、もう生きて行けません」と語る山田代表、一方、「生態系学的な脚本で緑復活を」と呼びかける宮脇さん。

引用


山田英生対談録・緑が地球を救う よみがえれ ふるさとの森

宮脇 昭氏×山田 英生対談・地球温暖化、森林破壊、砂漠化・・・。地球規模で広がる環境破壊の影が、私たちの周辺にも忍び寄っています。 経済効率優先の自然開発と都市型ライフスタイルが招いた地球の危機。 「ミツバチの飛び交う自然が失われたら人間は、もう生きて行けません」と語る山田代表、一方、「生態系学的な脚本で緑復活を」と呼びかける宮脇さん。

 二人には、かけがえのない地球への愛と思いがあふれていました。

【構

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16:38 2016/02/05


山田英生対談録

予防医学 ~病気にならないために~宮脇 昭氏×山田 英生対談

地球が泣いている

ハリケーン「カトリーナ」に襲われた、米・ミシシッピー州 今、地球が深刻な環境危機に直面しています。科学技術の発達で人類が、かつてない繁栄を謳歌する陰で、多くの緑が地球規模で失われてきました。はるか以前、古代文明も人類が森を破壊し尽くした時に滅びました。このまま自然破壊が進めば、地球は再び過去の歴史と同じ運命を歩むのでしょうか。30年間以上にわたり世界で3千万本以上の木を植えてきた横浜国立大学名誉教授、宮脇昭氏(77)と「自然との共生」を訴え、蜜源の森などの再生に取り組む山田養蜂場代表、山田英生(48)。共に地元岡山県出身の二人が、現代文明に潜む矛盾点から、地球を救うための処方箋、命の問題までを真剣に語り合いました。  

【構成 毎日新聞社 編集委員・成井哲郎】

 熱帯林伐採しエビの養殖池


山田

最近、岡山県の山間部でも小鳥の姿が目に見えて減ってきたような気が致します。田舎に住んでいる私は、子供の頃にはとてもたくさんの小鳥を自宅の周辺で見かけたものですが、このところまったく見かけなくなりました。環境省のレッドデータブックでは、2005年3月現在、調査対象の鳥類(渡り鳥を含む)約 700種のうち、すでに14種(野生絶滅1種を含む)が絶滅し、さらに90種が絶滅の恐れがあるといわれています。野鳥の多くが生息する東南アジアの熱帯雨林が大規模に破壊されたのも、こうした原因の一つと聞いたことがあります。これらも、日本人の生活スタイルやグルメ志向が、回り回って東南アジアの環境まで変えてしまったらしいですね。 宮脇

広大な熱帯雨林を伐採してつくったアブラヤシのプランテーション造成地=マレーシア・ボルネオでヘリコプターから写す

広大な熱帯雨林を伐採してつくったアブラヤシのプランテーション造成地 =マレーシア・ボルネオでヘリコプターから写す

私たちがすし屋で何気なく食べているエビだって、東南アジアのマングローブ林を食べているようなもんですよ。マングローブ林は、有機物の塊。伐採すると、酸素が入って、ものすごい量のミジンコが発生します。ミジンコはエビの好物ですから、それを求めてエビが大量に群がり、収量も一時的には上がるんです。ところが、2、3年たつと、ミジンコがいなくなるため別の新しいマングローブ林に移って、また同じように伐採して養殖池をつくる。だからマングローブがなくなるんです。なにもエビに限ったことではありません。ゴムやアブラヤシ、コーヒー、コショウなどのプランテーションをつくるために、次々熱帯雨林を伐採するんですね。ヘリコプターから見ると、新しく森林が伐採され火入れされた跡地が無残にも段切り状になっているのが、はっきりわかります。

