世界一幸福な国デンマークの暮らし方・第四章 『赤い靴』 社会のあるべき姿を考える・ルール違反の付けは大きい・110頁から・幸な国の方程式・幸な国の方程式・112頁・自由の使い方をどう教えるか・115頁
引用
第四章 『赤い靴』―― 社会のあるべき姿を考える
「赤い靴」・106頁・
ルール違反の付けは大きい・110頁・
平成28年3月4日 金曜日・
カーレンにとって、赤い靴はあこがれであり、欲しくてたまらず、手に入ったら履きたくて仕方がありませんでした。110・
111頁・青少年時代のアンデルセンには、いつも貧乏神が寄り添っていました。きっとアンデスセンも手に入れたくて仕方なかったものがたくさんあったでしょう。
自分に得られないものを他人が持っていると、人はみじめで悔しい思いをするものです。そんな生活を長いことしていると、やっと手に入れたものは手放したくない、いつもそばにおきたいと思うものなのです。
しかし、社会のルールに反してまで、自分の意思を通すことは許されません。
現代社会には、ルール違反する人が余りにも多すぎます。身近なルール違反は、相互に敬愛し、あるいは恩や義理を感じ持つ人への裏切り行為です。
目先の自分の利害関係だけで背信行為を起こす人間は後を絶ちませんが、人や社会に対する背信行為は、そのツケが大きいことを知らなくてはなりません。
「赤い靴」のカーレンは、奥様の具合が悪いのに、舞踏会に行きたいという自分の欲望を優先させました。その結果、何と自分の足を切ることになってしまったのです。
私たちは社会の中で自分の存在か一を考えなくてはいけません。
自分は社会の中でいかに大切な仕事をしているのかを知り、自分の価値を見出すのです。111・
112頁・平成28年3月5日 土曜日・
一番身近な社会は家庭です。そして、学校、職場、地域社会、国、世界へとつながります。
自分のおかれた社会の中で、自分の価値観を見出せずに自分を見失ってしまったり、自分がやるべきことを怠ったりすると、その賠償は大きなものとなって返ってきます。
その賠償の大きさを知らないがゆえに、家庭内のおける悲惨時、学校内におけるいじめや暴力、企業における不祥事、国における諸政策の失敗による損害が大きくなって、私たちのもとに返ってくるのです。113・
幸な国の方程式・112頁・
平成28年3月5日 土曜日・
「幸せ」とは、「生活しやすい」と言うことだと前章でお伝えしました。
では、「幸せな国」とはどういう国でしょうか。
ここに、幸せな国の方程式を作ってみますので、一緒に考えてみましょう。
幸せな国とは、住みよい国のことです。住みよい国とは、生活大国のことです。生活大国とは、社会福祉国家であるとことです。112・
113頁・つまり、「幸せな国=社会福祉国家」なのです。
社会福祉国家とは、ゆりかごから墓場まで保障している国のことです。ゆりかごから墓場まで保障している国とは、どういう国かと言うと、成熟した民主主義の国のことです。民主主義とは、その名のとおり民が主体です。全ての国民がどのような生活を送るのか、それを選ぶのは国民です。ゆえに、民主主義と主権在民は同義語になります。
また、あえて民主主義を因数分解すると、「民主主義(主権在民)=自由+平等+連帯+共生」になります。
これをまとめてみますと、次のようになります。
幸な国=住みよい国=生活大国=ゆりかごから墓場まで保障している国=民主主義の国(=主権在民)=自由+平等+共生・
では、このことを日本人がしっかり理解しているかと言うと、ほとんどの人が理解していません。113・
114頁・また、日本の国家を牽引している二大政党、自由民主党と民主党は、どちらも民主と言う言葉を使っていますが、本当な民主なのかと疑問を抱きます。
デンマークの学校では、民主について徹底して教えています。言葉の意味だけではなく、態度、実生活をとおして教えています。
日本の学生に「民主主義とは?」と質問すると、「自分たちで自分たちのことを決める」とすらっと答えられます。しかし、「自由とは何か」と聞くと、「自分で何をやってもいい」「束縛されない」となるのです。
「平等とは何か」と言う質問には、「まったく同じ権利」「同じわけ前」になるのです。ましてや共生や連帯となると、「どういう意味?どうしたらいいのだろう?」と意味を理解できず、だから行動が伴わないのです。
これは自由でも平等でも共生、連帯でもありません。要するに民主主義を理解していないのです。
それでは、自由、平等、共生、連帯とはどういうことを言うのでしょうか。一つひとつ考えていきたいと思います。114・
自由の使いかをどう教えるか・115頁・平成28年3月5日 土曜日・
カーレンは、舞踏会に行く自由を優先したために、二度と踊れなくなりました。
自由とは、何をやってもいいということではありません。そこには必ず責任があります。自由とともに責任についても教えなくてはいけません。
たとえば、子供たちが幼稚園でさんざん遊びほうけていたところに、「ご飯の時間ですよ」と声をかけると、子供たちはワーッと集まってきます。でも、「あそこに出しっぱなしになっているおもちゃは、誰が遊んだの?片付けなさい」と、責任を取らすのです。
あるいは、子供たちがケンカをしたとします。その時は、「やめなさい」と止めることはありません。ほっときます。子供たちで解決できるのならば、それが最良です。たとえ子供たちがおもちゃの取りっこをしていたとしても、何らかの形で解決できればオッケーなのです。もし、子供たちで解決できなくて、お互いの身に危険が生じるような状況になったら、大人が「危ないからやめなさい」と止めに入り、解決の方法を教えます。115・
116頁・子供が夜遅くまで「テレビを見たい」「ゲームをやりたい」と言ったとしたら、私は「どうぞ」と答えます。なぜなら、自由だからです。ただし、「朝何時までに起きなさいよ」と付け加えます。そして、翌朝、子供は起きられないと・・・。
夜になって「テレビが見たい」と言っても、テレビを見させることはありません。「その自由はないよ」と教えます。
「自由を間違って使ったんじゃないですか。だから、テレビを見る自由はありません」と。
また、どんな人にも役割があるのです。ご飯の時間になったら席について、出てきた料理を食べるだけではいけないのです。大人が子供にサービスするばかりでは、責任は身につきません。何か手伝いをさせることも必要です。
もし、「ご飯の準備をしなさい」と言っても何もしなかったら、その子のご飯はないのです。
このように、子供がケンカをした時の責任、後かたずけをする責任、役割を果たす責任・・・、自分の行動には必ず責任を持たなくてはいけないこと、社会の中にはルールがあって、それをきちんと守ることを教えなくてはいけないのです。116・
117頁・ただし、間違いを責めることはしません。「ダメですよ」と注意はしますし、その後の自由を取り上げますが、理由なく、頭ごなしに起こることはありません。117・
ここまでここまで
ここまで
・世界一幸福な国デンマークの暮らし方 2009・8・18 ・第四章 『赤い靴』―― 社会のあるべき姿を考える・自由の代償と連帯責任・117頁・
http://amamioosoma.synapse-blog.jp/yosiharu/2016/03/2009818-2e1e.html
8:47 2016/03/05
http://www5.synapse.ne.jp/takita/naze%20denmakuha%20kouhuku.html
世界一幸福な国デンマークの暮らし方 2009・8・18 第2章・社会的弱者はだまされ続けている・60頁・より
http://amamioosoma.synapse-blog.jp/yosiharu/2016/03/2009818-2-8db5.html
16:25 2016/03/04
世界一幸福な国デンマークの暮らし方 千葉 忠夫 (著)第2章・腐敗が世界一少ない国・頁・国家予算の約75%が教育や福祉に使われる・52頁・
http://amamioosoma.synapse-blog.jp/yosiharu/2016/03/2-628b.html
14:20 2016/03/04
世界一幸福な国デンマークの暮らし方 千葉 忠夫 (著)第2章・腐敗が世界一少ない国・44頁・
http://amamioosoma.synapse-blog.jp/yosiharu/2016/03/2-e808.html
9:29 2016/03/04
引用
なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか 単行本 – 2008・2 ケンジステファンスズキ ・デンマークのある小学校の6年生は環境教育の課題で「高速道路の建設に関する賛否」と言うテーマを取り上げました。なぜ小学6年生の環境教育で「高速道路の建設問題」を取り上げたのか、その理由は高速道路の施設によってその場所で生殖していた動力物の生地を奪うという自然の破壊行為と言うマイナス面と、高速道路ができた場合における、物流のスピードアップによる地域や産業の活性化と言うプラスの面を考えるためだと説明しています。166・
167頁・
第9章 教育の目標は「国家運営」に参加する国民をつくること165・
http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/02/20082-9-35bd.html
7:35 2016/02/23
なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか・
第4章 デンマーク人が国を愛する心の原風景・平成28年1月26日・
http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/4-28126-6e43.html
16:46 2016/01/26
なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか 単行本–2008・2
第4章・84頁・・2・地方自治無くして民主主義国家はあり得ない・84頁・
・中央政府になびかない国民性・行政官僚と産業界との癒着は封建制度時代から引き継がれている国のかたちと・・・・・デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか 96頁・
http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/20082-e7ed.html
8:51 2016/01/28
なぜ・第10章・借金の残さないデンマーク・ツケを残す日本・173・179頁・
http://amamioosoma.synapse-blog.jp/yosiharu/2016/01/post-cced.html
6:22 2016/01/30
なぜ・・2・地方自治無くして民主主義国家はあり得ない・84頁・91頁・
http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/post-46fe.html
2/22/2016
なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか 単行本 – 2008・2 ケンジステファンスズキ (著) 5つ星のうち 4.4 12件のカスタマーレビュー デンマークという国を日本との比較で紹介した本です。教育や福祉に対する意識の高さ、愛国心、どれも今の日本にとって見習うべきところと思いますが、デンマークという国の歴史的な背景から来るものだと言うことが、詳細に述べられています。
中でもうらやましいのが、エネルギーと食料自給率が100%を超えるという点です。両方とも、これから世界的な不足が問題になることは目に見えていますが、これらの問題を克服している点に、デンマークと言う国のすばらしさを感じました。公務員の必読本に指定して欲しい良書です。
8:29 2016/02/23
http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/20082-5-44-12-3881.html
9:36 2016/01/26
2/22/2016
自由の使いかをどう教えるか・115頁・
自由の代償と連帯責任・117頁・
職場を離れたら「目線」は同じ・120頁・
ピザの公平な分け方・122頁・
一人で持てないものは二人で持つ・126頁・
デンマーク人にはできて、日本人にはできないこと・128頁・
出した分だけもらわなくては損?130頁・
自由、平等、連帯、共生、・132頁・
平成28年3月4日
世界一幸福な国デンマークの暮らし方 (PHP新書) 新書– 2009・8・18
千葉 忠夫 (著) 内容紹介
「マッチ売りの少女」にあるような厳寒、貧困の国であったデンマークは、
戦後の社会福祉国家としての制度改革によって、いまや「国民の幸福度ランキング」で世界第一位の生活大国となった。世界でいちばん幸せな生き方とはどういうものなのか?
