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2014年5月10日 (土)

沖縄の政治家に欠けているもの― 「普天間固定化」 の詭弁2013年12月5日 12:11 屋良 朝博(やら ともひろ)フリーランスライター

引用

沖縄の政治家に欠けているもの― 「普天間固定化」 の詭弁2013年12月5日 12:11 屋良 朝博(やら ともひろ)フリーランスライター

 

1962年北谷町生まれ。フリーランスライター。フィリピン大学を卒業後、沖縄タイムス社で基地問題担当、東京支社、論説委員、社会部長などを務め2012年6月退社。「砂上の同盟」で平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞。

「普天間が固定化する」。自民党本部が沖縄の自民政治家を落とした殺し文句だった。この言葉の主語、責任者は誰なのか。いつもそこがあいまいだ。

菅義偉官房長官らは自民沖縄県連をどう喝した。「県外移設はあり得ない。負担軽減と抑止力を考え、日米両国で決めた。このままでは、普天間が限りなく固定化する」

この聞き慣れた言説は正しいのか。沖縄基地の7割は海兵隊が占有し、普天間を含め問題の大元は海兵隊駐留に起因する。彼らは長崎県佐世保の米海軍艦船に乗ってアジア太平洋地域を巡回する。いわば消防車を長崎に置いて、消防隊員は沖縄-という配置であり、「抑止力」を考慮しても駐留は沖縄でなくてよい。

 

軍事論でない

森本敏前防衛大臣も昨年12月の離任会見で、「西日本のどこでも海兵隊は機能する」ことを認め、「県外」が困難なのは軍事論ではなく、国内政治の問題であることを暴露した。「本土は嫌だから沖縄が我慢しろ」と言うことだ。そんな「差別の構造」を隠すため、政府は「抑止力」「地政学」と詭弁(きべん)を弄(ろう)する。そもそも戦後岐阜、山梨両県に駐留した海兵隊は両県民の反基地運動に追われるように沖縄に移駐した。

 

国内政治の問題を「日米両国で決めた」という認識が滑稽だ。米軍に基地を提供するのは日本独自の判断によるもので、米国が場所を特定するのは越権行為だ。海兵隊基地の要件は地上、航空、補給の各部隊が“近接”することであり、それなら「西日本のどこでも」満たすことができる。

また、ヘリより早く遠くへ飛ぶオスプレイが配備されたいまなら、普天間の機能だけを九州に持っていくことも可能なはずだ。現に普天間のオスプレイが豪州へ移転する部隊を支援する運用も検討されている。

沖縄の自民議員は、「このままでは固定化する」「原点は危険性の除去だ」という言葉を公約破棄の免罪符にするつもりだ。西銘恒三郎衆院議員は九州を巡ったが受け入れ地はなく、県外移設は不可能だと思い知ったという。それは選挙前から自明のことではなかったのか。沖縄の政治は、不条理な基地押しつけとの格闘だったはずだ。

屋良 朝博(やら ともひろ)フリーランスライター

1962年北谷町生まれ。フリーランスライター。フィリピン大学を卒業後、沖縄タイムス社で基地問題担当、東京支社、論説委員、社会部長などを務め2012年6月退社。「砂上の同盟」で平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞。

そして彼らの言葉にも主語がない。固定化させるのは「政治」であり、彼らもその当事者だ。本土のNIMBY(ニンビー=自分の裏庭には来ないでくれ)が問題の本質であることを認識しながら「県外移設」を断念したのなら、「本土が嫌がるから我々が我慢するしかない」と有権者に説明するのが筋だろう。

この問題で自民県連幹事長も務めた翁長雄志那覇市長の発言は異彩を放った。「日米同盟の重要性を考えると固定化などあり得ない」「辺野古がだめなら海兵隊は出て行くんじゃないかと思っている」

米財政の悪化で海兵隊は大リストラに直面している。ヘーゲル国防長官は海兵隊の総兵力を20万人から15万人に縮小する可能性にも言及した。すると現在の3個遠征軍体制(本国2個、沖縄1個)を維持するのは困難で、本国からの6カ月ローテーションで編成する第3海兵遠征軍(沖縄)の運用は抜本的な見直しも予想される。

 

米国の動きをながめると、翁長市長の見立てはあながち的外れでもなかろう。むしろ局面打開の好機であることを気付かせてくれる。このまま中央におもねるのか、それとも米国への働きかけも含め新局面を切り開く道を選ぶのか。壊れたビデオのように同じシーンを何度も見せる政治は終わりにしてもらいたい。

順治氏の指摘

西銘氏の父で県知事だった順治氏は、政治家になる前に創刊した沖縄ヘラルド新聞に書いた社説、コラムをまとめた評論集「沖縄と私」で、「沖縄の政治家に欠けているもの」は「信念」「勇気」であると断じた。「言うべき事柄を言うべき場所で堂々と披瀝することが不得手である」「軍当局から少しばかりの小言をくらうと、問題が住民の福祉に影響する重大な問題であっても(中略)矛を引っ込めてしまう」「馬鹿な奴になるとそれが外交だ、民族外交だとごまかすのだから、まったく始末に悪い」

いまのところ、まったく始末に悪い。

17:45 2014/05/10




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