.山田

ハリケーン「カトリーナ」に襲われた、米・ミシシッピー州ではカジノビルが傾き桟橋が破壊された

ハリケーン「カトリーナ」に襲われた、米・ミシシッピー州ではカジノビルが傾き桟橋が破壊された

それと今、最も気になるのが、地球温暖化ですね。今夏、アメリカ南部のニューオリンズを襲った「カトリーナ」に代表されるようにハリケーンや、台風などがこれまでと異なった頻度や規模でひんぱんに来襲し、熱波や大洪水、大干ばつも世界各地で起きています。こうした地球規模の異常気象は、温暖化の影響と言われていますが、大気中にある温室効果ガスの濃度が異常に高まり、地球の気温が上昇した結果ですね。20世紀中に地球の平均気温は0・6 度上がったというデータがあります。このままのペースで温度が上昇したら、今世紀の終わりには、地球はどうなってしまうのでしょうか。やはり、石炭、石油などの化石燃料の大量消費と熱帯雨林の破壊の影響が大きいと思いますね。

.宮脇・冗談ではなく、本当に取り返しがつかなくなりますよ。

.砂漠化招いた家畜の過放牧

山田・中国からの黄砂にしても、かつては自然現象と考えられ、3月から5月ごろにかけて日本にやってくる「春の風物詩」の一つのように思われていましたよね。それが、今は春だけではなく年がら年中、飛んでくるようになりました。しかも西日本中心から東日本にまで広がっています。こうも頻繁に来るのは、明らかに異常であって、中国での砂漠化がかなり進んでいる証拠です。当然日本の気象にも影響するのでしょうが、こうした変化に現代人は、ますます鈍感になっているような気がしてなりません。

宮脇

干ばつなどでサバンナの草木は枯れ、砂漠化が進むアフリカのサハラ砂漠南部のサヘル地域 干ばつなどでサバンナの草木は枯れ、砂漠化が進むアフリカのサハラ砂漠南部のサヘル地域

中国では、北京市の北西79キロあたりまで砂漠が迫っていると言われています。北京から飛行機で内陸部に向かって20分も乗ると、そこはもう半砂漠化している状態なんです。5年前、万里の長城で森づくりを行った際、北京市長は「このまま砂漠化が進んだら、あと40年で北京から他に遷都しなければならなくなる」と嘆いていました。牛や羊、ヤギなどの過放牧が何百年、何千年も続くと、森が完全に破壊されて草原化し、砂漠化する。現在、地球の砂漠の3分の2は「マンメード」、いわゆる家畜の過放牧や自然開発など人間の活動によって作られた砂漠です。これは十分な現地調査を行うとともに、生態学的な脚本に従えば、回復は可能なんです。

.山田

91年のある資料によりますと、世界の陸地の4分の1に当たる36億ヘクタール、世界人口の約6分の1に当たる約9億人が何らかの砂漠化の影響を受けているともいわれていました。しかも、こうした地域の約7割が耕作可能地と言われていますから開発途上国の貧困を解消するためにも、ぜひ砂漠の緑化をしてほしいと思いますね。

宮脇・まったく、その通りです。

.自然の変化で深刻さを知る

山田

世界遺産の屋久島に行った時、あまり人が立ち入らない中央部の屋久杉帯に直径が1メートルもあるモミやツガなどの針葉樹が立ち枯れているのを目撃しました。何百年もの樹齢を重ねた木が多いので、てっきり老木になって倒れたのかと思って詳しい人に聞いてみたら、中国広東省の工業都市、深の大気汚染による酸性雨の影響だというんですね。酸性雨は、原因となる物質の発生源から遠く数千キロ離れた地域にも影響を及ぼすといわれています。黄砂にしても酸性雨にしても日本への影響は、中国の環境問題が密接に関係していると思われます。こうした問題は、一国だけにとどまらず国境を越えて押し寄せるものだ、ということを屋久島に行って、痛感しましたね。私たちが身近な自然の変化に気づいた時は、かなり深刻な事態に直面しているといわなければなりません。

宮脇

鋭いご指摘ですね。

山田

この地球上の森林面積にしても年々減少し、今40億ヘクタールの大台を割って39億ヘクタールと推計されています。なんと90年から00年までの10年間に日本の国土面積の2・5倍もの面積が失われたと言われていますね。しかも、アフリカと南米の開発途上国での熱帯雨林の減少が多くを占めていますから余計、気になります。原生林も年々、激減しているのでしょうが、今地球上には、どのくらい残っていますか。