デンマークにあって日本にないものとは何か? デンマーク人の心に二百年間宿りつづけたアンデルセン童話を手がかりに、自由、自律、責任、貧困、政治、教育、社会、福祉などの問題について再考する。
目次
はじめに・・・世界で一番幸せな国・デンマーク・3頁・
もし、「あなたは幸せですか?」と聞かれたら、「はい!幸世です」と答えることができますか?
北欧の国デンマークは、この質問に「幸せです」と答えた国民の数が、世界で一番多い国です。
これは、アメリカの研究組織、ワールド・バリューズ・サーベイが各国の個人を対象に、現在の幸福度を調査し、ランキングした「幸福度ランキング」(2008年に発表)の結果です。
幸福度ランキングとは、約100ヵ国の地域を対象に「あなたは幸せですか?今の生活に満足していますか?」と質問をして、「幸世です」と答えた人の数を調べたものです。その結果、デンマークが堺で第一位でした。
4頁・二位はプエルトリコ、三位はコロンビア。アメリカは16位、イギリスは21位、フランスは37位。そして、日本は43位、中国は54位、韓国は62位と言う結果でした。
また、イギリスのレスター大学の心理学者が発表した幸福度マップと言う別の幸福度調査でも、デンマークは一位になりました(2006年発表)。
これは、イラクなどの紛争国を除く世界178か国を対象に、経済状況や医療制度、教育などのデータを分析、幸福度に影響を与える要因となる医療制度、裕福度などを数値化し、ランキングにしたものです。
ここでも、第一位はデンマークの。次いで、二位はスイス、三位はオーストリアでした。そして、アメリカは23位、日本は何と90位でした。
デンマークは、国を対象にした指標でも、個人を対象にした指標でも世界で一番幸せな国、そしてデンマーク人は世界で一番幸せな国民と言えるのです。
実際に国民の約80%は「この国に生まれてよかった」と言っています。4・
5頁・さて、日本にはなかなか馴染みのないと思われるデンマーク。
その場所すらご存じない方もいらっしゃるようですので、ここで少しご紹介をすることにしましょう。
・コペンハーゲンは「商人の港」・
デンマークは北欧にある小さな国です。東はバルト海、西は北海に面しており、ユトランド半島、シェラン島、フュン島など500以上の島々からなる国です。デンマーク領であるグリーンランド、フェロー諸島を除いての総面積は約4万3000㎡で、九州と同じ大きさですが、人口は551万人(2009年度デンマーク統計局)で、東京都(人口は1294万人・東京都2009年4月)の半分以下です。
気温は温和で、夏は比較的涼しく、日本でいう北海道の夏の季節と似ています。緯度は樺太の北に位置しているものの、冬は温暖で東北の岩手よりも暖かく感じるのですが、日照時間が短く、遅い時で午前八時過ぎに日が昇り、午後三頃には沈んでしまいます。5・
6頁・また、夏の最も陽が長い時には、午前四時半に日が昇ると、午後十時近くまで陽は沈みません。ですから、陽の長い夏の季節は国民全体が仕事を早く切り上げて、外に出て太陽の光を堪能します。
人々は広く満遍なく国土の至る所に住んでおり、緑豊かな土地には一軒家が多く、日本では当たり前のように見かける十数階建てのマンションなどは、ほとんどありません。
首都・コペンハーゲンは、デンマーク語で「商人の港」と言う意味があります。デンマーク人の祖先はバイキング。バイキングは、8~12世紀に北欧のフィヨルドから巧みな航海技術を駆使してヨーロッパ各地で活動し、貿易も盛んにしていましたので、「入り江の民」「市場の民」とも言われています。
現在は農業国として有名で、国内でとれる農産物の三分の一で全人口が賄えるほどお高い自給率で、食料は潤っています。日本には主に豚肉やチーズと言った食品を輸出しています。6・
7頁・主食はジャガイモと黒パンで、日本人がお米を食べるとの同じようにじゃがいもと黒パンを毎日食べています。スーパーには何種類のジャガイモと黒パンが、所狭しと陳列されています。
さて、デンマークの観光の見どころは、コペンハーゲン、近郊の森林地帯に点在する歴代王室の古城、そしてなんといっても、アンデスセンの生まれ故郷、オーデンセだと思います。特に、オーデンセのかわいらしい街並みはおとぎの国そのものです。
コペンハーゲンには有名なチボリ公園があり、夏の開園期間は老若男女の憩いの場となっています。街はずれには「ニューハウン」と呼ばれる地域があり、その周りにはパラソルを出したお店が軒を連ねています。7・
8頁・また、日本の子供にも人気のあるレゴブロックがデンマークの玩具であることはご存知でしょうか。
ユトランドには大きなレゴランドがあります。レゴで作った世界の有名な建物などが子供連れの家族に人気でにぎわっています。
さて、デンマーク人の面白い習慣を二つ。
デンマークには「湯船につかる」と言う習慣がありません。
昔は湯船があったのですが、国内がオイルショックで節約志向になった時、人々は湯船を捨てたのです。お風呂は「温まるもの」から「体を奇麗にするもの」へと合理的に変化しました。今では、各家にシャワーのみがあり、湯船をおいている家はほとんど見かけれません。たまに郊外の牧場に行くと、家畜の水飲み場に昔の湯舟が使われている光景が見られます。
また、デンマーク人は、写真の撮り方が日本の習慣とは多少異なります。
写真を撮る時、日本では、「はい、チーズ」と声をかけて、ポーズをとったところでシャッターを切ります。しかし、デンマークでは気づいたら取られていることがほとんどです。8・
9頁・「ちょっと待ってくれよ」といっても、「自然な姿がいいんだよ」といっぱしの芸術家口をたたかれることがあります。ですから、アルバムの中には、個性的な芸術性あふれる写真が並んでいます。
・アンデルセンが描いた未来社会・9頁・
さて、みなさんは「アンデルセン童話」を読んだことがあるでしょうか。
きっと子供のころの記憶に、絵本や児童書として残っているのでは、と思います。私はこれまでデンマークがどのようにして社会福祉国家になっていったのかをいろいろな角度から探求してきました。最近になって、200年ほど前に生まれたアンデルセンの心の中に、デンマーク人を代表する心があることに気がつきました。
アンデルセンの童話にはその時代の社会と、生活している人々の喜怒哀楽、望ましい未来社会を実現するための願望が描かれています。
アンデスセンが描いた望ましい未来社会は、その童話を愛したデンマークの人々によって実現しました。9・
10頁・デンマークの人々は160年という年月をかけて幸福度世界一の国、幸せな国デンマークをつくりあげたのです。
では、そもそも「幸せな国」とは何でしょうか。私は、幸せな国とは人びとが「生活しやすくて住みやすいこと」につながると思います。
日本からデンマークの社会福祉を学びに来た学生に、私はこんな質問をします。「住みよい国って何ですか?」
たいていの学生は、食べ物があること、住む家があってお金に困らないこと、物価が安い、病院がある、交通の便がよい、仕事がある、夢が実現できるといったように、まずは衣食住の面が満たされることを挙げます。
次に格差のない社会、平等、個人の自由、人権の尊重、障碍者や高齢者の生活保障、安心して老いられる国、自由に教育が受けられる、民主主義の国・・・と、社会問題に目が向けられていきます。
そして、緑が多い、空気がきれい、天災害がない、紛争や戦争がない・・・と、社会がおかれている環境、世界へと視野が広がっています。10・
11頁・人間は誰もが一番身近な自分自身のことから考え始め、そして世界を考えるという順序になるのは当たり前のことでしょう。
アンデルセンと同時代に活躍したデンマークの哲学者キルケゴールは、単独者の主体性こそ心理と説く個人主義、実存主義を唱えました。キルケゴールの思想もデンマークが社会福祉国家になった一つの要因と言えるでしょう。社会と個人は相反するもののように思われますが、「個人を大切にすることが、個人の集まりで構成されている社会を大切にすることにつながる」のです。
ならば当然のことながら、個人が住みよい社会であり、それが集まってできている国は、住みよい国と言えるでしょう。
では、デンマークは昔から住みよい国だったのでしょうか。
アンデスセン童話の中でもっとも有名な作品の一つ、「マッチ売りの少女」を知らない人は少ないでしょう。
これはアンデルセンが43歳の時の作品で、今から160年前のデンマークを見事に表しています。当時はマッチ売りの少女のような貧しい子供たちが、デンマークにはたくさんいたのです。11・
12頁・それから時を経て、デンマークは世界一幸せな国なりました。そして、経済福祉国家としての道をしっかり歩んでいます。
貧しかった「マッチ売りの少女」の国は、なぜ世界一幸福な国になれたのか、その仕組みを本書で紐解いていきたいと思います。
第一章 『マッチ売りの少女』―― 貧困を考える、
