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2014年7月11日 (金)

生ごみの全量を堆肥に・・86頁・平成26年7月11日・

引用

3章 環境力―すべてのごみは資源である(「ごみ処理に税金は使わない」・・81頁・

1・「ゴミ処理に税金を使わない」・・82頁・

2・生ごみの全量を堆肥に・・86頁・平成26年7月11日・

それでも、野焼きだけは止めなければなりません。そこで、上勝町が最初に取り組んだのは、どんなゴミが出るのか組成を調査し、リサイクルの方策を探ることでいした。

1993(平成5)年に「リサイクルタウン計画」に着手し、150世帯の抽出調査によってゴミの組成と排出量を調べることにしたのです。

調査の結果、最も多かったのが、重量比で三割を占める生ゴミでした。八割が水分からなる生ゴミを焼却するには、補助燃料として化石燃料が必要です。そこで、町では、生ゴミを堆肥化することにしました。幸いなことに、上勝町のほとんどの家庭は農地を所有しています。農家でないにしても、庭のない家庭はほとんどありませんから、堆肥は畑や家庭菜園に還元することができます。町では既にこの2年前から野外用生ゴミ処理機(今ポスター)への補助を開始して生ゴミの減量を図っていましたが、家庭用の電動生ゴミ処理機にも補助金を出すことにしました。

今でこそ多くの家電メーカーが家庭用電動生ゴミ処理器を販売していますが、当時はまだ数社が調査中という段階でした。どの機種を導入すべきか検討する中で、私たちは生ゴミを分解する微生物の違いに着目しました。

87頁・そして、永遠に企業から購入し続けなければならない特定微生物ではなく、常在菌である一般微生物で生ゴミを分解する機種を選択したのです。奇しくも、一般微生物を使った機種を開発中の会社が兵庫県にあることがわかりました。町では、この企業、三洋電機株式会社が開発中だった機種のモニターとして開発に協力することにしました。

一方微生物を繁殖させる広葉樹のチップ(木片)の生産を森林組合に依頼して研究した結果、生ゴミ処理機に広葉樹のチップを投入すれば、容易に良質の堆肥が作れることがわかりました。

堆肥作りはとても簡単です。まず生ゴミ処理器の処理槽に微生物の棲みかとなるチップを入れておきます。この中に生ゴミを投入すると電動で攪拌され、生ゴミとチップが微生物に分解されます。家族の人数にもよりますが、生ゴミの体積は10分の1から20分の1に減少するため、毎日、生ゴミを投入しても処理槽がいっぱいになるのに2、3ヶ月かかります。その時点で堆肥を取り出し、再び同じことを繰り返すだけで堆肥ができます。

88頁・

1995(平成7)年、上勝町は、全国の自治体に先駆けて、電動生ごみ処理器への補助を開始しました。電動生ゴミ処理器は一台八万円ほどしましたが、一世帯が一万円の自己負担だけで購入できるようにしたのです。

町ではまた、三洋電機が行う業務用の大型処理機の開発にも協力し、老人ホームや給食センター、食堂や旅館などの生ゴミ処理のために4台を導入しました。家族の多い家庭では電動生ゴミ処理器を二台、あるいは野外用と組み合わせて利用しています。町役場にも家庭用の生ゴミ処理器を一台設置していますが、堆肥は職員が利用しています。

野外用と家庭用に電動生ゴミ処理器の普及率は98%に達しております。残りの家庭では、直接、庭や畑で堆肥にしています。生ゴミの全量が発生源で処理されるようになれば、町が収集・処理する必要はありません。町民にとっても炊事のたびに発生する生ゴミをすぐに処理することができるので、収集日まで保管するより台所を衛生的に保つことができます。

生ゴミの堆肥化に取り組む自治体は増えていますが、大規模な堆肥化施設を建設し、生ゴミを回収している市町村が少なくありません。しかし、人件費と輸送エネルギーをかけて回収するよりも、生ゴミが発生する家庭で処理する方が税金を節約し、環境負荷を軽減することができます。また、生ゴミを堆肥化し、野菜や草花を育てるという物質環境を他人任せにしないで自分で行うことは、農薬や化学肥料、食品添加物など自然界には存在しない物質を循環の輪に入れず、安全な食べ物を作ろうという意識を育てることにもつながります。