宮脇

厳密にいえば、ほとんど残っていないと言ってもいいですね。原生林といえば昔、ジャングルの王者・ターザンが活躍したアフリカの密林を思い浮かべますが、 76年に我々が初めて東南アジアの現地調査に入った時、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアの奥地でも熱帯雨林はすでに破壊され、土地本来の森はほとんどありませんでした。また北方針葉樹林帯のバイカル湖周辺やカナダの奥地でさえも、まったくと言っていいほど見られませんでしたね。これまで私が調査した38カ国では、生態学的な意味での厳密な原生林は、ほとんど残っていませんでした。それは、日本国内でも同じですよ。日本文化の原点といわれる照葉樹林帯でも、私たちの50年間の植生調査の結果によれば、土地本来の森は0・06%しかありませんでした。例えば私が住む神奈川県でも、79年に県教育委員会の依頼を受けて行った調査の結果では、鎮守の森に象徴される「ふるさとの木によるふるさとの森」は、かつて2840カ所あったのが、たった45カ所しか残っていませんでした。全国的にも戦前、鎮守の森は、約15万カ所以上あったといわれてますが、今ではわずかしか残っていないと思いますね。

年々減る一方百花蜜生産量

山田

危機的な状況ですね。養蜂業を営んでいますと、身近な自然の変化に非常に敏感になります。例えば、ハチミツがとれなくなりました。特に、ハチミツの中でもリョウブとかクロガネモチとか、自然の野山に元々、生えている雑木からとれる百花蜜の量が年々減ってきましたね。養蜂家は、自然の恵みを受けながら、自然とともに生きています。もし自然環境が悪化してミツバチが飛び回れないような環境になったとしたら人間は幸せになれないし、生きてもいけないと思います。

宮脇

やはり文明は、両刃の刃ですね。私たちは、かつて集落や町、都市をつくる一方で、すべての木を伐採せず、必ずふるさとの森を残してきました。もう一度原点に立って森とともに共生してきた日本人の英知を新しい町や都市づくりにも積極的に生かしていくべきではないでしょうか。

地球温暖化データ国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第3次報告書(2001年)によると、地球の平均気温は観測機器による観測が始まった1861年以降、上昇しており、20世紀中に約0.6度上昇した。特に1990年代は、最も暖かい10年間だった。地球の平均海面水位も20世紀中に0.1?0.2メートル上昇した。温暖化は、石炭、石油などの化石燃料の燃焼と熱帯雨林の消失などが主な原因といわれる。こうした人間活動の影響で、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの濃度は、産業革命以降、これまでの例にない規模の増加を続けており、1750年以降、31%増加したと報告されている。

(企画制作、写真提供:毎日新聞社広告局)

16:38 2016/02/05 


予防医学 ~病気にならないために~宮脇 昭氏×山田 英生対談

文明破壊の歴史に学ぶ

古代ギリシャのアポロン・エピクリオス神殿

人類文明の歴史は、他方で森林破壊の歴史でもありました。栄華を誇った古代文明は、人類が森を消滅させた時、もろくも崩れ去りました。そして今、人類は再び、森を根こそぎ破壊しようとしています。「地球の命のドラマを破滅に導いてはならない」と警鐘を鳴らす横浜国立大学名誉教授、宮脇昭氏(78)。「自然との共生こそ人類が生き延びる道」と言い切る山田養蜂場代表、山田英生(48)。「過去の歴史を教訓に」が二人の共通の思いでした。

【構成 毎日新聞社 編集委員・成井哲郎】

人類の文明は、森林破壊の歴史

山田

20世紀は、あまりにも都市化が進み、自然に対して大きなダメージを与え過ぎたのではないでしょうか。今、人類の文明が崩壊に向かうか、それとも踏みとどまって息を吹き返すかの瀬戸際に立っているような気がいたします。「21世紀は環境の時代」と言われていますが、これからは環境に負荷を与えずに、いかに自然と関わっていくかが問われてくると思いますね。