「マッチ売りの少女」・25頁・
寒くてどうしょうもなかった・27頁・
少女が望んだ幸せとは・29頁・
働かざる者は食うべからず・31・
日本の貧困率は世界五位・32頁・
問題解決には助けが必要・34頁・
貧困をなくすには・36頁・
第二章 『はだかの王様』―― 政治を考える
「はだかの王様」・40頁・
腐敗が世界一少ない国・44頁・
女性の社会進出で好循環が生まれる・47頁・
デンマークで少子化が止まった理由・49頁・
国家予算の約75%が教育や福祉に使われる・52頁・
贈収賄ができない制度づくり・54頁・
なぜ日本人は税金に嫌悪感を抱くのか・57頁・
社会的弱者はだまされ続けている・60頁・
地方分権で政治、福祉が変わる・62頁・
デンマークの投票率は90%・64頁・
第三章 『みにくいアヒルの子』 ―― 教育を考える
「みにくいアヒルの子」69頁・
人は見た目で判断する・72頁・
自分の生き方は自分で決める・73頁・
デンマークの国民学校法とは・74頁・
国に必要な人を育てる・76頁・
義務教育に学ぶべきこと・79頁・
教科書の指定がない授業・81頁・
「義務教育」と「教育の義務」との違い・83頁・
登校拒否には理由がある・85頁・
好きなことを勉強させる・86頁・
高校の授業が分かる人は三割程度・88頁・
高校への進学率は約45%・91頁・
在学中にしっかり実習経験を積む・94頁・
大学全入は大きな無駄・96頁・
役職ポストは公募制・99頁・
デンマークには勤務評定がない・100頁・
教師と生徒が寝食を共にする・102頁・
第四章 『赤い靴』―― 社会のあるべき姿を考える
「赤い靴」・106頁・
ルール違反の付けは大きい・110頁・
幸な国の方程式・112頁・
自由の使いかをどう教えるか・115頁・
自由の代償と連帯責任・117頁・
職場を離れたら「目線」は同じ・120頁・
ピザの公平な分け方・122頁・
一人で持てないものは二人で持つ・126頁・
デンマーク人にはできて、日本人にはできないこと・128頁・
出した分だけもらわなくては損?130頁・
自由、平等、連帯、共生、・132頁・
○第五章 『ナイチンゲールの歌声は介護の心』―― 福祉を考える
「ナイチンゲール」・136頁・
思いやりのある介護とは・139頁・
機械にできること、人にできること・141頁・
福祉国家の医療制度・142頁・
国民全員にケースワーカーがつく・144頁・
デンマークの高齢者施設に驚いた・146頁・
住み慣れた家にできる限り住みたい・147頁・
キーワードは「自律のための支援」・1150頁・
ヘルパーが10分以内で駆けつける・152頁・
成人以降の親子関係・154頁・
ノーマリゼーションの始まり・155頁・
大規模収容施設をなくせ・158頁・
障害ゆえに不可能なことがある・160頁・
在宅生活にも一長一短・162頁・
障害者福祉は社会が担う・165頁・
「親なき後」の心配は不要・167頁・
障害者が一番求める支援・169頁・
○第六章 『人魚姫の選択』―― 自律することを考える
「人形姫・174頁・
自己決定は利己主義となりうる・178頁・
自律と自立・180頁・
生活を守るための労働組合・182頁・
仕事が続けられない社会的障碍者・185頁・
可能な限り社会復帰を促す・186頁・
男性の育児休暇取得率は高い・189頁・
第三の人生で社会に貢献する・190頁・
奉仕活動ができるようになるには・191頁・
デンマークの社会問題・193頁・
社会的弱者が困らない社会をつくる・195頁・
おわりに・・・デンマークを目指した私・198頁・
生まれて初めて見る外国・200頁・
デンマークは「おとぎの国」そのものだった・202頁・
平成28年3月2日 水曜日
内容(「BOOK」データベースより)
「マッチ売りの少女」にあるような厳寒、貧困の国であったデンマークは、世界大戦後、社会福祉国家としての制度改革を成し遂げ、いまや「国民の幸福度ランキング」で世界第一位の生活大国となった。デンマークにあって日本にないものとは何か?世界でいちばん幸せな生き方とは?「みにくいアヒルの子」「はだかの王様」「人魚姫」など、デンマーク人の心に百五十年以上宿りつづけたアンデルセン童話を手がかりに、自由、責任、政治、教育、福祉、貧困など日本社会が抱える問題について、身近な視点から再考する。
商品の説明をすべて表示する
新書: 206ページ出版社: PHP研究所 (2009/8/18)
言語: 日本語発売日: 2009/8/18
目次
6:26 2016/03/02
世界一幸福な国デンマークの暮らし方・
「植草一秀の『知られざる真実』」 2016/03/01
安倍政治をストップさせるために市民が連帯する 第1377号
日本国憲法の三大原理は平和主義基本的人権の尊重国民主権である。
平和と人権を守るため、国民主権という政治の仕組みを用いることを定めた。そして憲法は、権力者が勝手に破壊せぬよう、高い砦を築いている。権力者であっても憲法の前には従順でなければならぬ。権力者の行動を縛るために憲法が定められている。これが「立憲主義」と呼ばれる考え方である。
その憲法が安倍政権の暴走、横暴によって危機に直面している。この暴政を取り払うことが、日本の民主主義にとって最重要、最優先の課題である。国民主権の考え方は、権力を創出するに際して、主権者が主役であるとの考え方だ。主権者が選挙で国会議員を選ぶ。そして、選出された国会議員のなかから内閣総理大臣が選出され、内閣を組織する。この内閣が行政権を有することになる。主権者の意思によって内閣が創設されることが重要なのだ。
しかし、選挙の制度によっては、主権者の意思が正しく反映されないことも生じる。現在の衆議院議員総選挙においては、295人がの小選挙区で選出され、180人が比例代表選挙で選出される。このうち、295人を選出する小選挙区では、1位の得票を得た者だけが当選し、それ以外の候補者は落選する。
2位以下の候補者への投票は「死票」になってしまう。
民意の分布の状況と選出される議席数の分布の状況に大きなズレが生じる。これが小選挙区制の最大の短所である。
民意の分布と議席配分の分布を一致させようとするなら、全議席を比例代表で選べばよいということになる。事実、そのように選挙制度を改変するべきだとの意見は存在する。これに対して、小選挙区制度を用いると、政権交代が生じやすいとの反論がある。
二大政党体制が確立されている国では、小選挙区制を活用することによって、比較的頻繁に政権交代を実現させているケースがある。これが小選挙区制の長所であるとされる。一長一短があるのが現実である。2014年12月14日の総選挙では、自公の与党が獲得した得票は、全有権者の24.7%であったのに対し、自公以外の政党が獲得した得票は全有権者の28.0%だった(比例代表)。
しかし、議席配分は、自公が68.4%、自公以外が31.6%だった。得票率と議席占有率に著しい相違が生じた。安倍政権は議会の多数議席を背景に横暴な政治運営を進めているが、厚い国民支持に支えられているわけではない。全有権者の4分の1の支持しか得ていないのに、衆議院の7割の議席を占有して、この数の力にモノを言わせて、暴走しているというが実態である。
自民党単独では、全有権者の17.4%の支持しか得ていない。主権者全体の6人に1人しか自民に投票した者はいないのだ。この現実をしっかりと見据えて、これからの政治を考えなければならない。
何よりも重要なことは、いまの安倍政治ではダメだと考える主権者が、選挙に際して、統一行動を取ることだ。選挙制度が悪いと叫んでみても、選挙制度がすぐに変わるわけではない。現在の選挙制度の下で、安倍政治の横暴を許さないための方策を考えなければならないのだ。それは、政策を軸に、主権者が支持する候補者を、各選挙区で一本化することである。
これを実現する上で、最大の鍵を握るのは共産党である。その共産党が、主権者の大同団結に大いに歩み寄っている。この機会を生かさずに、現在の政治状況を変えることはできない。
私たちにとって大事なのは、政策だ。原発をどんどん再稼働させて良いのか。憲法を破壊して、他国が創作する戦争に日本が積極的に加担することを許してよいのか。国家主権を失い、日本の諸制度の米国化が強制されてしまう結果をもたらす可能性が限りなく高いTPP参加を容認してよいのか。沖縄県民が総意で反対する辺野古米軍基地建設を強行してよいのか。
格差をさらに拡大させることを推進してよいのか。これらの重大な問題が山積している。これらの諸問題について、積極推進する政治勢力とこれらの諸問題の推進を阻止する政治勢力が対峙して、選挙を戦う図式を作り上げて、これらに反対する主権者が、統一候補を全面支援する体制を構築することを目指すべきだ。