89頁・

上勝町に「ゼロ・ウェスと宣言」を行うよう提案したアメリカのセントローレンス大学教授、ポール・コネットさんは、焼却の危険性を訴え、全米で300以上の焼却炉の建設計画を中止に導いた活動家でもあります。

コネットさんは、ゼロ・ウェイストの第一歩は生ゴミの堆肥化だと力説しています。ところが、日本人はビンや缶など資源込みのリサイクルには熱心なのに、生ゴミの堆肥化には消極的だと指摘した上で、それでは焼却を止めさせることができないと警告しています。

世界で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行ったオーストラリアの首都キャンビラの担当者は、排出量の多いものからリサイクルに取り組むことの効用を、「効果が大きいために住民が達成感を味わうことができ、もっとゴミを減量しようという意欲を喚起することができる」と述べています。

家庭ごみの三割を占める生ゴミの堆肥化に取り組めば、現在、全国で19%に過ぎない再資源化率は30ポイントも上昇し、ゴミ全体の約半分が減量できることになります。

生ゴミを原料とする有機堆肥は、農地や庭だけでなく、土のあるあらゆる場所に利用することができます。上勝町に視察に訪れる人の中には、生ゴミの堆肥化は農山村だからできるのだと、としが堆肥化に取り組まないことを正当化する人も少なくありません。しかし、公園や道路の植樹帯、公共施設の植え込みなどはアスファルトで覆われていません。そのうえ土がないからこそ、プランターもたくさんあります。

90頁・

コネットさんによれば、ニューヨークには700を超えるコミュニティ・ガーデンがあり、スイスのチューリッヒには1,000以上のコミュニティ・コンポストがあるそうです。

保育所や幼稚園、学校などで堆肥化に取り組めば、環境学習にもなり、農業体験に生かすこともできます。病院や高齢者施設、障害者施設などでは、園芸療法にも活用できます。集合住宅に住む人々がみんなで堆肥化に取り組めば、各世帯のベランダが美しい花々で飾られるようになるでしょう。生ゴミの堆肥化は、ゴミを減量するだけではなく、堆肥化を通じて人々の心をつなぎ、地域を活性化する限りない可能性を内包しているのです。

それにもかかわらず、今でも多くの市町村が、生ゴミを焼却処理しています。また、古紙や廃プラスチックと混ぜてRDF(ゴミ固形燃料)を製造している市町村もあります。RDFを燃料にするゴミ発電は「夢のゴミ処理技術」と宣伝された時期もありました。上勝町でもごみをRDFにして、月ヶ谷温泉を加熱する燃料にしてはどうかと、徳島県から提案を受けたことがあります。しかし、それでは町の唯一の大切な温泉のイメージが落ちでしまうと考え、導入しようとは思いませんでした。

当時の厚生省が推進したRDF施設では、機械の故障や発火などの事故が相次いでいます。静岡県御殿場市と小山町でつくる広域行政組合は、商社とメーカーに損害賠償を求める裁判を起こしました。

平成26年7月11日

 

 

3・資源持ち込み方式の誕生・・92頁・

4・ごみを介した助け合いが生まれる・・97頁・

5・三四分別でごみの八〇%を再資源化・・101頁・

6・処理対策ではなく発生抑制政策を・・107頁・

7・エネルギーの回収よりリユース・リサイクル・・111頁・

8・日本初のゼロ・ウェイスト宣言・・116頁・

9・ゼロ・ウェイストアカデミーの設立・・120頁・

10・資源回収法で環境産業革命を起こそう・・124頁・

11・ゼロ・ウェイストはどこでもできる・・130頁・

12・資源が世界から押し寄せる・・134頁・

13・すべての環境問題はごみ問題である)142頁・

 


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