宮脇

かつて栄華を誇った古代文明も、人間が森を食いつぶした時、滅んだ=古代ギリシャのアポロン・エピクリオス神殿

かつて栄華を誇った古代文明も、人間が森を食いつぶした時、滅んだ=古代ギリシャのアポロン・エピクリオス神殿

その通りです。確かに今は、地球規模で環境破壊が同時多発的に進み、地球が最後の段階にきているようにさえ思います。数千年生きて来られた私たち人類が、あと何年生きられるのか、身震いするような恐ろしさを感じますね。人類文明の歴史は、同時に森林破壊の歴史でもありました。かつて人類にとって森は、目の前に立ちはだかる敵だったのですが、人類が火を使うようになって初めて敵を征服し、文明を築いていったわけです。しかし、人類が森を食いつぶした時、例えば、あのメソポタミア文明やエジプト文明も滅びました。メソポタミアでは、「大きな森には神が宿る」との言い伝えがあり、ある時期までは森を残してきた、と言われています。そのあと、出てきた王様が「神を征伐する」と言って森を破壊してから、文明の滅亡につながるような、いろんなことが次々起こってきたと、かつてある人からお聞きしたことがあります。そして4000年前に土木技術の粋を尽くして築き上げたエジプトのピラミッドやスフィンクス、王宮も今は、砂漠の中にすっぽり埋もれ、かつて栄華を誇ったギリシャ文明や誇り高きローマ帝国も、彼らが周りの森を破壊し尽くした時に消えていきました。

..過去と同じ道歩む危険性も

山田

古代の都市文明が周辺の環境破壊とともに滅亡したという過去の歴史的事実を考えれば、グローバルな地球環境が壊滅的なダメージを受けることによって現代文明も遠からず崩壊の危機に直面する、と指摘する人もいます。私もこれまでの歴史を考えると、他者の犠牲の上に立って繁栄を築いた現代文明も、過去の滅びた文明と同じように破滅の道を歩み始めているのではないかと、たいへん危惧しています。

宮脇同感ですね。

山田

焼き畑にするため、火入れされた熱帯雨林。一時的には作物もよく育つが、 2、3年たつと養分がなくなる=インドネシア・カリマンタン奥地で

焼き畑にするため、火入れされた熱帯雨林。一時的には作物もよく育つが、 2、3年たつと養分がなくなる=インドネシア・カリマンタン奥地で

 

都市化や開発がこのまま進めば、地球の森林がどんどん収奪されて最終的には現代文明が滅びるように思えてなりません。それを押しとどめるためには、過去の文明のどの部分を見直し、現代の文明にどう生かしていけばよいかが、とても重要だと思います。例えば、縄文時代には、原生の環境を残しながら自然と共生してきた人類文明がありました。それは持続可能な文明であって、私たちはその文明に学べばよいのですが、だからといって現代の生活を縄文時代に戻すのは、ちょっと非現実的すぎます。であるならば、植樹のような自然と調和した活動が今こそ求められるべきではないでしょうか。私たちはこれまで、西洋文明に代表される都市型文明こそが高度な文明であるかのように学んできましたが、実際は違うと思います。自然と共生してきたこれまでの文明が、自然環境が失われた今となっては本当に、貴重だった気がしますね。

..「公園景観」の語源は「荒れ野」


宮脇

美しい草原も、かつては森だった=モンゴルで  

森林破壊の原因の一つに、長い時間をかけた家畜の過放牧があります。ヨーロッパ大陸もかつては、ほとんど森で覆われていましたが、毛皮や食肉を必要としたため、森の中に羊やヤギ、牛などを放牧しました。その結果、森が破壊されたわけです。例えば1909年にドイツで初めて自然保護区に指定された「リューネブルグハイデ」は、元々は、ヨーロッパミズナラやシラカンバの森でした。それが4000年に及ぶ過放牧や岩塩採掘、伐採などで土地がやせ、エリカやカルーナなどの矮生低木やコメススキのようなイネ科の植物が繁茂するようになりました。こうした風景が英語で「ヒース」、ドイツ語で「ハイデ」、日本語で「荒れ野」という、今の「公園景観」を指す言葉になったのです。内モンゴルもそうですよ。中国科学アカデミーのみなさんは、「モンゴルは、昔から草原だったと記録に書いてある」と言いますが、記録として残っているのは、せいぜい2000年から3000年前のこと。人類はそれ以前から住んでいたわけですし、モンゴルは寒いところですから生きていくためには、毛皮も肉も必要だったでしょう。そのために数千年来にわたって牛や羊などを放牧してきたわけです。ですから生態学的にいえばモンゴル高原は草原ではなく、荒れ野なんです。