この図式を実現できれば、安倍政治にストップをかけることが可能になる。3月18日(金)オールジャパン平和と共生「安倍政治を許さない!参院選総決起集会」https://goo.gl/vNGx4rはその実現を目指す。
民主党に所属していた鈴木貴子議員が民主党を離党する意向を表明した。民主党は鈴木貴子議員を除名処分にする予定であるという。新党大地は北海道5区の衆議院議員補欠選挙で、自民党が推薦する候補者を支援する見込みである。個利個略。政治的信念も理念もない。鈴木氏は共産党との共闘に反対の意向を示しているが、まったく説得力がない。
安倍政治の暴走とは具体的に何を指すのか。それが、5大問題への対応なのである。安全性を確保していない原発をどんどん再稼働させる。憲法を破壊して集団的自衛権の行使を容認する。国の主権を損なうTPPを熱烈推進する。辺野古米軍基地建設を積極推進する。格差拡大をさらに推進する。これが自民党政治、安倍政治である。
鈴木貴子氏は、安倍政治の暴走に反対の主張を示してきたのではないのか。
共産党の主張は、これらの5大問題に対して、いずれもNO!というものである。その政治がいま求められている。生活の党、社会民主党も、基本的に基本政策路線が共有されている。民主党と維新の党の内部には、これらの5大問題への対応が異なる部分がある。
しかし、安倍暴政にブレーキをかける必要性では、一致する部分がある。安倍暴政にブレーキをかけるには、小異を残して大同につく対応が必要になる。とりわけ、参院選では32ある1人区で、自公候補者に打ち勝つことが重要だ。そのためには、反自公勢力が共闘するしかない。5大政策で全面的な一致を見ることができなくても、
「安倍政治を許さない!」点で一致できるなら、共闘するしかない。こうした現実的な対応が求められる。しかし、これと自公の側に寝返るのはまったく違う。2012年12月の選挙では生活の党(=未来の党)が最大の標的にされた。2009年総選挙での政権交代を牽引したのは、民主党の小鳩体制だった。小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏が連携して政権交代の大業を成就させた。ところが、2012年に野田佳彦政権が消費税増税を強行決定したことを受けて、小沢一郎氏のグループが民主党を離脱して新党を創設した。
これが「国民の生活が第一」であり「未来の党」であった。2012年12月の総選挙は、この小沢新党をせん滅することを目的とした選挙であったと考えられる。そのための、数えきれない不正行為が実行されたものと推察される。振り返ると、2009年9月の政権交代成就の際の、基本理念、基本哲学の再生が求められているのである。
その流れを汲むところに、現在の野党共闘の源流がある。そのなかで、共産党が日本政治の流れを変えるために、積極的、柔軟な対応を示しているのである。これは、主権者にとって歓迎するべきことであり、批判するべきものではない。「小異を残して大同につく」主権者連帯の行動がなければ、日本政治の現状を変えることはできないと思われる。この主権者連帯の運動をさらに拡大させる必要がある。
5:43 2016/03/02
社会的弱者はだまされ続けている・60頁・16/3/4 16時4分7秒・
日本国憲法の第25条をご存知ですか。
日本国憲法第25条
・1・すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
・2・国は、すべての生活面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
このように謳われていますが、日本では社会的弱者、いわゆる貧困者、障害者、高齢者の生活が健康で文化的な最低限度の生活にはなっていません。60・
61頁・社会的弱者である国民の生活を保障するはずの政府の政策が不完全です。
国民はあまり気付いていないかもしれませんが、国民は国にだまされ続けているのです。
王様がいかさま師にだまされて「見えない衣装」を身にまとい、とうとう裸で街を歩いてしまったという「はだかの王様」の物語は私たちにいろいろなことを教えてくれています。
世の中には人をだます人がたくさんいますが、だまされる人もたくさんいるのです。
どちらが悪いかと言えば、当然、人をだます方が悪いに決まっています。しかし、嘘と知っていながらだまされ続けるのであれば、だまされる人にも問題があると言わねばならないでしょう。
世の中のいろいろな事件の始まりは、だますこととだまされることがほとんど同時に起こっています。いったん人をだまし始めると、その嘘を正当化しようとするため、新たな嘘をつかなくてはなりません。嘘は雪だるま式に大きくなり、その結果、大事件となってしまうことがあります。61・
62頁・いかさま師は人をだますことを自分の仕事にしている人たちなので、その愚かな行為をやめさせることは難しいです。
一方、だまされる側は王にして猜疑心を持たない正直者が犠牲になることが多いので、本質を見極め、だまされないようにするのが肝心です。
国の政治を司る人が嘘を正当化して、国民をだまし続けるようなことがあっては絶対にいけません。62・
地方分権で政治、福祉が変わる・62頁・16/3/4 16時32分17秒・
国の規模の違いは、国の治めるやり方に大きな影響を与えます。
たとえば、アメリカはその名のとおり合衆国です。それぞれの州が地方自治の諸制度を司っていますが、社会福祉に関しては、自己責任が大きい保険制度によるところが主です。一方、日本は健康保険、年金、介護制度があります。日本は、すべてが自己責任のアメリカ型とすべてを国が保障する北欧型の間にあります。62・
63頁・アメリカは民主主義を掲げていますが、本当のヒューマニズムの民主主義ではありません。絵に描いた餅のような民主主義ではないかと思わずにいられません。なぜなら、人種差別があり、あちこちに貧困者の集まるスラム街があるからです。民主主義のキーワード「平等」が実現していない国です。
アメリカは国が大きすぎて、結局は地方ごとに分権していますが、その範囲が大きいですから、地方集権を中央集権と言っても構わないでしょう。
規模が大きくなると、どうしても権力関係陥りやすいのです。デンマークは国が小さいから改革できたというのも、一理あります。
ならば、日本は道州制を導入したらよいのです。地方分権にするだけで大きく変わります。住民に一番近いところで政治、福祉が行われれば、国民は住みよくなるのです。
日本の九州とほぼ同じ大きさの小さな国デンマークでさえも二年前、かつて14あった県を五つの地方自治区とし、275あった市町村に相当する末端は98の地方自治体に改革しました。63・
64頁・日本も一日も早く道州制にして、国、州、地方の役割を明確にし、地方自治体が住民に密着した福祉行政を、責任をもって果たしていくべきではないでしょうか。64・
デンマークの投票率は90%・64頁・
成人に達する年齢を世界的に見ると、北欧と日本では大人になる年齢が違うのがよくわかりませ宇。
デンマーク、スウェーデンはともに、成人は18歳以上です。現在にホンダは20歳以上を成人としていますが、グローバル化していることも鑑みて、この年齢を18歳にまで下げ、18歳の青年に大人としての責任感を持たせるべきでしょう。
18歳にする利点は、より多くの人が選挙権を持つことにあります。選挙権を18歳以上も持たせることによって、より多くの国民の意思が政治に反映医されることになります。民主主義社会ではなるべく多くの人に賛成してもらうために、選挙権、被選挙権を18歳からにすることも適切であると思います。64・
65頁・したがって扶養の義務は18歳までとなります。ただし、18歳で自立不可能な人のために、自分で生活していけるようにするための支援制度をしっかりと整備しなければなりません。
国や県、あるいは市町村が何もしてくれないという嘆きの声をよく耳にします。しかし、そうした考え方は誤りです。主権在民をしっかりと認識している国民は、自分たちの生活を保障してくれる然るべき議員を、自分たちの代表として選びます。
デンマークの政治家の政治生命は、国民の生活保障にあると言っても過言ではないのでしょう。
デンマークの投票率は高く、国会議員の場合は約90%近く、地方議員や、知事、市長の選挙においても75%を切ることはありません。民主主義はその名のとおり「民」が「主」なのです。自分たちがどのような生活を望むかを自分たちで決めていることが、この投票率に如実に表れています。
民主主義・デモクラシーの語源は、ギリシャ語のデモス(人民)」と「クラティア(権力)」が結合した言葉だと言われています。つまり、私たちが権利を有し、私たちがその権利を行使することです。65・
66頁・残念ながら日本国民は政治家を信用していないばかりか、主権を行使していません。これが投票率に表れているのです。
あなたは、自身の生活を保障してくれる、しかるべき議員をしっかり見定めていますか?