.山田

雄大に見えるモンゴル高原も、先生が言われるように人間の過干渉が今日の景観を招いたと考えると、わずかな人間の力も長い年月を経れば自然に対し大きなダメージを与えることがよくわかりました。しかし、このモンゴル高原も、数千年間、砂漠にならず草原のままで維持されてきた背景には、羊や牛を一定の区域で飼わず、季節ごとに必ず移動し、いたずらに草原にダメージを与えないというルールがあったと聞きました。ところが、最近は、移動せずに一定の場所で家畜を飼い、そこに生えている草をすべて食べさせてしまうため、砂漠化が進んでいるということでした。今の現代文明を象徴しているような気がしますね。

宮脇

牛がのんびり草を食む牧歌的なモンゴル高原を見ると、森を破壊した人間の愚かさを感じずにはいられません。草原の美しさも、滅び行くものの美しさというか、悲しさというか、人類文明が緑の自然に与えたダメージの姿でもあります。ドイツには「森の下には、もう一つの森がある」という言葉があります。一見、邪魔者に見える下草や低木も上の森を支えている大事な下の森なのです。数千年にわたって家畜を森の中に放牧すれば、下の森だけでなく上の森も破壊されることになるわけですね。それでもかつては、森が破壊されるまで数千年という時間がかかったわけですが、今は一瞬でダメになる。一度、失われたものは、そのままにしておけば、二度と戻りませんからね。

自然との共生が生き延びる道

山田

ある説によると、人類の歴史が始まってから1950年までに消費されたエネルギーと自然に与えた負荷の量は、それ以降の55年間の量とほぼ匹敵する、と言われています。それほど50年以降は、人口の爆発的な増加と工業技術の発展などで、環境にたいへんな負荷を人間は、与えているんですね。私たちは、20世紀に周りの自然を傷つけ、破壊しながら文明の発展や経済的な豊かさを手にしてきました。しかし、今はその弊害に直面しています。私は自然との関わりが不可欠な養蜂の仕事を通して「人類と自然との共生」が、いかに重要であるかということを痛切に感じてきました。自然を犠牲にし、経済至上主義のもとで発展してきた現代社会が、深刻な環境破壊に直面しているのを見ると、まさに自然からのしっぺ返しという気がしてなりません。

宮脇

本当にこの50年、100年で私たちの周りから森が音もたてずに消えています。森はもはや人類にとって邪魔者ではなく、生きる基盤そのものであります。 30数億年続いてきた命の歴史の最後に出てきた人類を主役とする地球の命のドラマを絶対、破滅に導いてはなりません。この地球上の生き物の命と遺伝子資源を未来に向かって確実に守っていくことが今、私たちに求められています。そのためには、エコロジカルな(生態学的な)命の森を積極的に回復、再生することこそ、今、私たちが第一に取り組まなければならないことだと強く言いたいですね。

山田

自然環境と人類が共生しなければ、持続可能な文明は生まれてこないと、私は思います.(企画制作、写真提供:毎日新聞社広告局)1,2までを?

16:39 2016/02/05

予防医学 ~病気にならないために~

 

宮脇 昭氏×山田 英生対談

 

 

 

経済至上主義が招いた環境汚染

 

スコットランド・グレンジマウス

豊かな暮らしを求める人間の欲望は、とどまることを知りません。怒涛のような巨大な波となって貴重な自然環境さえも飲み込もうとしています。「自分の国さえよければ」といった日本の利己主義は、開発途上国の環境破壊と無縁ではありません。「大災害は開発一辺倒のツケ」と断言する横浜国立大学名誉教授、宮脇昭氏(78)。一方、「他者の犠牲による繁栄は、歪んだ経済至上主義の表れ」と指摘する山田養蜂場代表、山田英生(48)。今、地球的な視点に立った経済と自然との調和が、求められています。

 

【構成 毎日新聞社 編集委員・成井哲郎】

 

科学の進歩で貧富の差拡大

宮脇

人類の命の基盤である森が、私たちの周りからどんどん消えようとしています。かつて日本の国土の多くは山地、丘陵で覆われていましたが、豊かな生活を求める人間の欲望は、次々と山を削り、海、川を埋め立て、多くの自然を破壊してきました。特に1960年代から「開発を錦の御旗」に新しい産業立地づくりや都市開発が各地で進められ、鉄やセメント、石油化学製品など死んだ材料(非生物的材料)による画一的な規格品づくりが大規模に行われてきました。その結果、私たちは豊かな暮らしや経済的な繁栄を享受する一方で、健康や命にまで悪影響を及ぼす弊害が現れたわけです。確かに、私たちが生きていくためには、車も電気も使わないわけにはまいりませんが・・・。

.山田

科学技術の発達で人類は経済的繁栄は享受したが・・・=スコットランド・グレンジマウスで

科学技術の発達で人類は経済的繁栄は享受したが・・・=スコットランド・グレンジマウスで

 

そうですね。科学の進歩は、私たちに非常に快適な暮らしをもたらしてくれた半面、核兵器のような地球が一瞬にして滅んでしまう大量殺戮兵器も作り出してしまいました。その科学技術を「いかに人類の発展に生かすか」という目的の部分が、欠落していたような気がしますね。地球の人口62億人のうち、富める国の人は12億人で、50億人が貧しい国の人と言われています。経済社会や自然科学が発達すれば、人間はどんどん幸せになれると言われながらも貧富の差は激しくなるばかりです。私たちの住んでいるこの地球は、工業の発達や輸送手段が飛躍的に進歩した結果、以前に比べだいぶ狭くなりました。今後は、地球的な視点で全体観に立った考え方が非常に重要になってくると思いますね。

..宮脇

科学技術の発達で人類は経済的繁栄は享受したが・・・=スコットランド・グレンジマウスで

スマトラ沖大地震による大津波で軒並み、海岸に崩れ落ちたバンガロー群。マングローブ林をもう少し残しておけば、被害はもっと少なかったかもしれない=04年12月、タイ・ピピ島で

 

おっしゃる通りです。一昨年のスマトラ沖地震による大津波でも、土地本来の木が残されていれば、あれほどの大被害にはならなかったはずです。私たちは、 78年からアンダマン海沿いからタイ湾まで2800ヵ所でマングローブ林の調査を行いました。当時、タイのプーケット島では、水際に樹高20~30メートルのマングローブ林が生い茂り、内陸地に向かって熱帯雨林が広大な森をつくっていました。その後、急速に観光開発が進み、木々が根こそぎ切り倒され、砂浜とホテルだけの一大リゾート地に変ぼうしてしまったんです。こうした開発一辺倒のやり方が被害をより大きくしたと言っても過言ではありません。あんなに大量に木を伐採せずに、もう少し海岸沿いに土地本来の木を残しておけば、津波が襲っても波の衝撃を弱める木の波砕効果でもっと多くの人々が、逃げ出すこともできたでしょう。

..山田

環境よりも開発優先の結果が被害を大きくしたわけですね。

.宮脇

はい。私たちが現地調査を続けていた70年代から私も含め新聞や進歩的な学者は、日本の商社に対して熱帯雨林を破壊する元凶として批判的でした。しかし、実際、森の中に入って驚きましたね。彼らは環境のことを考えてなのか、それとも金儲けのための知恵なのか、わかりませんが、大きな木しか伐らないのです。ボルネオでは、胸高直径(人間の胸の高さに当たる木の直径)80センチ以上の大きな木は1ヘクタールあたり、4~5本、多くても6本ぐらいしかありませんでした。それをていねいに伐って、きちんと搬出すれば、あとに後継樹が控えていますから持続的な利用が可能なんです。しかし、地元の人たちはそうはせずに、ネズミがさらうがごとくすべての木を伐ってしまうから困るんです。それをそっくり買い占める日本などの企業は、もっと問題ですけどね。

.