そして、その人に投票していますか?
裸の王様を増やさないためには、あなたが政治に参加する行動が第一歩となるのです。66・
平成28年3月4日 金曜日
地方分権で政治、福祉が変わる・62頁・
デンマークの投票率は90%・64頁・
平成28年3月4日
ここまで
世界一幸福な国デンマークの暮らし方 千葉 忠夫 (著)第2章・腐敗が世界一少ない国・44頁・
http://amamioosoma.synapse-blog.jp/yosiharu/2016/03/2-e808.html
9:29 2016/03/04
国家予算の約75%が教育や福祉に使われる・52頁・
デンマークの高齢者は、その多くは年金をもらいながら、自分の持ち家化住宅公団の1LDKあるいは2LDKの賃貸高齢者住宅に住んでいます。住宅費や食費、光熱費などその月にかかるものをすべて払ったとしても、手元に日本円にして2~3万円が残ります。
また、生まれた時から亡くなるまでの医療費、教育費も無料です。そして、全国民には年金が支払われ、障害者には早期年金と言った、生活保障費が支払われます。
このように、障害者や高齢者をしっかりと保障したり、医療費・教育費を無料にするためには、ものすごくたくさんのお金がかかります。
デンマークの国家財源の主となるものは国民が納める税金です。
税金は大別すると直接税と消費税があり、国民は収入の約50%を直接税として納めています。働く女性が多いことがデンマークの直接税収入を押し上げ、国家財政を潤しています。52・
53頁・そして消費税は25%で世界一の高税率です。
デンマークでは国民が納めた税金の用途が、毎年国税庁から公表されます。国民が納めた税金は何に使われるのかと言うと(図1)、国家予算の約75%は教育、文化、医療保険、福祉になどに使われています。地方自治体の予算配分は約60%が福祉予算であり、福祉予算の約60%が高齢者福祉に使われています。
そのため、揺りかごから墓場まで、国民すべての生活が保障されているのです。
一方、日本では高齢者が施設に入るためにはお金を払わないといけません。手元に2~3万円のどころか赤字が当たり前で、家族がその分を補填しなければなりません。53・
54頁・また、介護を一つとってみても、日本はその財源がなかったので、介護保険で40歳以上の国民から一定金額を徴収して、高齢者を支えています。
でも、日本では80%近い人が中流意識を持っているのです。
発展途上国のように貧しい国では無理ですが、日本は豊かなのですから富の再配分を人間的(公平)にすれば、困っている人たちを支援することが十分にできると思います。
贈収賄ができない制度づくり・54頁・
さて、富(収入)の再分配と言っても、それをメインにしてきたソ連、東欧は崩壊しました。繰り返しになりますが、それらの諸国との違いは、デンマークは社会福祉国家だけれども、社会主義国ではないということです。
デンマークは資本主義国であり、完全に西欧圏なのです。NATOに加盟しており、イラク、アフガニスタンにも軍隊を派遣しています。イラクやアフガニスタンを支援するためにデンマークの先年が年間約30人、命を失っています。54・
55頁・もちろん、デンマーク国内の政党には左から右までありますが、ユーロコミュニズムに近い政党も勢力を誇っています。
ユーロコミュニズムは、旧ソ連や中国のような共産主義ではありません。ソ連共産党の路線に追随しない、自主的な共産主義路線です。資本主義の中に連帯や共生を打ち出し、みんなが社会の中でうまく生活をしていくことを目指しているのです。
ソ連や東欧は、政治家の贈収賄などの腐敗が横行していました。デンマークでも政治家の層収賄がないわけではありません。でも、世界で一番少ない国でもあるのです。
では、なぜ贈収賄が少ない、クリーンな国なのでしょうか。
それは、人をだまさないということにつながります。人をだまさないというのも、やはり教育のなせるワザではないでしょうか。
デンマークでは、中間・期末試験と言うものがありません。あるのは九年生(日本の中学三年生)を卒業する時点で初めて行われる国家統一試験です。そこで、生徒がどれだけ勉強したか試験され、点数がつきます。55・
56頁・しかし、判定方法は日本とは大きく異なります。試験が終わると、答案用紙を集めて大きな封筒に入れて、違う学校に送ります。答案は別の学校の先生が採点するのです。
同じ学校の教師が採点すると、どうしても回答を見る目が変わります。しかし、他校の教師が採点するので、たとえば、国語の文章題に対する記述解答の場合、「言葉は足りないけれど、この子は最近頑張っているから正答でもいいかな」と言うようなことはありません。もちろん、「この子の親からはお歳暮をもらったな」と言うことは絶対にありえません。
九年生、高等学校あるいはその他の上級学校で行われる口頭試問では、試験室の控室にいくつか問題がおいてあり、抽選権のように問題を引きます。30分程度、その問題について考えたあと面接室に入るのですが、面接官は違う学校の教師です。
このように採点は生徒と関わっている教師がしなと言うルール、八百長できないルールがあるのです。
もしかしたらデンマークでは、人間は弱いから悪いことをやってしまいがちであるということを知っていたからこそ、それができない制度をつくりだしたのかもしれません。56・
57頁・子供の頃からしっかりとした社会基準が存在していると、悪さができません。すると正々堂々と勝負をしなければならず、自ずとクリーンさを身につけるのではないでしょうか。57・
なぜ日本人は税金に嫌悪感を抱くのか・57頁・
デンマークは世界一の社会福祉国家で幸福度も世界一と言われています。そして、税金が高いのも世界一です。国は国民が納めた税金を、国民が納得するように再配分しています。
デンマークは、他国から「高福祉高負担」だと言われますがデンマーク人は「負担」とは思っていません。
なぜなら、いろいろな形で国民全員に還元されているからです。「自分が病気にならない」「老人にならない」いないでしょう。納めた税金が医療、教育、社会保障、介護などいろいろな形で国民に還元されていますので、決して負担ではないのです。57・
58頁・ですから正確には「高福祉高負担」ではなく、「高福祉高税」なのです。
世論調査によると、85%のデンマークの国民は今の税率、今の福祉サービスで満足しているという答えが出ます。
私は日本人ですので、なぜ日本人が税金の大して嫌悪感を抱いているのかがよくわかります。
税金は、その昔、一握りの武士階級の領主に年貢として取り立てられた農産物などの高祖と同じであり、何の三変え例も得られなかったという農民の恨みが現代まで引き継がれているから、税金を払うことを負担に感じるのでしょう。
日本国民は消費税を増税しなければいけないことを理解していても、デンマーク国民と異なり、政治家や行政を信用していないため、どうしても納得できないのです。
日本は戦争に負けて、経済的にも大きなダメージを受けました。経済復興に力を注ぎ、その結果、経済大国になりました。一生懸命頑張ってきたのですが、経済面だけに力を注ぎすぎたため、社会保障面を考慮する余裕がなかったので、社会的弱者のことを忘れていたというのが現状です。58・
59頁・だから、経済的に余裕(国民一人当たりの貯蓄率は世界一と言われています)がある今こそ見直すべきなのです。
デンマークが福祉に力を入れたのは世界恐慌のときです。1930年代、みんな苦しい思いをしたから、政治家も国民も、社会福祉制度をしっかりと築いて、二度と苦しまないようにしたのです。
日本は高福祉高税の国にはなり得ないかもしれません。また、見えないもの(ゴールをみえると言って、実現しそうにもないことを求めすぎると、裸の王様のように付け込まれてしまいがちです。まずは、このくらいなら…と言うものを目指したいのです。
デンマークなみの高福祉高税が無理であれば、中腹市中税を目標としてみるのがいいのでしょう。
もし、あなたが国を信用できないのであれば、消費税を福祉のためだけに使う社会事業所を国民自身で設立したらどうでしょう。59・
60頁・誰もが納得できるシンプルで透明な組織において、消費税を徴収して使い道を決め、配分できるようにすればいいのです。貧困者、障害者、高齢者と言った社会的に弱者と言われる人が、安心して生活していける国になってほしいものです。60・
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第二章 『はだかの王様のように騙されない』・ 政治を考える・平成28年3月4日 金曜日