木材買い占めの国にも責任

山田

確かによくないですね。企業経営者の立場から見ますと日本は、多くの国にさまざまな影響を与えています。木材の輸入量も、東南アジアからの熱帯雨林の輸入量も日本はトップクラス。熱帯雨林を伐採した跡に植えるアブラヤシにしても、ヤシからとれる洗剤や化粧品が「体にやさしいから」と言って日本が大量に買うから、向こうの国も国家プロジェクトとして次々、熱帯雨林を伐採して開発を進めるんです。日本人は、植物性の洗剤を「環境にやさしい」と、それを買うことが何かよいことをしているかのように思い込んでいるんですね。こうした日本の利己的な文化が熱帯雨林を破壊していることを、まだ多くの日本人は気づいていません。現在のように国境の壁が取り払われ、世界からいろんなものが入ってくる時代に、知らないということは、非常に怖いことだと思いますね。

.宮脇

まったく、同感ですね。高いお金を出して植物性の油を買い求め、それが地球上最後に残された、多様性に富んだ熱帯雨林の破壊につながっていることに気づいていない。こうなると「知らない」ということは、罪悪でさえあります。

.山田

紙の材料であるケナフにしても、同じですね。科学的な根拠はわかりませんが、ケナフは、「生育が早く、二酸化炭素の吸収力が多い」といわれ、「地球温暖化の防止にも役立つ」と主張する人もいます。しかも「自然にやさしい」という理由で、日本人にたいへん人気があります。日本でよく売れるから日本の企業などが東南アジアの水田にケナフを植えさせ、輸入していると聞いたことがあります。連作障害を起こしやすい植物ともいわれ、広大な栽培面積が必要となるため、自然破壊にもつながりかねない、と指摘する声もあります。エビにしてもコーヒーにしても同じで、しかも、農薬とか抗生物質を大量に投入しているから問題なんです。そこには、「自分の国さえよければ」という思いが見え隠れしているように思えてなりません。特に日本は、資源が乏しく、食糧自給率も40%を割っています。それらの多くは、他の国に依存せざるを得ないのが実状です。結局、日本やアメリカ、ヨーロッパなど先進国の豊かな暮らしは、他の民族やいろんな国の人たちの犠牲の上に築かれた繁栄なんです。これこそ経済社会の発展の末に行き着いた現代文明の歪んだ姿ではないでしょうか。

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利益優先の人工造林計画

宮脇

昨年の台風14号で土石流に押しつぶされ、原形をとどめない住宅。荒れた山林が被害を大きくする=鹿児島県垂水市新城で 05年9月

昨年の台風14号で土石流に押しつぶされ、原形をとどめない住宅。 荒れた山林が被害を大きくする=鹿児島県垂水市新城で 05年9月

 

国内の人工林にしても同じことが言えると思いますね。日本では木材生産のため、古くからスギ、マツ、ヒノキなどの針葉樹を国中に植えてきました。特に第2 次大戦後は、戦災復興の意味もあってそれまでの広葉樹を伐採してスギ、ヒノキなどを全国一斉に植えてきたのです。いわゆる広葉樹退治の拡大造林計画ですけど。こうした計画も現場を見ないで机上で進めるから問題なんです。自然には人の顔のほおのように触ってよいところと、目のように指一本、触れてはいけないところがあるんです。拡大造林計画が行われるまでは、人間の干渉に敏感な尾根筋や急斜面、岩場など弱いところには広葉樹を残してきたわけです。しかし、戦後はそうした場所にもスギ、ヒノキ、カラマツを画一的に植えてきました。こうした土地に合わない木は、植えてから20年間は、下草刈りや枝打ち、間伐などの手入れが必要で、それを何とかこなして「やっと金になる」と思った途端、今度は木材の自由化で安い外材に負け、「スギ1本がダイコン1本」と言われるくらい暴落し、「伐れば赤字、出せば赤字」の状態に陥ったわけです。間伐などの手入れもしない人工林の山は荒れ放題となり、必ず襲う台風や洪水、地震などの自然の揺り戻しにもあっけなく崩壊する。最近の災害は、まさに人災といってもいいと思いますね。