「はだかの王様」・40頁・
あるところに、美しい新しい着物が大好きな王様がいました。
その王様の国に、二人のいかさま師がやってきました。二人は機織り職人だと名乗って、自分たちは世にも美しい織物を織ることができる、その織物を作った着物は、自分の地位にふさわしくない仕事をしている者、手に負えない馬鹿者には見ることができないと言いふらしました。
その話を聞いた王様は、「面白い、わしがその服を着たら、どの役人がその地位にふさわしくないか、誰が利口で誰が馬鹿なのか、すぐにわかるぞ」と、二人のいかさま師に着物をつくるように言いつけたのです。
二人のいかさま師は、いかにも働いているような振りをしていました。けれども機のうえには何もありません。それでもからの機に向かって朝早くから夜遅くまで働いていたのです。40・
41頁・町には王様の新しい着物の話が評判になっていました。そして、自分のお隣さんが悪い人なのか、馬鹿な人なのか、とても知りたがるようになりました。
ドンくらいでき上がったのか王様は様子を見に行きたかったのですが、自部員の地位にふさわしくないと見えないという話を思い出すと、すぐに足を運ぶことができず、ある大臣に様子を見に行かせました。
その大臣は正直者で、知恵もあり、王様が信頼している人物だったのです。
正直者の大臣は、いかさま師が空の機に向かって働いている部屋を訪れました。思い切って部屋に入ると、何も見えません。「見えない」とは言えません。いかさま師は、からの機を指しながら、「いかがですか?美しいでしょう」と話しかけてきます。正直者の大臣は慌てました。自分が見えないことを誰にも知られてはいけないと思い、「見事じゃ、王様に素晴らしいと申し上げよう」と答えてしまいました。
しばらくして、王様はまた違う役人に様子を見に行かせました。
この役人も大臣と同じ見ることはできませんでしたが、いかにも見えているように振る舞いました。41・
42頁・ついに王様も自分で様子を見に行くことにしました。
大勢のお供を連れて、いかさま師の仕事部屋に行くと、先に様子を見ていた大臣と役人が「王様、三五度ではございませんか」とからの機を指しました。
王様は何も見えません。しかし、大臣と役人は見えているのだと思い込み、慌てふためきました、「見事じゃ!」と大きな声で言ったのです。
町ではこの織物のうわさで持ちきりだったため、ある役人が、「素晴らしいです。今度のパレードで着ぞめしたらいかがでしょう」とすすめました。
パレードが行われる朝、いかさま師は「いかがでしょうか。このお召し物はクモの巣のように軽いです。まるで何も来ていないかのような気心地の良さです」と話をしながら、王様に着せる振りをしたのです。王様は言われるがままに着物に腕を通しました。
王様は鏡の前で何度も何度も見ましたが、何も見えません。それでも、しずしずと歩き出しました。なぜなら、自分が見えていないことを、周りの人に悟られてしまったら大変だからです。42・
43頁・こうして王様は見えない衣装をまとい、街でパレードを行ったのです。
すると、往来の人も、窓からパレードをのぞいている人も、口を揃えて言いました。「なんてステキなんでしょう!」「よくお似合いですこと!」誰も見えないとは言えなかったのです。王様の数多い着物のうちで、見えない着物ほど評判が良かった着物はありません。
そのとき、小さな子供が叫びました。「王様は、裸だよ!」王様はその声を聞いてドキッとしましたが、パレードを続けたのでした。43・
44頁・
腐敗が世界一少ない国・44頁・平成28年3月4日 金曜日・
デンマークは、政治於ける腐敗が世界一少ない国としても有名です。
その政治運営は非常に透明であり、何が行われているのか、政治の中が見えるように、国民は常に留意してきました。
その根底には「社会福祉国家」としての歩みがあります。
ここでは、デンマークが1960年代に築き上げた社会福祉国家までの道のりをたどってみましょう。
12世紀、バイキングの時代を終えたデンマーク人は、国民すべてが農民と言ってもおかしくない国でした。
農民は、デンマークの各地に点在する大地主である庄屋の下で、小作人として働いていました。当時は「囲い込み法」によって拘束され、自分が多々羅いている庄屋から自由に移動することが禁じられていました。しかし、1788年、自由を求めた農民たちは領主との話し合いにより、「囲い込み法」を無効にさせたのです。44・
45頁・奇しくも翌1789年には「自由、平等、博愛」を謳ったフランス革命が起こっています。これはみなさんも歴史の授業で覚えた年号ではないでしょうか。
1814年にデンマークは、世界で初めて「教育の義務制度」を決めました。さらに、最初の国民学校が1844年に設立され、教育の基盤を作り上げました。
1848年には絶対王政を廃止し、翌年に自由主義憲法を制定しました。
1864年、ドイツ・オーストリア連合軍に領土争いに敗れましたが、デンマークは失われたものを国内で取り返す国づくりに励みました。
シャイ福祉の原型が生まれたのは1866年、英国と並んで世界で最初の農業協同組合を設立したことです。
1900年代に入り、近代工業化に伴い、農民は都市労働者として農村から移住し、農業協同組合の経験を持つ彼らは、新しい職場に労働組合を発足させていきました。労働組合は自分たちの生活を守るための連帯であり、決して過激な政治闘争は目指しませんでした。45・
46頁・そして、1929年、世界大恐慌が起こりました。
デンマークも例にもれず、不況で失業者が増え、大変の時代を迎えます。そのとき、政治家たちはこんな苦しみを二度と国民に味わわせたくないと、社会福祉法の充実に取り組み始めました。
1940年代に入ると、デンマークはナチス、ヒトラーの軍隊に国土を占領されてしまいます。ドイツ軍が越境してからわずか数時間しかデンマーク軍は抵抗せず、軍隊は速やかに解散、後には警察まで解散をしてしまいました。
自由を自分たちの手で勝ち取ってきたデンマーク人、自由を一番尊ぶデンマーク人にとって異民族に統轄されることは苦渋でした。しかし、デンマークの軍隊は占領軍とほとんど交戦せずに解散したことで、「国破れて山河あり」とはならず、日本の第二次世界大戦後のように食料事情はあまり窮しませんでした。戦後は復興のため、たくさん労働力を必要とし、女性の社会進出が進み、1960年代にはデンマークは国民すべての生活を保障する初期の「社会福祉国家」を築き上げたのです。46・ここまえ・
女性の社会進出で好循環が生まれる・47頁・16/3/4 13時4分53秒・
デンマークはよく「社会主義国」と間違われますが、「社会福祉国家」であり、「資本主義」の国です.ですから、経済と福祉のバランスがうまく取れている国、と言ってもいいでしょう。
デンマーク経済が安定しているのは、何と言っても女性の就業率の高さによって生まれる好循環と自給率の高さです。
デンマークでは、女性の社会進出率が高く、80%近い女性が働いています。すると、男性と同じぐらい女性も税金を払うことになります。除染の就業率が低い国と比較すると、国家収入が倍近く増えることになります。
女性が社会進出すると、家庭で子供や障害のある人、高齢者の世話をする人がいなくなるので、保育園、幼稚園、障害者施設、高齢者施設を整備しなくてはなりません。47・
48頁・それらの施設などで働くのは女性が主体ですから、女性の職場が増えてくるという好循環が生まれるのです。
さらに、女性が社会進出するのに伴って、女性議員の数が増えていきます。デンマークでは、地方議員の約30%、国会議員は約40%が女性です。
2009年6月7日に行われたヨーロッパ議会議員選挙で、デンマークが持つ13の議席が争われましたが、なんとそのうち女性議員が六人選ばれました。
日本は男性社会で、男性がいろんなことを決めてしまいがちです。人口の半分は女性なのですから、女性がもっと政治に参加してほしいと思います。現在の日本は、女性議員が増えたと言っても、地方に行けば女性の議員が一人もいない自治体があります。
女性知事も47ある都道府県の中で4~5人なのはまだまだ低いのではないでしょうか。
女性議員が増えると、女性が働くための環境が整えられます。出産休暇、育児休暇の制度がしっかりとしていくうえ、保育園への入園を待機しているような子供もいなくなるでしょう。48・
49頁・女性の社会進出は、気鋭材の安定をもたらすとともに、社会福祉の発展につながるのです。
また、デンマークの農業は自給率が300%です。食べ物があるというのは、非常に安心で、経済も安定するのです。
日本では自給率が低いのも関わらず、なぜか休耕田がたくさんあります。なぜ、自分たちで食べ物を作ることを考えないのかが不思議です。ここまで
デンマークで少子化が止まった理由・49頁・
日本では電車の車両を見渡すと子どもより高齢者の方が多いですが、デンマークでは子供が多く見られます。
子どもが多いのは、デンマークには母親を支援する制度がたくさんあるからです。
長男が生まれた時、妻が退院してきて三日ほどたたないうちにケースワーカーが、「私はこの町の保健婦です。49・
50頁・あなたのところに子供が生まれましたよね」と訪ねてきました。「お子さんの育児について、いつでもお手伝いをしますから」とわざわざ伝えに来たのです。
まだ生まれて間もないというのに、すぐに保健師が対応できるのは、病院と地域がしっかり連携しているからです。
保健師は、子育ての相談、たとえば日本でいう「公園デビュー」の方法まで教えてくれます。生まれた子供に障害があった場合は、治療方法や今後について教えてくれます。
デンマークのほとんどの家庭では核家族です。核家族だと初めての子供を授かったとき、とくに障害児の場合はいろいろなことに悩みます。でも、保健師が国民全員についているケースワーカーに連絡を取ってくれているので、お母さんはとても心強いのです。
デンマークの子育て支援が確立されてきたのは、1980年代のことです。
デンマークでも女性が社会進出した1980年代は、出生率が1・4%ぐらいまで下がってしまいました。50・
51頁・そこで、女性議員が「子供を産んでも仕事ができるように」と、産前産後休養(産休)や育児休業(育休)などをしっかりと制度化し、地方自治体は、「しっかり子供の面倒を見る場所がありますよ」と保育園、幼稚園を整備したのです。
また、子どもが生まれたら、児童手当が支給されます。18歳までは各市町村から四半期に一回児童手当がもらえます。
日本では障害のある子供が生まれた場合、女性は今の仕事を続けられない状況に陥ってしまうことがほとんどではないでしょうか。
障害のある子供を施設に入れないで自分で育てようとするならば、親は仕事を続けられなくなります。そこで、デンマークでは今の給料の約80%を保障し、子供の面倒を見られるようにするという制度があります。
このように制度をしっかりさせるうちに、少子化が止まったのです。現在の出生率は1・9ぐらいです。51・ここまで
52頁・
贈収賄ができない制度づくり・54頁・
なぜ日本人は税金に嫌悪感を抱くのか・57頁・
社会的弱者はだまされ続けている・60頁・
地方分権で政治、福祉が変わる・62頁・
デンマークの投票率は90%・64頁・
平成28年3月4日
世界一幸福な国デンマークの暮らし方 千葉 忠夫 (著) 内容紹介
「マッチ売りの少女」にあるような厳寒、貧困の国であったデンマークは、
戦後の社会福祉国家としての制度改革によって、いまや「国民の幸福度ランキング」で世界第一位の生活大国となった。世界でいちばん幸せな生き方とはどういうものなのか?
デンマークにあって日本にないものとは何か? デンマーク人の心に二百年間宿りつづけたアンデルセン童話を手がかりに、自由、自律、責任、貧困、政治、教育、社会、福祉などの問題について再考する。
目次
はじめに・・・世界で一番幸せな国・デンマーク・3頁・
もし、「あなたは幸せですか?」と聞かれたら、「はい!幸世です」と答えることができますか?
北欧の国デンマークは、この質問に「幸せです」と答えた国民の数が、世界で一番多い国です。
これは、アメリカの研究組織、ワールド・バリューズ・サーベイが各国の個人を対象に、現在の幸福度を調査し、ランキングした「幸福度ランキング」(2008年に発表)の結果です。
幸福度ランキングとは、約100ヵ国の地域を対象に「あなたは幸せですか?今の生活に満足していますか?」と質問をして、「幸世です」と答えた人の数を調べたものです。その結果、デンマークが堺で第一位でした。
4頁・二位はプエルトリコ、三位はコロンビア。アメリカは16位、イギリスは21位、フランスは37位。そして、日本は43位、中国は54位、韓国は62位と言う結果でした。
また、イギリスのレスター大学の心理学者が発表した幸福度マップと言う別の幸福度調査でも、デンマークは一位になりました(2006年発表)。
これは、イラクなどの紛争国を除く世界178か国を対象に、経済状況や医療制度、教育などのデータを分析、幸福度に影響を与える要因となる医療制度、裕福度などを数値化し、ランキングにしたものです。
ここでも、第一位はデンマークの。次いで、二位はスイス、三位はオーストリアでした。そして、アメリカは23位、日本は何と90位でした。
デンマークは、国を対象にした指標でも、個人を対象にした指標でも世界で一番幸せな国、そしてデンマーク人は世界で一番幸せな国民と言えるのです。
実際に国民の約80%は「この国に生まれてよかった」と言っています。4・
5頁・さて、日本にはなかなか馴染みのないと思われるデンマーク。
その場所すらご存じない方もいらっしゃるようですので、ここで少しご紹介をすることにしましょう。
・コペンハーゲンは「商人の港」・
デンマークは北欧にある小さな国です。東はバルト海、西は北海に面しており、ユトランド半島、シェラン島、フュン島など500以上の島々からなる国です。デンマーク領であるグリーンランド、フェロー諸島を除いての総面積は約4万3000㎡で、九州と同じ大きさですが、人口は551万人(2009年度デンマーク統計局)で、東京都(人口は1294万人・東京都2009年4月)の半分以下です。
気温は温和で、夏は比較的涼しく、日本でいう北海道の夏の季節と似ています。緯度は樺太の北に位置しているものの、冬は温暖で東北の岩手よりも暖かく感じるのですが、日照時間が短く、遅い時で午前八時過ぎに日が昇り、午後三頃には沈んでしまいます。5・
6頁・また、夏の最も陽が長い時には、午前四時半に日が昇ると、午後十時近くまで陽は沈みません。ですから、陽の長い夏の季節は国民全体が仕事を早く切り上げて、外に出て太陽の光を堪能します。
人々は広く満遍なく国土の至る所に住んでおり、緑豊かな土地には一軒家が多く、日本では当たり前のように見かける十数階建てのマンションなどは、ほとんどありません。
首都・コペンハーゲンは、デンマーク語で「商人の港」と言う意味があります。デンマーク人の祖先はバイキング。バイキングは、8~12世紀に北欧のフィヨルドから巧みな航海技術を駆使してヨーロッパ各地で活動し、貿易も盛んにしていましたので、「入り江の民」「市場の民」とも言われています。
現在は農業国として有名で、国内でとれる農産物の三分の一で全人口が賄えるほどお高い自給率で、食料は潤っています。日本には主に豚肉やチーズと言った食品を輸出しています。6・
7頁・主食はジャガイモと黒パンで、日本人がお米を食べるとの同じようにじゃがいもと黒パンを毎日食べています。スーパーには何種類のジャガイモと黒パンが、所狭しと陳列されています。
さて、デンマークの観光の見どころは、コペンハーゲン、近郊の森林地帯に点在する歴代王室の古城、そしてなんといっても、アンデスセンの生まれ故郷、オーデンセだと思います。特に、オーデンセのかわいらしい街並みはおとぎの国そのものです。
コペンハーゲンには有名なチボリ公園があり、夏の開園期間は老若男女の憩いの場となっています。街はずれには「ニューハウン」と呼ばれる地域があり、その周りにはパラソルを出したお店が軒を連ねています。7・
8頁・また、日本の子供にも人気のあるレゴブロックがデンマークの玩具であることはご存知でしょうか。
ユトランドには大きなレゴランドがあります。レゴで作った世界の有名な建物などが子供連れの家族に人気でにぎわっています。
さて、デンマーク人の面白い習慣を二つ。
デンマークには「湯船につかる」と言う習慣がありません。
昔は湯船があったのですが、国内がオイルショックで節約志向になった時、人々は湯船を捨てたのです。お風呂は「温まるもの」から「体を奇麗にするもの」へと合理的に変化しました。今では、各家にシャワーのみがあり、湯船をおいている家はほとんど見かけれません。たまに郊外の牧場に行くと、家畜の水飲み場に昔の湯舟が使われている光景が見られます。
また、デンマーク人は、写真の撮り方が日本の習慣とは多少異なります。