..山田

私たち養蜂を営む者にとって大切な広葉樹の里山が、針葉樹に植え替えられるようになってから、ミツバチが生きて行ける自然環境が大きく失われました。これも木材生産という経済優先の国策だった気がします。今、町にも家庭の中にもモノがあふれ、機械が家事の大部分を人間に代わってやってくれる、本当に便利な時代になったと思います。物質的には、確かに豊かになったように見える私たちの生活ですが、果たして昔と比べて本当に幸福になったと言えるでしょうか。そうは思えませんね。かつての農業社会では、家族や地域が共同で働き、大地とともに生きる生活の中で家族はお互いに必要な存在とされ、幸福を実感しながら生きてきました。それが経済社会へと変遷してゆく過程で、農業社会の仕組みが崩れ、心のやすらぎまで失われたような思いがしてなりません。

(企画制作、写真提供:毎日新聞社広告局)

3bann

5:09 2016/02/06

 

 

「かけがえのない一人一人のために」変わらぬ想いを積み重ねています。 株式会社 山田養蜂場 代表 山田 英生

創業の精神

ひとりの人の健康を守るために

山田養蜂場がローヤルゼリーを生産販売するきっかけとなったのは、昭和35年に創業者の娘が、 先天性の心臓疾患を持って生まれてきたことでした。専門の医者は、体力がついたころに外科手術を受けることを勧めました。 生後間もなく判明した娘の難病を知った創業者は、「何とか元気に育てて、心臓の手術をさせたい」と決意し、 父親としてあらゆる手を尽くしました。

おりしもその当時、ローマ法王ピウス(ピオ)12世がローヤルゼリーを健康維持に役立てたという ニュースが世界中をかけめぐり、日本にも伝わってきました。 そのニュースに接した創業者は、自らの飼育するミツバチがローヤルゼリーという物質を生産できることを 知りました。 創業者は「このローヤルゼリーは、もしかすると娘を元気に成長させることができるかもしれない」と、その日以来さまざまな文献を取り寄せて研究を重ねました。そして、独自にローヤルゼリーを大量生産する技術を習得するに至ったのです。

 創業者の娘は、結局心臓外科手術の失敗により亡くなってしまいました。娘の死に創業者は大きなショックを受け、何日も涙する日が続きました。 しかし、「自分の子はもう返ってこないが、悲しみに打ちひしがれているだけでいいのか。世の中には、娘と同じように、病気や障害で苦しんでいる人がたくさんいる。娘は大切な命と引き換えに、多くの人々の健康を守るために、私の仕事の使命を教えてくれたのだ」と立ち直りました。 創業者は、なお一層本格的に養蜂と養蜂を通じたミツバチ産品の開発に取り組む決意を固めたのでした。

 

 山田養蜂場の健康食品は、家族の健康を守るためにという素朴な家族愛から生まれました。この創業者夫妻の娘に対する心は、「苦しみを取り除き」=悲、「楽を与える」=慈という親としての当たり前の感情です。 私たちは、事業の根本の精神に、この創業者夫妻が商品を創る動機とした「慈悲」の心を受け継がなければならないと考えたのです。 多くの人々に商品を提供している今も、かけがえのない「ひとりの人の健康を守るために」という思いで、一人ひとりと接していきます。 これからも、この精神を大切にしながら、製品づくりに取り組み、みなさまにお届けしていきます。

 

自然と人間社会との調和に貢献するために

 

私たちは、創業の精神である「常に一人の人のために」との慈悲の心を根本に、自分たちの社会での活動の方向性を考えました。そして、次の三つの理念を尊重していくことをきめたのです。

一、我々は、自社のルーツである養蜂業を通じ、ミツバチの「自然との調和の姿」に触れることができた。その姿から「自然環境の大切さ」を知り、謙虚に学ぶことが、我々の企業活動の規範である。

一、我々は、ミツバチを通じて学んだ「自然への感謝と畏敬」の念、「社会に対する奉仕」の気持ちを常に心に刻み、「自然と人間社会との調和に貢献する」ことを目指す。

一、我々は、まさにミツバチのように「勤勉」に「創造的」に自分達の持ちうる限りの知恵と力を結集して、「自然の恵み」を人間社会における最大の価値である「心身の健康」に、広く役立てることを使命とする。

16:32 2016/02/05http://www.3838.com

 

 

 


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