写真を撮る時、日本では、「はい、チーズ」と声をかけて、ポーズをとったところでシャッターを切ります。しかし、デンマークでは気づいたら取られていることがほとんどです。8・
9頁・「ちょっと待ってくれよ」といっても、「自然な姿がいいんだよ」といっぱしの芸術家口をたたかれることがあります。ですから、アルバムの中には、個性的な芸術性あふれる写真が並んでいます。
・アンデルセンが描いた未来社会・9頁・
さて、みなさんは「アンデルセン童話」を読んだことがあるでしょうか。
きっと子供のころの記憶に、絵本や児童書として残っているのでは、と思います。私はこれまでデンマークがどのようにして社会福祉国家になっていったのかをいろいろな角度から探求してきました。最近になって、200年ほど前に生まれたアンデルセンの心の中に、デンマーク人を代表する心があることに気がつきました。
アンデルセンの童話にはその時代の社会と、生活している人々の喜怒哀楽、望ましい未来社会を実現するための願望が描かれています。
アンデスセンが描いた望ましい未来社会は、その童話を愛したデンマークの人々によって実現しました。9・
10頁・デンマークの人々は160年という年月をかけて幸福度世界一の国、幸せな国デンマークをつくりあげたのです。
では、そもそも「幸せな国」とは何でしょうか。私は、幸せな国とは人びとが「生活しやすくて住みやすいこと」につながると思います。
日本からデンマークの社会福祉を学びに来た学生に、私はこんな質問をします。「住みよい国って何ですか?」
たいていの学生は、食べ物があること、住む家があってお金に困らないこと、物価が安い、病院がある、交通の便がよい、仕事がある、夢が実現できるといったように、まずは衣食住の面が満たされることを挙げます。
次に格差のない社会、平等、個人の自由、人権の尊重、障碍者や高齢者の生活保障、安心して老いられる国、自由に教育が受けられる、民主主義の国・・・と、社会問題に目が向けられていきます。
そして、緑が多い、空気がきれい、天災害がない、紛争や戦争がない・・・と、社会がおかれている環境、世界へと視野が広がっています。10・
11頁・人間は誰もが一番身近な自分自身のことから考え始め、そして世界を考えるという順序になるのは当たり前のことでしょう。
アンデルセンと同時代に活躍したデンマークの哲学者キルケゴールは、単独者の主体性こそ心理と説く個人主義、実存主義を唱えました。キルケゴールの思想もデンマークが社会福祉国家になった一つの要因と言えるでしょう。社会と個人は相反するもののように思われますが、「個人を大切にすることが、個人の集まりで構成されている社会を大切にすることにつながる」のです。
ならば当然のことながら、個人が住みよい社会であり、それが集まってできている国は、住みよい国と言えるでしょう。
では、デンマークは昔から住みよい国だったのでしょうか。
アンデスセン童話の中でもっとも有名な作品の一つ、「マッチ売りの少女」を知らない人は少ないでしょう。
これはアンデルセンが43歳の時の作品で、今から160年前のデンマークを見事に表しています。当時はマッチ売りの少女のような貧しい子供たちが、デンマークにはたくさんいたのです。11・
12頁・それから時を経て、デンマークは世界一幸せな国なりました。そして、経済福祉国家としての道をしっかり歩んでいます。
貧しかった「マッチ売りの少女」の国は、なぜ世界一幸福な国になれたのか、その仕組みを本書で紐解いていきたいと思います。
第一章 『マッチ売りの少女』―― 貧困を考える、
「マッチ売りの少女」・25頁・
寒くてどうしょうもなかった・27頁・
少女が望んだ幸せとは・29頁・
働かざる者は食うべからず・31・
日本の貧困率は世界五位・32頁・
問題解決には助けが必要・34頁・
貧困をなくすには・36頁・
第二章 『はだかの王様』―― 政治を考える
「はだかの王様」・40頁・
腐敗が世界一少ない国・44頁・
女性の社会進出で好循環が生まれる・47頁・
デンマークで少子化が止まった理由・49頁・
国家予算の約75%が教育や福祉に使われる・52頁・
贈収賄ができない制度づくり・54頁・
なぜ日本人は税金に嫌悪感を抱くのか・57頁・
社会的弱者はだまされ続けている・60頁・
地方分権で政治、福祉が変わる・62頁・
デンマークの投票率は90%・64頁・
第三章 『みにくいアヒルの子』 ―― 教育を考える
「みにくいアヒルの子」69頁・
人は見た目で判断する・72頁・
自分の生き方は自分で決める・73頁・
デンマークの国民学校法とは・74頁・
国に必要な人を育てる・76頁・
義務教育に学ぶべきこと・79頁・
教科書の指定がない授業・81頁・
「義務教育」と「教育の義務」との違い・83頁・
登校拒否には理由がある・85頁・
好きなことを勉強させる・86頁・
高校の授業が分かる人は三割程度・88頁・
高校への進学率は約45%・91頁・
在学中にしっかり実習経験を積む・94頁・
大学全入は大きな無駄・96頁・
役職ポストは公募制・99頁・
デンマークには勤務評定がない・100頁・
教師と生徒が寝食を共にする・102頁・
第四章 『赤い靴』―― 社会のあるべき姿を考える
「赤い靴」・106頁・
ルール違反の付けは大きい・110頁・
幸な国の方程式・112頁・
自由の使いかをどう教えるか・115頁・
自由の代償と連帯責任・117頁・
職場を離れたら「目線」は同じ・120頁・
ピザの公平な分け方・122頁・
一人で持てないものは二人で持つ・126頁・
デンマーク人にはできて、日本人にはできないこと・128頁・
出した分だけもらわなくては損?130頁・
自由、平等、連帯、共生、・132頁・
○第五章 『ナイチンゲールの歌声は介護の心』―― 福祉を考える
「ナイチンゲール」・136頁・
思いやりのある介護とは・139頁・
機械にできること、人にできること・141頁・
福祉国家の医療制度・142頁・
国民全員にケースワーカーがつく・144頁・
デンマークの高齢者施設に驚いた・146頁・
住み慣れた家にできる限り住みたい・147頁・
キーワードは「自律のための支援」・1150頁・
ヘルパーが10分以内で駆けつける・152頁・
成人以降の親子関係・154頁・
ノーマリゼーションの始まり・155頁・
大規模収容施設をなくせ・158頁・
障害ゆえに不可能なことがある・160頁・
在宅生活にも一長一短・162頁・
障害者福祉は社会が担う・165頁・
「親なき後」の心配は不要・167頁・
障害者が一番求める支援・169頁・
○第六章 『人魚姫の選択』―― 自律することを考える
「人形姫・174頁・
自己決定は利己主義となりうる・178頁・
自律と自立・180頁・
生活を守るための労働組合・182頁・
仕事が続けられない社会的障碍者・185頁・
可能な限り社会復帰を促す・186頁・
男性の育児休暇取得率は高い・189頁・
第三の人生で社会に貢献する・190頁・
奉仕活動ができるようになるには・191頁・
デンマークの社会問題・193頁・
社会的弱者が困らない社会をつくる・195頁・
おわりに・・・デンマークを目指した私・198頁・
生まれて初めて見る外国・200頁・
デンマークは「おとぎの国」そのものだった・202頁・
平成28年3月2日 水曜日
内容(「BOOK」データベースより)
「マッチ売りの少女」にあるような厳寒、貧困の国であったデンマークは、世界大戦後、社会福祉国家としての制度改革を成し遂げ、いまや「国民の幸福度ランキング」で世界第一位の生活大国となった。デンマークにあって日本にないものとは何か?世界でいちばん幸せな生き方とは?「みにくいアヒルの子」「はだかの王様」「人魚姫」など、デンマーク人の心に百五十年以上宿りつづけたアンデルセン童話を手がかりに、自由、責任、政治、教育、福祉、貧困など日本社会が抱える問題について、身近な視点から再考する。
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新書: 206ページ出版社: PHP研究所 (2009/8/18)
言語: 日本語発売日: 2009/8/18
目次
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世界一幸福な国デンマークの暮らし方・
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